19 / 23
18】多分失恋した
しおりを挟む
18】多分失恋した
『俺もさ、好きな人いるんだ』
その言葉が、頭から離れない。
あの後、何の話をしながら家に帰って来たのか。春樹の顔はどうだったか。いつもなら覚えているのに、何も覚えていない。何なら、夕飯の味も覚えていない。久しぶりにエビフライだったのに、残念だ。どこをどうして喉を通っていったのか。
時刻は11時を過ぎた自分の部屋。宿題を終わらせ、少し問題集を解き。一応受験生らしく勉強はしたが、今日ばかりは駄目だった。早く寝てしまおうとベッドに横になるが、一向に眠気が起きない。考えたくないことばかり考えてしまう。
「好きな人か……」
(当たり前だ。俺だって、春樹のことが好きなんだ。春樹にだって好きな人くらい、いるだろ)
何を期待していたんだろう。何を夢見ていたんだろう。
「分かったけど、改めているとなると結構ショックだな」
まだ決まったわけじゃないのに、俺は失恋したという感覚だった。
胸の奥が、キュゥッと苦しい。奥に隠している自身の恋心がドクドクと脈打って、確かな存在を感じるのに、締め付けられるような苦しさ。あんなに告白されているんだから、春樹が好きだと伝えれば、きっと成就するだろうに。何を迷っているんだろう。早く告白してしまえば良いのに。
「もし付き合うようになったら、今より春樹との時間が減るんだろうな」
当たり前だ。きっと彼女とデートするだろうし、彼女との思い出を作るに決まっている。春樹の隣にいるのが、俺じゃなくて彼女になっていくんだろう。
「はぁっ……」
もしもの未来を想像して、思わず凹んだ。
(春樹の隣は、ずっと俺だったら良いのに)
凹んだままの頭と気持ちは、更に未来。選ばれた、永遠を誓った人しか隣に立てないところまで想像してしまったわけで。
(俺って、こんなに妄想する力あったのか)
他人事のように思いながら、ズビッと鼻をすすり。目頭が熱くなって、少しだけ泣いた。
(春樹)
(春樹、好きだ)
その日見た夢は、気持ちに反して小さい頃。
『葵、行くぞ』
俺の前に立って、手を差し伸べて。今でも変わらない満面の笑みを浮かべる春樹がいて。同じく小さい子供の姿をした俺は、春樹の手を取る。
『待って、春樹』
『わっ……! 葵?』
『春樹、俺な。春樹のこと、好きだぞ?』
『本当?嬉しい。俺も葵のことが好き。いや、違うな。俺は大好きだ!』
キャッキャと楽しかった思い出に、とぷんと落ちるように。傷心の傷を癒す懐かしい夢だった。
*******
『俺もさ、好きな人いるんだ』
その言葉が、頭から離れない。
あの後、何の話をしながら家に帰って来たのか。春樹の顔はどうだったか。いつもなら覚えているのに、何も覚えていない。何なら、夕飯の味も覚えていない。久しぶりにエビフライだったのに、残念だ。どこをどうして喉を通っていったのか。
時刻は11時を過ぎた自分の部屋。宿題を終わらせ、少し問題集を解き。一応受験生らしく勉強はしたが、今日ばかりは駄目だった。早く寝てしまおうとベッドに横になるが、一向に眠気が起きない。考えたくないことばかり考えてしまう。
「好きな人か……」
(当たり前だ。俺だって、春樹のことが好きなんだ。春樹にだって好きな人くらい、いるだろ)
何を期待していたんだろう。何を夢見ていたんだろう。
「分かったけど、改めているとなると結構ショックだな」
まだ決まったわけじゃないのに、俺は失恋したという感覚だった。
胸の奥が、キュゥッと苦しい。奥に隠している自身の恋心がドクドクと脈打って、確かな存在を感じるのに、締め付けられるような苦しさ。あんなに告白されているんだから、春樹が好きだと伝えれば、きっと成就するだろうに。何を迷っているんだろう。早く告白してしまえば良いのに。
「もし付き合うようになったら、今より春樹との時間が減るんだろうな」
当たり前だ。きっと彼女とデートするだろうし、彼女との思い出を作るに決まっている。春樹の隣にいるのが、俺じゃなくて彼女になっていくんだろう。
「はぁっ……」
もしもの未来を想像して、思わず凹んだ。
(春樹の隣は、ずっと俺だったら良いのに)
凹んだままの頭と気持ちは、更に未来。選ばれた、永遠を誓った人しか隣に立てないところまで想像してしまったわけで。
(俺って、こんなに妄想する力あったのか)
他人事のように思いながら、ズビッと鼻をすすり。目頭が熱くなって、少しだけ泣いた。
(春樹)
(春樹、好きだ)
その日見た夢は、気持ちに反して小さい頃。
『葵、行くぞ』
俺の前に立って、手を差し伸べて。今でも変わらない満面の笑みを浮かべる春樹がいて。同じく小さい子供の姿をした俺は、春樹の手を取る。
『待って、春樹』
『わっ……! 葵?』
『春樹、俺な。春樹のこと、好きだぞ?』
『本当?嬉しい。俺も葵のことが好き。いや、違うな。俺は大好きだ!』
キャッキャと楽しかった思い出に、とぷんと落ちるように。傷心の傷を癒す懐かしい夢だった。
*******
55
あなたにおすすめの小説
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
小石の恋
キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。
助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。
なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。
果たして律紀は逃げ切ることができるのか。
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】
カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。
逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。
幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。
友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。
まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。
恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。
ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。
だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。
煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。
レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生
両片思いBL
《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作
※商業化予定なし(出版権は作者に帰属)
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。
雪 いつき
BL
凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。
二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。
それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。
「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」
人前でそんな発言をして爽やかに笑う。
発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる