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13】昨日のワケを話してみたら
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13】昨日のワケを話してみたら
どうしようか迷ったが、ええい! と俺の脚は海野食堂へと向かっていた。人気店らしく、先客の女性が弁当が無くなりそうだと話していたものだから、慌てるように店に入った。昨日も来たのに、数日ぶりのように感じながら。鼻孔に香った美味しそうな匂いに、一気に腹が減った。
ハッとしつつ、店内を見るとイケメンが一人。海野さんが立っていて、俺を見るなり嬉しそうに迎えてくれたので、気を張っていた俺は拍子抜けしてしまった。
(イケメンなのに、何だか海野さんが可愛いぞ……?)
「こ……こんばんは」
何を話したらいいんだろうと思ったが、とりあえず挨拶。すると俺よりも海野さんが言葉を続けた。
「良かった……もしかしたら、水野さん。もう来てくれないんじゃないかって思ったんですよ」
「え゛!?いや、そんなことは……」
あったかもしれないと、喉にでかかった言葉を何とか押し込めた。海野さんに心配されるほど、昨日の俺は酷かっただろうか。逆に申し訳ない気持ちになってくる。
「それより、水野さん大丈夫ですか?」
「あ……いや。その」
俺は全然大丈夫なのに。カウンター越しの海野さんに、何か言わなくてはと今度こそ口を開いた。
「昨日は、何か心配かけてしまってすみません。ちょっと俺がいて良いのかなとか、色々考えちゃって。海野さん、イケメンだから女性のお客さんが多いし。俺だけじゃなくて、他の女性のお客さんも、海野さんと話したいだろうしって思ったら、早く退散した方がいいなって思っちゃって……」
「いいですよ!?」
今度は逆に海野さんが、俺みたいな声を出した。意外でビックリする。ポカン……と口を開けていれば、キョロキョロと他に誰もいないのを念のために確認し「水野さん」と俺の名前を呼んだ。
「あの。水野さんが良かったらでいいんですが、良かったら友達になってくれませんか?」
「友達?」
「あ! 全然嫌だったら断って頂いて良いんです。こうして、うちのお弁当を買ってくれるお客さんとしての関係だけでも十分、有難いですし。いつも有難うございます。これも有難いんですが僕のお店、女性のお客さんが多くて……年が違い友達というのも、案外と少なくて。特に何をするっていうわけじゃないんですが、何気ない話とは出来れば……嬉しいなって思って……」
照れくさそうに話しながら、最後に昨日のようにチラリと海野さんが俺の方を見た。イケメンで、可愛い。心臓がギュッとする感覚と、なんとなくドキドキした。
「駄目……ですか?」
(何だ、何だソレ!?)
*********
どうしようか迷ったが、ええい! と俺の脚は海野食堂へと向かっていた。人気店らしく、先客の女性が弁当が無くなりそうだと話していたものだから、慌てるように店に入った。昨日も来たのに、数日ぶりのように感じながら。鼻孔に香った美味しそうな匂いに、一気に腹が減った。
ハッとしつつ、店内を見るとイケメンが一人。海野さんが立っていて、俺を見るなり嬉しそうに迎えてくれたので、気を張っていた俺は拍子抜けしてしまった。
(イケメンなのに、何だか海野さんが可愛いぞ……?)
「こ……こんばんは」
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「良かった……もしかしたら、水野さん。もう来てくれないんじゃないかって思ったんですよ」
「え゛!?いや、そんなことは……」
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「昨日は、何か心配かけてしまってすみません。ちょっと俺がいて良いのかなとか、色々考えちゃって。海野さん、イケメンだから女性のお客さんが多いし。俺だけじゃなくて、他の女性のお客さんも、海野さんと話したいだろうしって思ったら、早く退散した方がいいなって思っちゃって……」
「いいですよ!?」
今度は逆に海野さんが、俺みたいな声を出した。意外でビックリする。ポカン……と口を開けていれば、キョロキョロと他に誰もいないのを念のために確認し「水野さん」と俺の名前を呼んだ。
「あの。水野さんが良かったらでいいんですが、良かったら友達になってくれませんか?」
「友達?」
「あ! 全然嫌だったら断って頂いて良いんです。こうして、うちのお弁当を買ってくれるお客さんとしての関係だけでも十分、有難いですし。いつも有難うございます。これも有難いんですが僕のお店、女性のお客さんが多くて……年が違い友達というのも、案外と少なくて。特に何をするっていうわけじゃないんですが、何気ない話とは出来れば……嬉しいなって思って……」
照れくさそうに話しながら、最後に昨日のようにチラリと海野さんが俺の方を見た。イケメンで、可愛い。心臓がギュッとする感覚と、なんとなくドキドキした。
「駄目……ですか?」
(何だ、何だソレ!?)
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