小説探偵

夕凪ヨウ

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Case190.迫り来る脅威①

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「何だか外が騒がしいね~。何かあったのかな?」
「逃亡犯でしょうか。サイレンは聞こえませんけど・・・。」

 すると、突然海里のスマートフォンが鳴った。

「東堂さん?どうしたんですか。言われた通り家で大人しく・・・」
『今お前の家に向かってる。俺が着くまで絶対に家から出るな。』
「どういうことです?一体、何が・・・・」
『警視庁がテロリストに襲撃されてる。だが、それは囮で、本来の狙いはお前だ。』

 海里は驚きを隠せなかった。息を呑み、喉が動く。

「私が・・・?」
『ああ。とにかく家から出るな。扉も窓も閉めろ。妹と一緒なら先に逃してもいい。さっき凪に連絡を取った。』

 海里は自分が震えているのが分かった。彼は分かりました、と言って電話を切る。

「真衣。凪さんの経営している酒場の場所は分かりますね?」
「うん。以前、兄さんが教えてくれたから。」
「今からそこに行って、身の安全を確保してください。フード付きのコートを被って、顔が見えないように。」
「な・・何言ってるの?兄さん。」

 全てを話すことはできなかった。海里は強引に真衣にコートを着せ、非常階段へ促した。

「私もすぐに行きます。絶対に戻ってきてはいけません。」
「どうして⁉︎ねえ、兄さん・・・何なの⁉︎」
「事情を説明している時間はないんです!早く!」

 真衣は混乱しながらも走り出した。海里がほっと息をついたが、それも束の間。床にナイフが突き刺さったのだ。背後を見ると、テロリストたちが家々の屋根を飛び越えている。

(早過ぎる!なぜここまで迅速に動けるんだ⁉︎時を見計らったかのように、こんな・・・!)

 海里はスマートフォンだけ手に持ってベランダから植え込みへ飛び降りた。着地して怪我がないことを確認するなり、彼は走り出した。

「すみません、東堂さん!今逃げているんです‼︎」
『今?ちょっと待て、早すぎないか?』
「私も同意見です。とりあえず人通りの多い場所に逃げているので、住所は後々。」
『分かった。俺が行くまで絶対に捕まるな。』
「はい!」

(とは言ったものの・・・警視庁襲撃が囮なら、こちらに幹部が集中することは明らかだ。どうにかして追尾を振り切らないと・・・!)

「ここにいたのか。」
「西園寺茂・・・!」

 茂は不敵な笑みを浮かべた。フードを被っているが、もう声で誰だか認識できた。彼は軽く右腕を上げ、言った。

「捕えろ。」

 一気に彼の背後からテロリストたちが飛び出した。海里はギョッとして走る。

「さて・・どこまで逃げられるかな。」
                      
         ※

「玲央!君は江本君を助けろ!」
「でも、父さん・・・‼︎」
「つべこべ言うな!今彼を失うことはできない!分かるだろう⁉︎警視庁はこちらで守るから急げ!」
「・・・分かった。」

 玲央は窓から飛び出し、駐車場に向かわず走り出した。龍とメールで連絡を取りながら互いの位置と海里の居場所を話し合った。

「頼む・・無事でいてくれ、江本君。」

 海里は追走するテロリストたちから必死に逃げていた。人混みに紛れても目立った髪色のせいですぐに見つかり、ナイフや暗器を放たれた。

(一般市民が気がついていない・・・。それほど彼らの気配がないのか。やっぱり人混みから出ないと・・・!)

 そんなことを考えていると、ナイフが海里の足を切った。鋭い痛みが走り、海里は路地裏に逃げ込む。

「江本!」
「東堂さん・・・!」

 龍は海里の腕を掴み、自分の車に押し込んだ。助手席には玲央がいる。

「無事で良かった。急ごう。」
「どこへ行くんですか?警視庁には戻れないでしょう?」
「ああ。取り敢えず迂回しながら距離を取る。敵の数が知りたいからな。」

 龍はそう言いながらアクセルを踏み、車を出した。路地裏から飛び出すと、一般人がいないことを確認して一気に車を進ませた。バックミラーを見ると、黒い車が何台も走っている。

「追跡か・・・。予想通りだが、面倒だな。兄貴、アサヒと連絡は取れたか?」
「うん。着くのに10分はかかるから、それまでは逃げ回れってさ。」
「分かった。」

 次々と出てくる車を避けながら、龍は大通りを進んでいた。しかしあくまでも法定速度・道路交通法は守っている。そして、それは追跡しているテロリストたちも同じだった。

「やっぱり西園寺茂が乗ってる。裏社会に通じていることを知られないためには、何もないような顔をしなきゃいけないってことか。」
「なるほどな。江本、舌噛むなよ。」
「えっ?」

 海里が驚いた瞬間、急に龍がハンドルを切り、脇道に入った。海里は横に倒れそうになり、体勢を崩す。

「わあ~懐かしいね。4年前は結構派手なことやってたっけ?」
「日常茶飯事みたいに言うなよ。第一、支持を出してたのは兄貴と伊吹だろうが。」

 テロリストたちは急な方向転換を予測していなかったのか、曲がりきれずにぶつかっていた。しかし流石と言うべきか、西園寺茂が載っている車だけはピタリと付いてきて離れないのだ。

「面倒な相手が追いかけてきたね。大通りに戻る?」
「無理だ。あの先は通行人が多い。下手したら事故を起こす。」

 2人はなぜそんなに冷静なのだと海里は突っ込みたくなった。すると、玲央のスマートフォンが鳴った。

「アサヒだ。もしもし?」
『準備完了。M区の雑居ビル付近に来て。』
「OK。急ぐよ。」

 龍はまたもや派手な方向転換をし、テロリストたちの前から姿をくらますことに成功した。少し走ると、ビルの前にアサヒの姿があった。彼女の横にはバイクがある。

「江本さんは私と来て。あとこれ被って。」

 アサヒから投げられたヘルメットを海里は慌てて受け取った。彼女もヘルメットを被り、2人に告げる。

「後は任せるわ。ヘマしないでね。」
「お前こそちゃんと送り届けてくれよ。」
「分かってるわよ。さあ、行きましょ。」

 海里がアサヒの背後に座った瞬間、彼女は猛スピードで走り出した。海里は驚く。

「大丈夫なんですか?この速度。」
「ちゃんと守ってるわ。それより、私はあなたを送り届けなきゃならないの。自分の心配だけしてなさい。」
「送り届けるって・・・どこへ?」

 海里の質問にアサヒは怪しげな笑みを浮かべた。

「それは着いてからのお楽しみ。」
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