【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

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23】耳に聞こえたロコモコ丼

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23】耳に聞こえたロコモコ丼

 「お先に失礼します」

「お疲れ様~」
「水野君、またね~」

今日も今日とて、俺は朝の満員電車に耐えて会社へ。いつものように、時々外回りに出たりしながら、もっぱら定時近くになれば社内にいた。理由は簡単だ。定時で仕事を終えるため。そして今日も、俺は定時に仕事を切り上げた。俺と同じく、他の人も定時終わりを決め込んで、飲みに行く? とか話していたが、俺が目指すのは今日も海野さんのお店。

「ねぇ、水野君さ。最近本当に楽しそうだよね?」
「分かる。楽しそうだし。やっぱり恋してるんじゃない?」

「「ね~??」」

そんな会話が静かにあったことを、俺は知らない。
ただ弁当が売り切れませんようにだとか、今日は何を食べようかとか。それから、海野さんと話せたら良いなとか。そんなことを考えていた。社会人になったのに、何だが大学時代に戻ったみたいだ。毎日友達に会えるって、幸せなことだと思う。

「こんばんは」

もう慣れた様子で店の扉をあければ、今日も先客がいる。海野さんがヒラリと俺に手を振ってくれて、俺も小さく手を振り返した。今日は弁当が少ない感じがする。さて、何にしようかと思いつつ俺も人の中へと入る。

「海野さんのおすすめは何ですか?」

「僕のおすすめは、全部ですよ。全部自信作です」

「そうなんですね! えぇ~、迷うなぁ……」

「沢山迷って頂いて大丈夫ですので。是非食べたいと思ったものを選んで下さいね」

俺と違って慣れた様子で女性のお客さんの対応をしていた。
女性の方は、好意を抱いているようだが、海野さんはそうでもない。一お客さんという感じ。モテとこんな感じで慣れてくるものなのかと、弁当を見ながら思った。

(ああ、そういえば海野さん仕事の時は僕だったな)

俺と二人で話す時に慣れつつあるのか、何だか僕が新鮮だった。それから、俺しかそのことを知らないことが何となく特別感があって嬉しい。

(特別感が嬉しい……?)

ドキン。

(うん?)

何でまた、胸の奥がドキンと鳴ったんだ?

「じゃあ、コレ! このロコモコ丼にします!」

「有難うございます。800円です」

(ロコモコ丼!?)

また感じた不思議な感じも、ロコモコ丼の響きに流され。

(ロコモコ丼食べたい!)

俺の頭の中はロコモコ丼で一杯になっていた。

******
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