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Case18.氷の女王②
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警察が配置されている状況で、どうやって被害者を増やしたのか。
刑事の一言で、私の頭はその疑問に集約された。いくら不安を和らげるために部屋の外にいたとは言え、新たな犠牲者など出せるはずがない。犯人はマジシャンか何かなのかと、妙な勘違いをしてしまう。
「とにかく来てください!」
叫ぶ刑事の声に合わせて、私たちは弾かれるように来た道を戻った。
ーカイリ『氷の女王』第2章ー
※
「遺体は回収したのですね?」
「観客の目があるからな。いつまでも置いておけない。ただ損傷が酷く、散った肉片を集めるのも一苦労だったそうだ」
龍の言葉に海里は苦々しく頷いた。しかし、観客は既に会場から移動しているため、遺体が回収された以上、立ち入っても問題がないと気がつく。
「取り敢えず現場へ行きましょう。遺体に関しても銃声に関しても、詳しく調べる必要があります」
2人は選手たちに予備のスケート靴を借りて、殺害現場となったスケートリンクに入った。血が乾いていないため、そこらじゅうから異臭が漂っている。
「あの銃声が気になります。拳銃でしょうか?」
「仮にそうだとしても、だ。いくら頭から首だけとは言え、あの数の穴を開けるのは1人じゃできない。複数人必要だ。
だが、今回は狙撃と思えないな」
「銃声がしたのに?」
海里の質問に、龍はすぐ答えを告げた。
「火薬の匂いがない。普通、銃を撃てば匂うし、煙も漂う。複数人で撃ったなら尚更、匂いも煙も充満していなきゃならない。だがあの時、この双方の条件は満たしていなかった」
「つまり銃声はフェイク?」
「その可能性が高い。ただそうなると、結局殺害方法が分からない」
海里は同意し、被害者が倒れていた辺りへ足を滑らせ、血が付着しないよう屈んだ。
「銃声がした直後、もしくはそれより前に被害者は殺された。被害者は氷の上に倒れたはずですが、倒れた音は聞こえませんでした。となると・・・・銃声は被害者が倒れる音を掻き消すために作られたことになります」
「なぜそんなことをする? 銃声がフェイクだとしても、被害者は殺されていた。わざわざ音を掻き消す意味が分からない。演技の場で殺害した以上、観客は必ず遺体を見る」
「ええ。ですから、被害者がどうやって亡くなったのかーー問題はこれに戻ってしまう。そこを解き明かさなくては、フェイクとして付けた銃声の意味が無くなります」
海里は立ち上がり、被害者が倒れていた場所の真正面ーー被害者から見て真後ろーーの壁にある窓を見た。窓はかなり開いており、他の窓は閉まっていたため、異様な光景に見えた。彼は龍を呼び、窓を見るために彼の肩に乗った。
「窓枠に血痕があります。外壁にも血が」
「外壁にも?」
「はい。しかも、かなり下の方です。なぜこんな所に・・・・?」
海里の言葉に龍は顎に手を当てた。
「血痕が外壁にまで飛ぶなんて現実的じゃないな。いくら被害者が窓の近くで殺されたとは言え、そこまで血が飛ぶことは無いはずだ。
そもそも、演技中に窓を開けっぱにしにするか? 他の窓は閉まっている上、冷暖房は完備されている会場だから開ける意味がない。となると・・・・」
「凶器が窓の外に出た?」
「かもな」
海里は龍の肩から降りると、氷の上を滑りながら考え始めた。顔立ちが整っている上、身長も高いので、選手でもないのに不思議と絵になっている。銀髪と碧眼が、スケートリンクとマッチしているからかもしれない。
だが、その美しさに反して、海里の頭は混乱していた。閉じているはずの窓、外壁にまで飛んだ血、行方不明の凶器、フェイクとして用意された銃声、停電。これらが何を意味するのか、まるで分からなかった。
その時、
「ん?」
海里は突然その場に屈んだ。龍は首を傾げる。
「どうした?」
「これ、スケート靴で滑ったと思われる跡ですが、微かに赤くないですか?」
龍は窓から離れて海里の隣へ立ち、薄っすらとだが、赤くなっていることを確認した。
