【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

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22】片思いと豚のしょうが焼き

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22】片思いと豚のしょうが焼き

 静かに店の扉を閉めて、帰路につく。電車にのりつつ、俺の手には今しょうが焼きがあると思えば、不思議と元気が出た。しょうが焼とか、大体の男子が好きなおかずだろう。俺は、あのしょうがの風味のあるタレが大好きなんだ。
いつもの駅で降りて、更に自身の家へ。早く帰って食べたいと、速足になる。

(最近、帰りはずっと速足な気がするな)

もともと一日のうち、夕食が唯一の楽しみだったんだ。それが海野食堂の弁当を食べて、更に楽しみになっている。今日の晩御飯なんだろうと、喜ぶ子供みたいだなと思うが実際そうなので、否定はしない。

 「ただいま」

これまたいつものように、夕食の準備に取り掛かる。お湯が早く湧くように、やかんの火を強火にして弁当はレンジへ。今日はサラダなんてのは無く、大人しく全ての準備が終わるのを待つ。

「今日は、結構海野さんと話したな」

しかも、結構プライベートなこと。話せて嬉しい。聞けるかもと思ったが、彼女のことが聞けるとは。

「彼女はいなくても、好きな人はいるんだよなぁ……」

一人で考えれば、いなくて嬉しいと思った俺は確かにいたわけで。
そんでもって、好きな人はいると聞いてショックを受けた俺もいたわけで。

「うぉぉっ……分からん。なんだ、この気持ち」

むず痒いような、むず痛いような。

「何だんだよぉ……ほんと」

このタイミングで、助け船のようにピピッ! とレンジが終わる音がした。ついでに、お湯も沸きそうで火を止める。俺ってば、現金だな。

「くぅ~~。これ、この匂いだよ!」

レンジから温まった弁当を見れば、タレが付いて艶のある豚肉に、多めの玉ねぎ。しょうがの匂いが鼻孔に香って、気持ちをすぐに切り替えた。

「美味そう~」

弁当に、お茶の準備も出来た。さぁ、今日も美味しく食べるぞ。

「頂きます!」

両手を合わせ、早速玉ねぎと豚肉を口に頬張る。一口、二口と一気に運び、白米も一気に頬張った。

「やっぱり、美味っ!!」

豚肉も厚みがあるのに、硬すぎない。しっかり噛めば、豚肉の甘さを感じて、まるで自分が食通になったような気になった。

「海野さん、料理上手だなぁ」

失礼な話だが、イケメンという以外にも弁当がこんなに美味いんだから繁盛するのも当然かと思いつつ。

「そういえば海野さんも、この弁当食べるって言ってたな」

『俺、今日晩御飯食べる時は水野さんのこと思い出すね』

俺も、海野さんのことを思い出し。

「海野さんて、無自覚なタラシだよな」

そんなことを呟いて、再びしょうが焼きへと意識を集中させるのだった。
勿論、今日も完食した。

******
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