230 / 237
Case222.白と黒の集結②
しおりを挟む
巨大なシャンデリアが輝き、部屋の中は昼間のように明るかった。男女問わずワインを片手に微笑み、次々と財務大臣に挨拶をしている。
「上流階級、って言うのかな。空気感が違うね。」
「まあ、そうね。財務大臣の友人なんて私たちからは想像も付かない金回りでしょうし。」
アサヒの言葉に玲央は肩をすくめた。部屋の中央では小夜が大臣や議員たちにぎこちなく挨拶をしている。
「兄貴、来るの遅かったな。どこか行ってたのか?」
「ん?あー・・まあ、ちょっとね。小夜との待ち合わせ場所が遠かったっていうか。」
龍は訝しげに兄を見た。玲央はそれ以上何も言わず、アサヒと会話を続ける。龍は背後を振り返り、父と伯父を見た。
「あっちに行かなくていいのかよ。元々呼ばれたのは2人なんだろ?」
「政府の人間に媚び売ってるほど暇じゃねえよ。そもそも招待状を出したのは大臣の奥方だ。大臣本人は誰が来たかなんて8割方、把握してない。」
龍と玲央は思わず視線を動かした。確かに、大臣は顔を見てから少し驚き、考え、愛想笑いを浮かべながら挨拶しているのがほとんどだった。
「よく見てるな。」
「お前らもすぐに身につくよ。元が優秀なんだから。」
武虎と信蔵はパーティー会場に馴染みながら周囲を見渡していた。2人は言う。
「やっぱり何か“いる”気がする・・・。明確な位置は分からないけど、監視カメラや盗聴器だけじゃない。」
「ああ。問題はこれを仕掛けてんのがあの大臣か、そうじゃないか・・・だ。」
アサヒは自分たちの反対側にいる父と兄を見た。それらしい笑みを浮かべているが、楽しんでいないことは明らかである。
「しかし、残念だぜ。お前らが信頼してる、江本海里って奴に会ってみたかったんだけどな。」
「仕方ないよ。原稿が溜まってたみたいだし。」
「このところ色々あったからな、あいつ。」
少しの間談笑していると、一回り挨拶をし終えた小夜が歩いてきた。かなり疲れた顔をしており、勧められるワインも断っている。
「大丈夫?」
「あんまり・・。今日は早めに帰って寝たいわ。」
「そうした方がいいよ。顔色も良くないし。」
2人を見ている信蔵は、不思議そうに首を傾げて言った。
「玲央、お前天宮の嬢さんと付き合ってんのか?」
水を飲んでいた玲央は思いっきり咳き込んだ。小夜も咳払いをしている。
「何言ってるの、伯父さん。そんなわけないだろ?小夜とは割と付き合いが長いから、そういうことも分かるだけだよ。」
信蔵は武虎の方を見た。武虎はそっとしておいてやれ、と言わんばかりに苦笑する。
「それにしても、アサヒ。お前はこんな催し事、嫌いだろ?よく来る気になったな。」
「ええ。初めは嫌だったわよ。でも仕事に絡んでいるなら仕方ないし、何より・・・あの2人を見張ってかなきゃいけない気がしたもの。」
アサヒはうんざりとした顔で2人を見た。微かな薬品臭が龍たちの方まで漂ってくる。
「あの後、実家に戻って何かないか調べたわ。でも・・・何もなかった。残している方がおかしいけど、少しくらいあってもいいものでしょう?もしかしたら定期的に処分しているのかも、って思ったのよね。」
「あり得るな。」
すると、大臣がグラスを掲げて乾杯の準備が始まった。
「今宵は改革成功のパーティーにお集まり頂き、感謝致します。これからも日本の繁栄と平和を祈ってーーー乾杯‼︎」
クラッカーが鳴り、音楽がかけられた。手を取り合い、ダンスを始める。
「踊らねえのか?若人たちは。」
「そんな教養ねえよ・・・。」
東堂家の4人は端に寄ったが、長身で面立ちも整っている彼らは自然と目に留まった。アサヒと小夜は自覚がない4人を見て首をすくめる。
「ん・・・?何だ?今、何か・・・。」
「龍も感じた?よく分からないけど、何かがこっちに向かって来ているような・・・。」
その瞬間、窓の外に眩い閃光が見えた。4人は瞬時に全てを理解し、玲央は側にいた小夜の腕を思いっきり引っ張った。
「玲央⁉︎」
窓ガラスが割れ、何かが小夜の横を通り過ぎた。銃弾である。玲央は間一髪で躱したつもりだったが、躱しきれず、小夜は左肩から出血していた。
「小夜!大丈夫⁉︎」
「大丈夫よ、これくらいなら・・・。」
一気に会場が騒がしくなった。同時に、勢いよく窓ガラスが割れ、武装した男たちが屋敷に侵入した。
「炎の刺青・・・!まさか、こんなところで・・・。」
龍は苦々しげに呟いたが、最早話す時間すらなかった。男たちは銃を構え、合図なく一斉に斉射した。
※
「今の音は・・・?」
打ち合わせで帰りが遅くなった海里は、わずかに聞こえた銃声らしき音に足を止めた。辺りを見渡したが、悲鳴は聞こえない。
「気のせい・・でしょうか。早く帰らないと・・・。」
そう言いながらも、海里は不安が拭いきれなかった。
そして、龍たちが大臣の屋敷のパーティーに招かれていることを、この時思い出したのだ。
(もしそれをテロリストが知れば、警察を潰す絶好の機会になる・・・。銃すら持たない警察官は、彼らにとっては無力そのものだ。)
「こうしてはいられませんね。」
海里は真衣に帰りが何時になるか分からないと連絡し、踵を返して警視庁に向かった。
(義則さんや撫子さんがいるかもしれない。仮にそのお2人がいなくても、松坂警視や井上警視正がいらっしゃったら・・・!)
※
「クソ!こんな時に襲撃してくるなんて・・・‼︎」
「文句は後回しにしろ、玲央。この状況をどうにかしねえと、俺ら全員あの世行きだ。つまらねえ死に方はしたくないだろ?」
信蔵の言葉に、龍と玲央は頷いた。
「父さんと伯父さんは招待客の避難と警察に連絡してくれ。怪我人は病院に連れて行って欲しい。」
「2人で残る気?無茶だよ。」
「無茶でも誰かが止めないとならないんだ。安心しろって、親父。こんなことで死んだりしない。」
「・・・それならいいけど。」
2人は物陰からテロリストたちの様子を伺った。闇に紛れて来たのか、大勢ヘリから降りて来る。
「さて・・と、始めようか。」
「上流階級、って言うのかな。空気感が違うね。」
「まあ、そうね。財務大臣の友人なんて私たちからは想像も付かない金回りでしょうし。」
アサヒの言葉に玲央は肩をすくめた。部屋の中央では小夜が大臣や議員たちにぎこちなく挨拶をしている。
「兄貴、来るの遅かったな。どこか行ってたのか?」
「ん?あー・・まあ、ちょっとね。小夜との待ち合わせ場所が遠かったっていうか。」
龍は訝しげに兄を見た。玲央はそれ以上何も言わず、アサヒと会話を続ける。龍は背後を振り返り、父と伯父を見た。
「あっちに行かなくていいのかよ。元々呼ばれたのは2人なんだろ?」
「政府の人間に媚び売ってるほど暇じゃねえよ。そもそも招待状を出したのは大臣の奥方だ。大臣本人は誰が来たかなんて8割方、把握してない。」
龍と玲央は思わず視線を動かした。確かに、大臣は顔を見てから少し驚き、考え、愛想笑いを浮かべながら挨拶しているのがほとんどだった。
「よく見てるな。」
「お前らもすぐに身につくよ。元が優秀なんだから。」
武虎と信蔵はパーティー会場に馴染みながら周囲を見渡していた。2人は言う。
「やっぱり何か“いる”気がする・・・。明確な位置は分からないけど、監視カメラや盗聴器だけじゃない。」
「ああ。問題はこれを仕掛けてんのがあの大臣か、そうじゃないか・・・だ。」
アサヒは自分たちの反対側にいる父と兄を見た。それらしい笑みを浮かべているが、楽しんでいないことは明らかである。
「しかし、残念だぜ。お前らが信頼してる、江本海里って奴に会ってみたかったんだけどな。」
「仕方ないよ。原稿が溜まってたみたいだし。」
「このところ色々あったからな、あいつ。」
少しの間談笑していると、一回り挨拶をし終えた小夜が歩いてきた。かなり疲れた顔をしており、勧められるワインも断っている。
「大丈夫?」
「あんまり・・。今日は早めに帰って寝たいわ。」
「そうした方がいいよ。顔色も良くないし。」