「・・・・確かに赤いな。だが、俺たちは血が付かないよう移動したはずだ。現に、移動した場所に血は付いていない。遺体からも離れている」
やがて、海里はリンクを凝視していた顔を上げて言った。
「犯人は被害者が亡くなった後にここを通った。もしそれが、凶器の回収だったら?」
海里は自分で口にして納得したのか、興奮した様子で立ち上がって続けた。
「会場を停電したのは、自分の姿を見られないようにするため。
フェイクとして銃声を用意したのは、被害者が倒れる音を掻き消すためだけではなく、自分が滑る音を耳に入れないためでもあった。
氷の上を滑ったのは、凶器を回収して外に捨てるためであり、その証拠が窓と外壁の血痕です」
「繋がって来たな。後は捨てた凶器と殺害方法だ」
「ええ。
ここからは、会場内と会場周辺を捜索しましょう。犯人が凶器を捨てたのであれば、会場周辺にまだ残っている可能性がありますし、銃声の仕掛けは会場内に存在するはずです」
「ああ。それらを調べれば、自ずと犯人に行き着く可能性がある。部下たちに会場を調べてもらうから、俺たちは外に行こう」
龍の部下たちに連絡を終え、外に出ようとした2人を美希子が追いかけた。海里はすぐに口を開く。
「いけませんよ。大人しくここで待っていて下さい」
「どうして? 私、足手纏いにはならない。邪魔はしないから」
「興味半分で事件に口を出してはダメです。私が言うなと思うでしょうが、あなたは子供です。もし犯人が私たちの行動を邪魔に思って、標的にされたらどうするのですか? あなたの命以外が奪われる可能性もあるんですよ?」
海里の質問に、美希子は口を噤んだ。龍は海里の言葉に頷きながら、
「お前をここに連れて来たのは事件解決に協力させるためじゃない。
そもそも、今回は以前の事件と違う。あの時は、お前が通っている高校で、被害者がお前の幼馴染みだったから、捜査に協力してもらっただけだ。例え九重警視長の娘でも、捜査に協力させる理由にはならない。江本の言う通り、子供でもあるんだからな」
それだけ言うと、2人は会場を後にした。美希子は唇を噛み締めながら、龍の部下たちの元へ行く。
「捜査を手伝わせてください」
「すみません・・美希子さん。東堂警部に、“何があっても関わらせるな”と言いつけられていまして」
美希子は自分の行動を見据えていた龍に苛立ちと悔しさを覚えた。彼女は黙ってその場を去り、彼の部下たちが捜査に熱心になった隙に、選手控室へ足を運んだ。
「こんにちは、東野ユーリさんですよね?」
「そうだけど、あなた誰? まだ子供じゃない」
控室にいたのは東野だけだった。彼女は明らかに怪訝な顔で美希子を見たが、美希子は動じなかった。
「私、久米美希子と言います。さっきの警察官と探偵の知り合いです。少し、皆さんにお話を伺いたいと思いまして」
美希子は笑った。東野は少し考えた後、息を吐く。その態度が、美希子に対する警戒を解いたことを示していた。
「・・・・座って。つまらないことだけど、話してあげる」
※
海里と龍は会場周辺を歩き回っていた。怪しげな人物を目撃した話はなかったため、会場の外には出ていないと推測できた。
加えて、血痕があった外壁の真下に当たる地面にも血痕があり、凶器が遺体の真後ろにある窓を通ったのは明らかだった。
「目撃情報が無い以上、犯人は外に出なかった・・・・いや、出られなかったと言うべきか」
「恐らく。となるとやはり、犯人は観客より選手の可能性が高いですね」
「ああ。しかしあの3人・・・・被害者に対する話が支離滅裂だったんだよな。お前、嘘をついているとか思ったか? 俺は思わなかった」
「私も思いませんでした。3人の証言に嘘はありません。少なくとも、被害者に対する話に関しては」
海里の言葉に龍は頷いた。彼は続ける。
「東野さんと湯元さんは出番待ち。芝田さんも同じですが、場所は控室。
状況的に怪しいのは芝田さんですが、東野さんと湯本さんのお2人も、一緒にいたわけではないと言っていました。疑いは全員に向けられます」
