【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

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14】昨日のワケを話してみたら②

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14】昨日のワケを話してみたら②

 俺が勝手に居たたまれなくなって、お店から逃げたようなものなのに。海野さんは、俺がもう店に来てくれないじゃないかと思っていた。逆に申し訳ないと思っていると、海野さんが言った。

「あの。水野さんが良かったらでいいんですが、良かったら友達になってくれませんか?」

(俺が! 海野さんと友達!?)

理由も聞けば、これまた逆に俺なんかで良いのかと思う。

「駄目……ですか?」

(何だ、何だソレ!?)

イケメンで可愛い。反則だ。アイドルが好きな人が、応援したいだとか言葉で表現が難しいといっていた気持ちは、俺が今感じているものに似ているんだろうか。

「だ……」

「だ?」

グッ……! と、思わず目を瞑った。俺の視界に刺激が強すぎる。だが、返事はしないといけない。俺は海野さんと友達に……──。

「駄目じゃないです……」

「本当ですか! 嬉しいです」

再び海野さんの顔を見れば、ホッとした表情を浮かべていた。

「むしろ俺の方こそ、宜しくお願いします」

「はぁ~……緊張した。えっと、じゃあ。今は二人しかいないので」

「うん?」

「俺も、宜しくお願いします」

(おれ、オレ、俺!?)

「海野さん、俺って言いました?」

「ああ、はい。仕事中は僕って言っていますが、普段は俺なんですよ」

今俺って言った!? 一瞬聞き間違えかと思ったが、違うらしい。ニコッと微笑んだ顔が、妙に照れくさそうで、また俺の心臓がギュッとなる。

「そのこと、他のお客さんは」

「知りませんね。俺と水野さんだけです」

「ひぇっ」

「ああ、勿論。今みたいな二人だけの時しか言わないので、安心して下さい。勿論、弁当も気にせず買って頂いて」

最後は俺を解すように、悪戯に笑った。だから、そういう一つ一つの表情がヤバイ。

「海野さん。早速俺の事、からかってます? まぁ、弁当は買いますけど。野菜炒めも美味かったです」

「そう言って貰えて嬉しいです。昨日買ってくれたのは、日替わりなんですよ」

「そんなのあるんですね」

「日替わりは、うちは毎日作ってるわけじゃないので他と比べるとレアかも」

「へぇ~」

「ちなみに、今日はハンバーグは売り切れ」

「くぅっ……」

なんとなく、少しずつ口調が砕けてくるのも友達っぽくて何だか良い。別に毎日ハンバーグが食べたいわけじゃないが、海野さんに俺が子供舌なのがバレているのかもしれない。

「代わりと言ってはなんですが、今日はコロッケ弁当があるよ」

「コロッケ?」

「ははっ。やっぱり水野さん、こういうの好きだと思った。どちらかといえば、子供舌?」

バレてた。まぁ、子供舌というわけではないが、カタカナが長かったり、呪文見ないな名前の料理なんかより、昔から知っている料理の方が好きだ。

「そういうわけじゃないですけど……小難しいカタカタより、昔からあるのが好きかなって」

「ふ~ん。和食とかは? 嫌い?」

「嫌いってわけじゃないかなぁ……って、何聞いてるんすか」

「ちょっとリサーチ。ほら、弁当のおかずとかにね?」

「はぁ……。じゃあ、今日はコロッケ弁当をお願いします」
「毎度ありがとうございます。では800円になります」

「じゃあ、1000円から。袋はあります」

「かしこまりました。じゃあ、水野さん」

手際よく海野さんが、弁当を準備してお会計を済ませる。長ったようで、滞在時間は短かったような気がしつつ、受け取った弁当を持って出ようとすれば海野さんが言った。

「また来てね?」

「多分」

「多分て」

あの時の俺は、そう答えるのが精一杯だった。

********
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