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19】少し腫れた朝
19】少し腫れた朝
「あら、葵。どうしたの? 目が少し腫れてるわよ」
「昨日寝付けなくて、携帯で映画見たら泣いちゃって」
「あら、そうなの。まぁ、でもそんなに酷く腫れてるわけじゃないし、気づかない程度よ。水で顔を洗ったら、落ち着くんじゃない?」
「分かった」
朝起きて、いつも通り。朝ご飯を食べて、学校に行く準備をする。朝ご飯を食べていれば、母さんに目が腫れていると言われた。自分では、少し瞼が重たいなくらいだったのに良く気づいたと思う。これが、母親の洞察力だろうか。
重たい瞼の理由は分かる。昨日、春樹のことを思って、失恋したとうっかり泣いてしまったからだ。気持ちは少しスッキリしているが、少し恥ずかしい。
洗面台の前でバシャバシャと、いつもより多く水を弾いたが腫れは引いただろうか。
遅刻するわけにもいかない。いつもの時間に出て、春樹と学校に行くんだ。
「……気づくなよ」
顔を拭いて鏡を見て呟く。瞼が、起きた時よりも幾分軽くなった。これは大丈夫だろうと、制服に腕を通し。いつものリュックと鞄を持って玄関へ。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
母さんが玄関まで見送りに来てくれて、いつも通りの時間に家を出た。そうだ、いつも通りだ。昨日聞いたことにも触れずにいよう。いつも通り、春樹の隣を歩いて。いつも通り付き合いの長い幼馴染として振舞うだけ。
何食わぬ顔をして、一歩外へ。いつも通る道の先に、これまたいつも通り春樹が待っていた。
「葵、おはよう」
「おはよう」
(気づくな、気づくな、気づくな……!)
チラリと春樹の顔を見ただけで、すぐに前を向いた。どことなく、視線を感じる。
「葵?」
「んー? 俺の方じゃなくて、前見とかないと転ぶぞ」
「葵、目が少し腫れてるけど何かあった?」
気づくなと思った、俺の願いは叶わず。お前は俺の母さんか! とツッコミを入れそうなのを飲み込んだ。
「昨日寝る前に映画見たら、感動して泣いたんだよ」
「ふーん。そんなに泣ける映画だったんだ? 今度俺も見ようかな。タイトル教えてよ」
「……ッ! 適当に見てたから、忘れた」
ドキドキドキ。
急に伸びた指が、この前と同じように俺の目尻に触れた。指の腹の感触が、たった数センチ撫でられるだけの感触が、朝から心臓に悪い。大体、泣いたのだって、春樹が……春樹に好きな人がいるって知ったからで。
「あんま触んなって」
プイッと顔を反らして、春樹に背を向けて歩き出した。
「何で? てか、葵。なんか怒ってる?」
「怒ってない。何でって……春樹、好きな人いるんだろ? あんまり俺に構ったらダメだろ。多分」
「葵は良いんだよ」
「何だそれ」
あんなに昨日、失恋したと泣いたのに。春樹の俺は良いの一言で、つい嬉しくなってしまう。恋って、気持ちが忙しい。
「あてっ」
仕返しだと、春樹の頬をムニッと引っ張ってやった。
(早く、この気持ちにかたをつけないと)
このドキドキと、さよならしないといけない。
******
「あら、葵。どうしたの? 目が少し腫れてるわよ」
「昨日寝付けなくて、携帯で映画見たら泣いちゃって」
「あら、そうなの。まぁ、でもそんなに酷く腫れてるわけじゃないし、気づかない程度よ。水で顔を洗ったら、落ち着くんじゃない?」
「分かった」
朝起きて、いつも通り。朝ご飯を食べて、学校に行く準備をする。朝ご飯を食べていれば、母さんに目が腫れていると言われた。自分では、少し瞼が重たいなくらいだったのに良く気づいたと思う。これが、母親の洞察力だろうか。
重たい瞼の理由は分かる。昨日、春樹のことを思って、失恋したとうっかり泣いてしまったからだ。気持ちは少しスッキリしているが、少し恥ずかしい。
洗面台の前でバシャバシャと、いつもより多く水を弾いたが腫れは引いただろうか。
遅刻するわけにもいかない。いつもの時間に出て、春樹と学校に行くんだ。
「……気づくなよ」
顔を拭いて鏡を見て呟く。瞼が、起きた時よりも幾分軽くなった。これは大丈夫だろうと、制服に腕を通し。いつものリュックと鞄を持って玄関へ。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
母さんが玄関まで見送りに来てくれて、いつも通りの時間に家を出た。そうだ、いつも通りだ。昨日聞いたことにも触れずにいよう。いつも通り、春樹の隣を歩いて。いつも通り付き合いの長い幼馴染として振舞うだけ。
何食わぬ顔をして、一歩外へ。いつも通る道の先に、これまたいつも通り春樹が待っていた。
「葵、おはよう」
「おはよう」
(気づくな、気づくな、気づくな……!)
チラリと春樹の顔を見ただけで、すぐに前を向いた。どことなく、視線を感じる。
「葵?」
「んー? 俺の方じゃなくて、前見とかないと転ぶぞ」
「葵、目が少し腫れてるけど何かあった?」
気づくなと思った、俺の願いは叶わず。お前は俺の母さんか! とツッコミを入れそうなのを飲み込んだ。
「昨日寝る前に映画見たら、感動して泣いたんだよ」
「ふーん。そんなに泣ける映画だったんだ? 今度俺も見ようかな。タイトル教えてよ」
「……ッ! 適当に見てたから、忘れた」
ドキドキドキ。
急に伸びた指が、この前と同じように俺の目尻に触れた。指の腹の感触が、たった数センチ撫でられるだけの感触が、朝から心臓に悪い。大体、泣いたのだって、春樹が……春樹に好きな人がいるって知ったからで。
「あんま触んなって」
プイッと顔を反らして、春樹に背を向けて歩き出した。
「何で? てか、葵。なんか怒ってる?」
「怒ってない。何でって……春樹、好きな人いるんだろ? あんまり俺に構ったらダメだろ。多分」
「葵は良いんだよ」
「何だそれ」
あんなに昨日、失恋したと泣いたのに。春樹の俺は良いの一言で、つい嬉しくなってしまう。恋って、気持ちが忙しい。
「あてっ」
仕返しだと、春樹の頬をムニッと引っ張ってやった。
(早く、この気持ちにかたをつけないと)
このドキドキと、さよならしないといけない。
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