「そして、選手の第一発見者は東野ユーリ。初めに聞こえた悲鳴は、観客の女性と彼女の悲鳴だ。ここで留意しなきゃならないのは、凶器を回収して捨てた犯人が、血の付いたスケート靴を変えなければならないということだ。あの一瞬で、彼女にそこまでできるか?」
「一概には言えません。ただ、彼女に関してはスタッフの目撃情報もあります。それに対し、残りの2人は誰とも過ごさず、目撃情報も無かった。東野さんを疑わないというのも、無理のない考えでしょう」
海里はあくまで“全員”を疑っていた。しかし龍の意見からも分かる通り、東野ユーリに犯行は難しい。だが仮に2人のどちらかだとしても、それらしき言動は無い。先ほどの興奮が嘘のように、海里は眉を顰めた。
「ん? 江本、お前の服のボタン・・・・何かに反射しているのか? 妙に光ってるな」
龍に指摘され、海里は自分のシャツを見た。確かに、透き通った銀のボタンが、何かに強く反射している。
「本当ですね。しかし、今日は曇り空ですし、反射しそうな物なんてどこにもーー」
その言葉が言い終わらぬうちに、海里は辺りを見渡した。顔には、期待と不安が入り混じっている。
「急にどうした? 何か見つけたのか?」
「・・・・靴です」
「靴? 意味が分から・・・・あ」
ハッとした龍に海里は強く頷いた。
「ええ、そうです。犯人はスケート靴も捨てたんですよ。変えたとしても、隠す場所がなかったから。
今日の天気で、街灯も付いていない時間帯に、何かが反射することはない。ですが、スケート靴のブレードは反射します! 犯人が凶器と一緒に靴を捨てたのであれば、必ず近くにある!」
海里が駆け出そうとすると、刑事が2人を止めた。龍は困惑しながら尋ねる。
「何だ? 今ーー」
証拠を探している、と続ける前に、刑事は信じ難い言葉を口にした。
「東野さんが殺されました‼︎」
「え⁉︎」 「は?」
2人は愕然とした。警察官が複数人配置されている状況で、どうやって被害者を増やしたのか、まるで分からなかったからだ。
刑事は2人の驚きを気に留めないほど混乱しているのか、声を大にして叫ぶ。
「詳しいことは後でお話しします! とにかく、1度お戻りください!」
解き明かされたかに見えた謎と突如突然現れた2人目の犠牲者。
事件終息への道は、まだ見えない。
刑事の一言で、私の頭はその疑問に集約された。いくら不安を和らげるために部屋の外にいたとは言え、新たな犠牲者など出せるはずがない。犯人はマジシャンか何かなのかと、妙な勘違いをしてしまう。
「とにかく来てください!」
叫ぶ刑事の声に合わせて、私たちは弾かれるように来た道を戻った。
ーカイリ『氷の女王』第2章ー
※
「遺体は回収したのですね?」
「観客の目があるからな。いつまでも置いておけない。ただ損傷が酷く、散った肉片を集めるのも一苦労だったそうだ」
龍の言葉に海里は苦々しく頷いた。しかし、観客は既に会場から移動しているため、遺体が回収された以上、立ち入っても問題がないと気がつく。
「取り敢えず現場へ行きましょう。遺体に関しても銃声に関しても、詳しく調べる必要があります」
2人は選手たちに予備のスケート靴を借りて、殺害現場となったスケートリンクに入った。血が乾いていないため、そこらじゅうから異臭が漂っている。
「あの銃声が気になります。拳銃でしょうか?」
「仮にそうだとしても、だ。いくら頭から首だけとは言え、あの数の穴を開けるのは1人じゃできない。複数人必要だ。
だが、今回は狙撃と思えないな」
「銃声がしたのに?」
海里の質問に、龍はすぐ答えを告げた。
「火薬の匂いがない。普通、銃を撃てば匂うし、煙も漂う。複数人で撃ったなら尚更、匂いも煙も充満していなきゃならない。だがあの時、この双方の条件は満たしていなかった」
「つまり銃声はフェイク?」
「その可能性が高い。ただそうなると、結局殺害方法が分からない」
海里は同意し、被害者が倒れていた辺りへ足を滑らせ、血が付着しないよう屈んだ。
「銃声がした直後、もしくはそれより前に被害者は殺された。被害者は氷の上に倒れたはずですが、倒れた音は聞こえませんでした。となると・・・・銃声は被害者が倒れる音を掻き消すために作られたことになります」
「なぜそんなことをする? 銃声がフェイクだとしても、被害者は殺されていた。わざわざ音を掻き消す意味が分からない。演技の場で殺害した以上、観客は必ず遺体を見る」
「ええ。ですから、被害者がどうやって亡くなったのかーー問題はこれに戻ってしまう。そこを解き明かさなくては、フェイクとして付けた銃声の意味が無くなります」
海里は立ち上がり、被害者が倒れていた場所の真正面ーー被害者から見て真後ろーーの壁にある窓を見た。窓はかなり開いており、他の窓は閉まっていたため、異様な光景に見えた。彼は龍を呼び、窓を見るために彼の肩に乗った。
「窓枠に血痕があります。外壁にも血が」
「外壁にも?」
「はい。しかも、かなり下の方です。なぜこんな所に・・・・?」
海里の言葉に龍は顎に手を当てた。
「血痕が外壁にまで飛ぶなんて現実的じゃないな。いくら被害者が窓の近くで殺されたとは言え、そこまで血が飛ぶことは無いはずだ。
そもそも、演技中に窓を開けっぱにしにするか? 他の窓は閉まっている上、冷暖房は完備されている会場だから開ける意味がない。となると・・・・」
「凶器が窓の外に出た?」
「かもな」
海里は龍の肩から降りると、氷の上を滑りながら考え始めた。顔立ちが整っている上、身長も高いので、選手でもないのに不思議と絵になっている。銀髪と碧眼が、スケートリンクとマッチしているからかもしれない。
だが、その美しさに反して、海里の頭は混乱していた。閉じているはずの窓、外壁にまで飛んだ血、行方不明の凶器、フェイクとして用意された銃声、停電。これらが何を意味するのか、まるで分からなかった。
その時、
「ん?」
海里は突然その場に屈んだ。龍は首を傾げる。
「どうした?」
「これ、スケート靴で滑ったと思われる跡ですが、微かに赤くないですか?」
龍は窓から離れて海里の隣へ立ち、薄っすらとだが、赤くなっていることを確認した。
「・・・・確かに赤いな。だが、俺たちは血が付かないよう移動したはずだ。現に、移動した場所に血は付いていない。遺体からも離れている」
やがて、海里はリンクを凝視していた顔を上げて言った。
「犯人は被害者が亡くなった後にここを通った。もしそれが、凶器の回収だったら?」
海里は自分で口にして納得したのか、興奮した様子で立ち上がって続けた。
「会場を停電したのは、自分の姿を見られないようにするため。
フェイクとして銃声を用意したのは、被害者が倒れる音を掻き消すためだけではなく、自分が滑る音を耳に入れないためでもあった。
氷の上を滑ったのは、凶器を回収して外に捨てるためであり、その証拠が窓と外壁の血痕です」
「繋がって来たな。後は捨てた凶器と殺害方法だ」
「ええ。
ここからは、会場内と会場周辺を捜索しましょう。犯人が凶器を捨てたのであれば、会場周辺にまだ残っている可能性がありますし、銃声の仕掛けは会場内に存在するはずです」
「ああ。それらを調べれば、自ずと犯人に行き着く可能性がある。部下たちに会場を調べてもらうから、俺たちは外に行こう」
龍の部下たちに連絡を終え、外に出ようとした2人を美希子が追いかけた。海里はすぐに口を開く。
「いけませんよ。大人しくここで待っていて下さい」
「どうして? 私、足手纏いにはならない。邪魔はしないから」
「興味半分で事件に口を出してはダメです。私が言うなと思うでしょうが、あなたは子供です。もし犯人が私たちの行動を邪魔に思って、標的にされたらどうするのですか? あなたの命以外が奪われる可能性もあるんですよ?」
海里の質問に、美希子は口を噤んだ。龍は海里の言葉に頷きながら、
「お前をここに連れて来たのは事件解決に協力させるためじゃない。
そもそも、今回は以前の事件と違う。あの時は、お前が通っている高校で、被害者がお前の幼馴染みだったから、捜査に協力してもらっただけだ。例え九重警視長の娘でも、捜査に協力させる理由にはならない。江本の言う通り、子供でもあるんだからな」
それだけ言うと、2人は会場を後にした。美希子は唇を噛み締めながら、龍の部下たちの元へ行く。
「捜査を手伝わせてください」
「すみません・・美希子さん。東堂警部に、“何があっても関わらせるな”と言いつけられていまして」
美希子は自分の行動を見据えていた龍に苛立ちと悔しさを覚えた。彼女は黙ってその場を去り、彼の部下たちが捜査に熱心になった隙に、選手控室へ足を運んだ。
「こんにちは、東野ユーリさんですよね?」
「そうだけど、あなた誰? まだ子供じゃない」
控室にいたのは東野だけだった。彼女は明らかに怪訝な顔で美希子を見たが、美希子は動じなかった。
「私、久米美希子と言います。さっきの警察官と探偵の知り合いです。少し、皆さんにお話を伺いたいと思いまして」
美希子は笑った。東野は少し考えた後、息を吐く。その態度が、美希子に対する警戒を解いたことを示していた。
「・・・・座って。つまらないことだけど、話してあげる」
※
海里と龍は会場周辺を歩き回っていた。怪しげな人物を目撃した話はなかったため、会場の外には出ていないと推測できた。
加えて、血痕があった外壁の真下に当たる地面にも血痕があり、凶器が遺体の真後ろにある窓を通ったのは明らかだった。
「目撃情報が無い以上、犯人は外に出なかった・・・・いや、出られなかったと言うべきか」
「恐らく。となるとやはり、犯人は観客より選手の可能性が高いですね」
「ああ。しかしあの3人・・・・被害者に対する話が支離滅裂だったんだよな。お前、嘘をついているとか思ったか? 俺は思わなかった」
「私も思いませんでした。3人の証言に嘘はありません。少なくとも、被害者に対する話に関しては」
海里の言葉に龍は頷いた。彼は続ける。
「東野さんと湯元さんは出番待ち。芝田さんも同じですが、場所は控室。
状況的に怪しいのは芝田さんですが、東野さんと湯本さんのお2人も、一緒にいたわけではないと言っていました。疑いは全員に向けられます」
「そして、選手の第一発見者は東野ユーリ。初めに聞こえた悲鳴は、観客の女性と彼女の悲鳴だ。ここで留意しなきゃならないのは、凶器を回収して捨てた犯人が、血の付いたスケート靴を変えなければならないということだ。あの一瞬で、彼女にそこまでできるか?」
「一概には言えません。ただ、彼女に関してはスタッフの目撃情報もあります。それに対し、残りの2人は誰とも過ごさず、目撃情報も無かった。東野さんを疑わないというのも、無理のない考えでしょう」
海里はあくまで“全員”を疑っていた。しかし龍の意見からも分かる通り、東野ユーリに犯行は難しい。だが仮に2人のどちらかだとしても、それらしき言動は無い。先ほどの興奮が嘘のように、海里は眉を顰めた。
「ん? 江本、お前の服のボタン・・・・何かに反射しているのか? 妙に光ってるな」
龍に指摘され、海里は自分のシャツを見た。確かに、透き通った銀のボタンが、何かに強く反射している。
「本当ですね。しかし、今日は曇り空ですし、反射しそうな物なんてどこにもーー」
その言葉が言い終わらぬうちに、海里は辺りを見渡した。顔には、期待と不安が入り混じっている。
「急にどうした? 何か見つけたのか?」
「・・・・靴です」
「靴? 意味が分から・・・・あ」
ハッとした龍に海里は強く頷いた。
「ええ、そうです。犯人はスケート靴も捨てたんですよ。変えたとしても、隠す場所がなかったから。
今日の天気で、街灯も付いていない時間帯に、何かが反射することはない。ですが、スケート靴のブレードは反射します! 犯人が凶器と一緒に靴を捨てたのであれば、必ず近くにある!」
海里が駆け出そうとすると、刑事が2人を止めた。龍は困惑しながら尋ねる。
「何だ? 今ーー」
証拠を探している、と続ける前に、刑事は信じ難い言葉を口にした。
「東野さんが殺されました‼︎」
「え⁉︎」 「は?」
2人は愕然とした。警察官が複数人配置されている状況で、どうやって被害者を増やしたのか、まるで分からなかったからだ。
刑事は2人の驚きを気に留めないほど混乱しているのか、声を大にして叫ぶ。
「詳しいことは後でお話しします! とにかく、1度お戻りください!」
解き明かされたかに見えた謎と突如突然現れた2人目の犠牲者。
事件終息への道は、まだ見えない。
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