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26】いやいや、そんなはずない。
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26】いやいや、そんなはずない。
俺の名前は水野圭。年は25。年齢=彼女いない歴。
そんな自己紹介を、どうしてまた? しかも誰に向けて? と思ったが、気分転換的なものだ。俺は先日、あることに気付きかけていて。いや、気づいてはいるが、こう……認めてしまうのが怖いというのか、悩んでいることがある。
だが、俺は絶賛仕事中。カタカタとキーボードを叩きながら、仕事に集中して邪念、もとい「あること」を考えないようにしている最中。うぉぉおお! と1日こんな感じで仕事を続け、もう定時も近い。頭を使い、集中したせいかいつも以上に腹が減ってくる。
「水野君、どうしたの? 顔が険しいよ?」
「た、田中さん……!」
もうすぐ終わりという頃、田中が俺と傍へ。
こういう時に頼りになる田中さんが声をかけながら、俺の顔を覗きこむ。
「眉間の皴が深い……ムム。あの水野君が、眉間に皴を寄せるようなことが……?」
「あのって、俺は田中さんからどう見えてるんですか」
「可愛い弟かな? 多分皆も同じだろうけど」
「また弟かぁ~」
「まぁね。私の彼氏になろうだなんて、100年早いぞ」
やっぱり俺は弟らしい。だが、その前に「可愛い」が付いた。
「……田中さん」
「どうしたの?」
名探偵・水野再びだ。ムムッ……と考えた後、「俺って」と至極真面目な顔で田中さんに言った。
「俺って、可愛いんですかね?」
「え! やだ、どうしたの急に?」
「あ、いや。会社の人以外に可愛いって言われて」
俺の言葉を聞いた田中さんが口元を手で隠し高と思えば、すぐにこめかみに指先を当てて考えるポーズ。俺以上に名探偵のような仕草だった。
「……」
「田中さん?」
「水野君、あなた」
キラリと光った眼光に、思わずごくりと生唾を飲んで身構える。
「口説かれてるわよ」
「は?」
「だから、口説かれてるって。モテ期がきてるってこと」
「俺が、モテ……?」
思わず俺が魔法少女に? のノリになってしまう。
「さて、水野君は一体誰に口説かれたのかしら?」
「俺がモテ期? しかも口説かれ……?」
だとしたら、俺を口説いているのはたった一人。
(海野さん、俺のこと口説いてたのか……!?)
「いやいやいやいや、そんな田中さん冗談を……」
「私たちが水野君に兄妹感覚で可愛いね~とか軽いノリと違っていたら、口説かれてるわよ」
「……俺と二人きりの時に、微笑ながら可愛いとか言われるのは?」
「100%口説かれてるでしょ」
「う、嘘だぁ……」
笑って返してみたが、俺はちゃんと笑えているだろうか。それよりも、今日この後。俺はどんな顔をして海野食堂へ向かえば良いんだろう。
「ま、恋をするのは悪いことじゃないわよ」
じゃあね、とエールを送るように肩をポンと叩いて田中さんは自分の席へと戻って行った。壁にかかった時計は、定時を少し過ぎたところ。電話は既に誰かが留守番電話に変えていた。
(海野さんが俺を口説くとか……。いやいやいや、無い無い無い)
だが今の状態で海野さんの顔を、まともに見ることは出来ない。
「お疲れ様でした、お先に失礼します」
残業することなく、俺は今日も仕事を終え。会社を出たが、その足は海野食堂へは向かなかった。
******
更新しました。
終わりへハンドルを回し始めるので、もう少しお付き合い頂けますと幸いです
俺の名前は水野圭。年は25。年齢=彼女いない歴。
そんな自己紹介を、どうしてまた? しかも誰に向けて? と思ったが、気分転換的なものだ。俺は先日、あることに気付きかけていて。いや、気づいてはいるが、こう……認めてしまうのが怖いというのか、悩んでいることがある。
だが、俺は絶賛仕事中。カタカタとキーボードを叩きながら、仕事に集中して邪念、もとい「あること」を考えないようにしている最中。うぉぉおお! と1日こんな感じで仕事を続け、もう定時も近い。頭を使い、集中したせいかいつも以上に腹が減ってくる。
「水野君、どうしたの? 顔が険しいよ?」
「た、田中さん……!」
もうすぐ終わりという頃、田中が俺と傍へ。
こういう時に頼りになる田中さんが声をかけながら、俺の顔を覗きこむ。
「眉間の皴が深い……ムム。あの水野君が、眉間に皴を寄せるようなことが……?」
「あのって、俺は田中さんからどう見えてるんですか」
「可愛い弟かな? 多分皆も同じだろうけど」
「また弟かぁ~」
「まぁね。私の彼氏になろうだなんて、100年早いぞ」
やっぱり俺は弟らしい。だが、その前に「可愛い」が付いた。
「……田中さん」
「どうしたの?」
名探偵・水野再びだ。ムムッ……と考えた後、「俺って」と至極真面目な顔で田中さんに言った。
「俺って、可愛いんですかね?」
「え! やだ、どうしたの急に?」
「あ、いや。会社の人以外に可愛いって言われて」
俺の言葉を聞いた田中さんが口元を手で隠し高と思えば、すぐにこめかみに指先を当てて考えるポーズ。俺以上に名探偵のような仕草だった。
「……」
「田中さん?」
「水野君、あなた」
キラリと光った眼光に、思わずごくりと生唾を飲んで身構える。
「口説かれてるわよ」
「は?」
「だから、口説かれてるって。モテ期がきてるってこと」
「俺が、モテ……?」
思わず俺が魔法少女に? のノリになってしまう。
「さて、水野君は一体誰に口説かれたのかしら?」
「俺がモテ期? しかも口説かれ……?」
だとしたら、俺を口説いているのはたった一人。
(海野さん、俺のこと口説いてたのか……!?)
「いやいやいやいや、そんな田中さん冗談を……」
「私たちが水野君に兄妹感覚で可愛いね~とか軽いノリと違っていたら、口説かれてるわよ」
「……俺と二人きりの時に、微笑ながら可愛いとか言われるのは?」
「100%口説かれてるでしょ」
「う、嘘だぁ……」
笑って返してみたが、俺はちゃんと笑えているだろうか。それよりも、今日この後。俺はどんな顔をして海野食堂へ向かえば良いんだろう。
「ま、恋をするのは悪いことじゃないわよ」
じゃあね、とエールを送るように肩をポンと叩いて田中さんは自分の席へと戻って行った。壁にかかった時計は、定時を少し過ぎたところ。電話は既に誰かが留守番電話に変えていた。
(海野さんが俺を口説くとか……。いやいやいや、無い無い無い)
だが今の状態で海野さんの顔を、まともに見ることは出来ない。
「お疲れ様でした、お先に失礼します」
残業することなく、俺は今日も仕事を終え。会社を出たが、その足は海野食堂へは向かなかった。
******
更新しました。
終わりへハンドルを回し始めるので、もう少しお付き合い頂けますと幸いです
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