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第十二章 黒竜、再び王都へ行く
第八話 不発(上)
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黒竜シェーラに「兄達に“呪い”を掛けて、マリアンヌ様のことをアンヌだと思い込ませて欲しい」と頼んだところ、彼女はあっさり「わかったわ」と同意した。
これでいつ、兄達が家を訪ねてきても大丈夫のはずだ。
マリアンヌは、自分の正体を誤魔化すために、リヨンネの兄達にまで黒竜が呪いを掛けることを申し訳なく思っていた。しかし、そうしなければ兄達にマリアンヌの正体がバレてしまう。やむを得ない措置である。
それと同時にシェーラから、呪いは短期間しか持たないことを知らされた。それについて、シェーラは「重ね掛けをすればいいから大丈夫よ」と気軽に言っていた。
実は、シェーラは、リヨンネの兄ジャクセンと直接面識を持ったことが無い。以前ジャクセンの邸宅を訪ねた時、シェーラは具合が悪くて部屋で休んでおり、翌朝も早々に北方地方へ帰ってしまったからだ。
だが、ジャクセンの息子ユーリスには会ったことがある。ユーリスは艶やかな黒髪に青い瞳の美しい青年であった。その父親であるジャクセンも相当な美男子ということで、シェーラは密かに出会いを期待していた。
そして、ジャクセンが妻ルイーズを伴って、リヨンネの元を訪ねて来る日を迎えた。
それはリヨンネ達がこの王都へやって来て五日ほど経った頃であった。
シェーラがジャクセン夫妻に魔法を掛けるタイミングは、ジャクセン達がマリアンヌと対面する前にした。会った瞬間、マリアンヌ姫のことをジャクセンが認識して騒ぎになることを避けるためだった。
そして、玄関の窓から頭を覗かせたシェーラは、入口の鉄の門扉を開けて入って来たジャクセンとその妻ルイーズを見た。だが、シェーラは頭をすぐに引っ込めてその場にしゃがみこみ、「マ、マズイわ!!」と叫んで激しく動揺していた。本当なら、ジャクセンとルイーズを見たシェーラは、彼女がジャクセン達を視界に入れ、姿を一目見るだけでも呪いの力を使えるはずであった。
しかし、彼女の呪いの力はジャクセンとルイーズには届いていない。
「何がマズイのですか」
慌ててキースがシェーラに尋ねると、シェーラはわなわなと震えながら言った。
「あの人達は、護符を持っているの!!」
護符
呪いから身を守るお守りである。
「なんでそんなものを兄さんは持っているんだ!!!!」
リヨンネも真っ青になっている。
キースは「ああぁぁ」とため息のような声を上げて気が付いたのだった。
前回、シェーラがこの王都へやって来た時、リヨンネは黒竜シェーラが呪いの力を持つことも兄ジャクセンに話した。ジャクセンに問われるまますべてゲロっていた。そしてそのシェーラは前回の身分証を持ってこの王都へやって来ており(名前も誤魔化さずシェーラのままである)、呪いが十八番のシェーラがリヨンネのそばに今もいることをジャクセンは知っているのだ(リヨンネの王都への同行者についても、ジャクセンの耳に入っていた)。
そして警戒を怠らないジャクセンは、自身と最愛の妻に呪いがかけられないための護符を身に付けて、リヨンネの家へやって来たわけである。
「兄さんの用心深さが憎い……」
そんなことを言って、リヨンネはガンとテーブルに拳をぶつけて、その後、痛めた拳に顔をしかめて擦っていた。
「どうしましょうか」
キースの問いかけに、リヨンネは暗い顔で言った。
「どうするも何もないよ。もうこうなったら、兄さんにも一緒に仲間になってもらうしかない。兄さんは、マリアンヌ様のことを王家に告げ口するような人じゃない!! ……………………はず」
ものすごく不安いっぱいの気持ちのまま、キースはジャクセンがドアノッカーを叩いた扉を、ゆっくりと開けて彼らを建物の中へと招き入れたのだった。
これでいつ、兄達が家を訪ねてきても大丈夫のはずだ。
マリアンヌは、自分の正体を誤魔化すために、リヨンネの兄達にまで黒竜が呪いを掛けることを申し訳なく思っていた。しかし、そうしなければ兄達にマリアンヌの正体がバレてしまう。やむを得ない措置である。
それと同時にシェーラから、呪いは短期間しか持たないことを知らされた。それについて、シェーラは「重ね掛けをすればいいから大丈夫よ」と気軽に言っていた。
実は、シェーラは、リヨンネの兄ジャクセンと直接面識を持ったことが無い。以前ジャクセンの邸宅を訪ねた時、シェーラは具合が悪くて部屋で休んでおり、翌朝も早々に北方地方へ帰ってしまったからだ。
だが、ジャクセンの息子ユーリスには会ったことがある。ユーリスは艶やかな黒髪に青い瞳の美しい青年であった。その父親であるジャクセンも相当な美男子ということで、シェーラは密かに出会いを期待していた。
そして、ジャクセンが妻ルイーズを伴って、リヨンネの元を訪ねて来る日を迎えた。
それはリヨンネ達がこの王都へやって来て五日ほど経った頃であった。
シェーラがジャクセン夫妻に魔法を掛けるタイミングは、ジャクセン達がマリアンヌと対面する前にした。会った瞬間、マリアンヌ姫のことをジャクセンが認識して騒ぎになることを避けるためだった。
そして、玄関の窓から頭を覗かせたシェーラは、入口の鉄の門扉を開けて入って来たジャクセンとその妻ルイーズを見た。だが、シェーラは頭をすぐに引っ込めてその場にしゃがみこみ、「マ、マズイわ!!」と叫んで激しく動揺していた。本当なら、ジャクセンとルイーズを見たシェーラは、彼女がジャクセン達を視界に入れ、姿を一目見るだけでも呪いの力を使えるはずであった。
しかし、彼女の呪いの力はジャクセンとルイーズには届いていない。
「何がマズイのですか」
慌ててキースがシェーラに尋ねると、シェーラはわなわなと震えながら言った。
「あの人達は、護符を持っているの!!」
護符
呪いから身を守るお守りである。
「なんでそんなものを兄さんは持っているんだ!!!!」
リヨンネも真っ青になっている。
キースは「ああぁぁ」とため息のような声を上げて気が付いたのだった。
前回、シェーラがこの王都へやって来た時、リヨンネは黒竜シェーラが呪いの力を持つことも兄ジャクセンに話した。ジャクセンに問われるまますべてゲロっていた。そしてそのシェーラは前回の身分証を持ってこの王都へやって来ており(名前も誤魔化さずシェーラのままである)、呪いが十八番のシェーラがリヨンネのそばに今もいることをジャクセンは知っているのだ(リヨンネの王都への同行者についても、ジャクセンの耳に入っていた)。
そして警戒を怠らないジャクセンは、自身と最愛の妻に呪いがかけられないための護符を身に付けて、リヨンネの家へやって来たわけである。
「兄さんの用心深さが憎い……」
そんなことを言って、リヨンネはガンとテーブルに拳をぶつけて、その後、痛めた拳に顔をしかめて擦っていた。
「どうしましょうか」
キースの問いかけに、リヨンネは暗い顔で言った。
「どうするも何もないよ。もうこうなったら、兄さんにも一緒に仲間になってもらうしかない。兄さんは、マリアンヌ様のことを王家に告げ口するような人じゃない!! ……………………はず」
ものすごく不安いっぱいの気持ちのまま、キースはジャクセンがドアノッカーを叩いた扉を、ゆっくりと開けて彼らを建物の中へと招き入れたのだった。
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