2人を見ている信蔵は、不思議そうに首を傾げて言った。
「玲央、お前天宮の嬢さんと付き合ってんのか?」
水を飲んでいた玲央は思いっきり咳き込んだ。小夜も咳払いをしている。
「何言ってるの、伯父さん。そんなわけないだろ?小夜とは割と付き合いが長いから、そういうことも分かるだけだよ。」
信蔵は武虎の方を見た。武虎はそっとしておいてやれ、と言わんばかりに苦笑する。
「それにしても、アサヒ。お前はこんな催し事、嫌いだろ?よく来る気になったな。」
「ええ。初めは嫌だったわよ。でも仕事に絡んでいるなら仕方ないし、何より・・・あの2人を見張ってかなきゃいけない気がしたもの。」
アサヒはうんざりとした顔で2人を見た。微かな薬品臭が龍たちの方まで漂ってくる。
「あの後、実家に戻って何かないか調べたわ。でも・・・何もなかった。残している方がおかしいけど、少しくらいあってもいいものでしょう?もしかしたら定期的に処分しているのかも、って思ったのよね。」
「あり得るな。」
すると、大臣がグラスを掲げて乾杯の準備が始まった。
「今宵は改革成功のパーティーにお集まり頂き、感謝致します。これからも日本の繁栄と平和を祈ってーーー乾杯‼︎」
クラッカーが鳴り、音楽がかけられた。手を取り合い、ダンスを始める。
「踊らねえのか?若人たちは。」
「そんな教養ねえよ・・・。」
東堂家の4人は端に寄ったが、長身で面立ちも整っている彼らは自然と目に留まった。アサヒと小夜は自覚がない4人を見て首をすくめる。
「ん・・・?何だ?今、何か・・・。」
「龍も感じた?よく分からないけど、何かがこっちに向かって来ているような・・・。」
その瞬間、窓の外に眩い閃光が見えた。4人は瞬時に全てを理解し、玲央は側にいた小夜の腕を思いっきり引っ張った。
「玲央⁉︎」
窓ガラスが割れ、何かが小夜の横を通り過ぎた。銃弾である。玲央は間一髪で躱したつもりだったが、躱しきれず、小夜は左肩から出血していた。
「小夜!大丈夫⁉︎」
「大丈夫よ、これくらいなら・・・。」
一気に会場が騒がしくなった。同時に、勢いよく窓ガラスが割れ、武装した男たちが屋敷に侵入した。
「炎の刺青・・・!まさか、こんなところで・・・。」
龍は苦々しげに呟いたが、最早話す時間すらなかった。男たちは銃を構え、合図なく一斉に斉射した。
※
「今の音は・・・?」
打ち合わせで帰りが遅くなった海里は、わずかに聞こえた銃声らしき音に足を止めた。辺りを見渡したが、悲鳴は聞こえない。
「気のせい・・でしょうか。早く帰らないと・・・。」
そう言いながらも、海里は不安が拭いきれなかった。
そして、龍たちが大臣の屋敷のパーティーに招かれていることを、この時思い出したのだ。
(もしそれをテロリストが知れば、警察を潰す絶好の機会になる・・・。銃すら持たない警察官は、彼らにとっては無力そのものだ。)
「こうしてはいられませんね。」
海里は真衣に帰りが何時になるか分からないと連絡し、踵を返して警視庁に向かった。
(義則さんや撫子さんがいるかもしれない。仮にそのお2人がいなくても、松坂警視や井上警視正がいらっしゃったら・・・!)
※
「クソ!こんな時に襲撃してくるなんて・・・‼︎」
「文句は後回しにしろ、玲央。この状況をどうにかしねえと、俺ら全員あの世行きだ。つまらねえ死に方はしたくないだろ?」
信蔵の言葉に、龍と玲央は頷いた。
「父さんと伯父さんは招待客の避難と警察に連絡してくれ。怪我人は病院に連れて行って欲しい。」
「2人で残る気?無茶だよ。」
「無茶でも誰かが止めないとならないんだ。安心しろって、親父。こんなことで死んだりしない。」
「・・・それならいいけど。」
2人は物陰からテロリストたちの様子を伺った。闇に紛れて来たのか、大勢ヘリから降りて来る。
「さて・・と、始めようか。」
0
あなたにおすすめの小説
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる