24 / 35
22】片思いと豚のしょうが焼き
しおりを挟む
22】片思いと豚のしょうが焼き
静かに店の扉を閉めて、帰路につく。電車にのりつつ、俺の手には今しょうが焼きがあると思えば、不思議と元気が出た。しょうが焼とか、大体の男子が好きなおかずだろう。俺は、あのしょうがの風味のあるタレが大好きなんだ。
いつもの駅で降りて、更に自身の家へ。早く帰って食べたいと、速足になる。
(最近、帰りはずっと速足な気がするな)
もともと一日のうち、夕食が唯一の楽しみだったんだ。それが海野食堂の弁当を食べて、更に楽しみになっている。今日の晩御飯なんだろうと、喜ぶ子供みたいだなと思うが実際そうなので、否定はしない。
「ただいま」
これまたいつものように、夕食の準備に取り掛かる。お湯が早く湧くように、やかんの火を強火にして弁当はレンジへ。今日はサラダなんてのは無く、大人しく全ての準備が終わるのを待つ。
「今日は、結構海野さんと話したな」
しかも、結構プライベートなこと。話せて嬉しい。聞けるかもと思ったが、彼女のことが聞けるとは。
「彼女はいなくても、好きな人はいるんだよなぁ……」
一人で考えれば、いなくて嬉しいと思った俺は確かにいたわけで。
そんでもって、好きな人はいると聞いてショックを受けた俺もいたわけで。
「うぉぉっ……分からん。なんだ、この気持ち」
むず痒いような、むず痛いような。
「何だんだよぉ……ほんと」
このタイミングで、助け船のようにピピッ! とレンジが終わる音がした。ついでに、お湯も沸きそうで火を止める。俺ってば、現金だな。
「くぅ~~。これ、この匂いだよ!」
レンジから温まった弁当を見れば、タレが付いて艶のある豚肉に、多めの玉ねぎ。しょうがの匂いが鼻孔に香って、気持ちをすぐに切り替えた。
「美味そう~」
弁当に、お茶の準備も出来た。さぁ、今日も美味しく食べるぞ。
「頂きます!」
両手を合わせ、早速玉ねぎと豚肉を口に頬張る。一口、二口と一気に運び、白米も一気に頬張った。
「やっぱり、美味っ!!」
豚肉も厚みがあるのに、硬すぎない。しっかり噛めば、豚肉の甘さを感じて、まるで自分が食通になったような気になった。
「海野さん、料理上手だなぁ」
失礼な話だが、イケメンという以外にも弁当がこんなに美味いんだから繁盛するのも当然かと思いつつ。
「そういえば海野さんも、この弁当食べるって言ってたな」
『俺、今日晩御飯食べる時は水野さんのこと思い出すね』
俺も、海野さんのことを思い出し。
「海野さんて、無自覚なタラシだよな」
そんなことを呟いて、再びしょうが焼きへと意識を集中させるのだった。
勿論、今日も完食した。
******
お気に入りほか、有難うございます
静かに店の扉を閉めて、帰路につく。電車にのりつつ、俺の手には今しょうが焼きがあると思えば、不思議と元気が出た。しょうが焼とか、大体の男子が好きなおかずだろう。俺は、あのしょうがの風味のあるタレが大好きなんだ。
いつもの駅で降りて、更に自身の家へ。早く帰って食べたいと、速足になる。
(最近、帰りはずっと速足な気がするな)
もともと一日のうち、夕食が唯一の楽しみだったんだ。それが海野食堂の弁当を食べて、更に楽しみになっている。今日の晩御飯なんだろうと、喜ぶ子供みたいだなと思うが実際そうなので、否定はしない。
「ただいま」
これまたいつものように、夕食の準備に取り掛かる。お湯が早く湧くように、やかんの火を強火にして弁当はレンジへ。今日はサラダなんてのは無く、大人しく全ての準備が終わるのを待つ。
「今日は、結構海野さんと話したな」
しかも、結構プライベートなこと。話せて嬉しい。聞けるかもと思ったが、彼女のことが聞けるとは。
「彼女はいなくても、好きな人はいるんだよなぁ……」
一人で考えれば、いなくて嬉しいと思った俺は確かにいたわけで。
そんでもって、好きな人はいると聞いてショックを受けた俺もいたわけで。
「うぉぉっ……分からん。なんだ、この気持ち」
むず痒いような、むず痛いような。
「何だんだよぉ……ほんと」
このタイミングで、助け船のようにピピッ! とレンジが終わる音がした。ついでに、お湯も沸きそうで火を止める。俺ってば、現金だな。
「くぅ~~。これ、この匂いだよ!」
レンジから温まった弁当を見れば、タレが付いて艶のある豚肉に、多めの玉ねぎ。しょうがの匂いが鼻孔に香って、気持ちをすぐに切り替えた。
「美味そう~」
弁当に、お茶の準備も出来た。さぁ、今日も美味しく食べるぞ。
「頂きます!」
両手を合わせ、早速玉ねぎと豚肉を口に頬張る。一口、二口と一気に運び、白米も一気に頬張った。
「やっぱり、美味っ!!」
豚肉も厚みがあるのに、硬すぎない。しっかり噛めば、豚肉の甘さを感じて、まるで自分が食通になったような気になった。
「海野さん、料理上手だなぁ」
失礼な話だが、イケメンという以外にも弁当がこんなに美味いんだから繁盛するのも当然かと思いつつ。
「そういえば海野さんも、この弁当食べるって言ってたな」
『俺、今日晩御飯食べる時は水野さんのこと思い出すね』
俺も、海野さんのことを思い出し。
「海野さんて、無自覚なタラシだよな」
そんなことを呟いて、再びしょうが焼きへと意識を集中させるのだった。
勿論、今日も完食した。
******
お気に入りほか、有難うございます
147
あなたにおすすめの小説
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
◆お友達の花々緒(https://x.com/cacaotic)さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。
◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。
災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!
椿谷あずる
BL
かつて“災厄の魔導士”と呼ばれ恐れられたゼルファス・クロードは、転生後、平穏に暮らすことだけを望んでいた。
ある日、夜の森で倒れている銀髪の勇者、リアン・アルディナを見つける。かつて自分にとどめを刺した相手だが、今は仲間から見限られ孤独だった。
平穏を乱されたくないゼルファスだったが、森に現れた魔物の襲撃により、仕方なく勇者を連れ帰ることに。
天然でのんびりした勇者と、達観し皮肉屋の魔導士。
「……いや、回復したら帰れよ」「えーっ」
平穏には程遠い、なんかゆるっとした日常のおはなし。
初恋ミントラヴァーズ
卯藤ローレン
BL
私立の中高一貫校に通う八坂シオンは、乗り物酔いの激しい体質だ。
飛行機もバスも船も人力車もダメ、時々通学で使う電車でも酔う。
ある朝、学校の最寄り駅でしゃがみこんでいた彼は金髪の男子生徒に助けられる。
眼鏡をぶん投げていたため気がつかなかったし何なら存在自体も知らなかったのだが、それは学校一モテる男子、上森藍央だった(らしい)。
知り合いになれば不思議なもので、それまで面識がなかったことが嘘のように急速に距離を縮めるふたり。
藍央の優しいところに惹かれるシオンだけれど、優しいからこそその本心が掴みきれなくて。
でも想いは勝手に加速して……。
彩り豊かな学校生活と夏休みのイベントを通して、恋心は芽生え、弾んで、時にじれる。
果たしてふたりは、恋人になれるのか――?
/金髪顔整い×黒髪元気時々病弱/
じれたり悩んだりもするけれど、王道満載のウキウキハッピハッピハッピーBLです。
集まると『動物園』と称されるハイテンションな友人たちも登場して、基本騒がしい。
◆毎日2回更新。11時と20時◆
ギャルゲー主人公に狙われてます
一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる