転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
252 / 711
第十三章 失われたものを取り戻すために

第十五話 地下の水場(上)

しおりを挟む
 ルーシェは、アルバート王子に対し、カルフィーの屋敷へ忍び込んで、友親を探そうと提案した。
 とにかく友親の居場所が分からないと、協力もしてもらえないのだ。
 きっと友親は、あのカルフィーの屋敷の中にいるとルーシェは確信していた。
 そしてもし友親が見つかったのなら、友親がカルフィーを説得してくれるはずだと、先の事については、ルーシェは随分と楽観的な予想をしていたのだ。

 だが友親の行方が分からない中では、カルフィーの屋敷に忍び込み、何かしらの情報を得るしかない。アルバート王子は、出来るだけカルフィーや他の者達に見つからないようにすることを条件に、カルフィーの屋敷へ忍び込もうというルーシェの提案を受け入れたのだった。



 そしてその日の夜も遅い時刻、アルバート王子を背に乗せた紫色の竜であるルーシェは、ハタハタとカルフィーの広大な屋敷の上で飛びながら留まっていた。眼下にはカルフィー魔術師の屋敷の棟が幾つもある。

 心話で、アルバート王子に話しかけるルーシェ。

(だだっ広いけど、どこに友親がいると思う?)

 その問いかけに、アルバート王子は答えた。

(一番警備が厚いところだ)

 カルフィー魔術師の、友親への態度を見ればあの魔術師がどんなにか友親のことを大事にしているのか分かる。友親が転びそうになればすぐさまその手を取り、過保護なほど周囲を護衛達で固めて守っているのだ。当然屋敷でも、最も奥まった警戒の強い場所にいるはずだ。

(違いないね)

 あの長髪の優男であるカルフィー魔術師のことを、ルーシェは気に食わなかったが、彼が友親を大切にしていることだけは認めていた。

 ルーシェは王子を背に乗せたまま、屋敷の棟を見回した。
 警護する私兵の数の多い場所を探すように目を彷徨わせる。
 それが、敷地の中心部にある平屋の建物だと分かると、王子に尋ねた。

(あれかな)

 ルーシェが伝えると、王子は頷いた。

(そうだろう。近づいてみてくれ)

 ルーシェは空からその円形の平屋の建物に近づいた。
 建物自体は小さかった。そこには警護する私兵の数がおかしなくらい、いっぱいいる。
 十人ほどの警護の私兵が二メートル間隔で立っているような様子で、地上から近づくのは明らかに無理だった。

(どうする、王子)

(月が雲に隠れた時に、屋根の上に降りてくれ)

 ルーシェは空を見上げた。灰色の雲が真っ白い月の前にゆっくりとかかろうとしていた。
 風に運ばれた雲が、白い月を隠して、目の前が暗く翳った時、ルーシェは王子を背に乗せたまま、音を立てぬようにゆっくりと平屋の建物の屋根に降り立った。
 
 だが、降りた瞬間に、弦を弾いたような音がビィンと響き渡る。

「!!!!」

 ルーシェとその背中に乗るアルバート王子目掛けて、平屋の建物の屋根の縁から、無数の矢が撃ち込まれた。
 屋根に接触すると反応する魔道具のようだ。

(あの野郎!!)

 カルフィー魔術師の警戒ぶりに悪態をつきながら、ルーシェは土魔法を展開させて、自分とアルバート王子の周囲に、ぶ厚い土の壁を出現させた。護衛騎士バンナムと何度も訓練した魔法である。もはや危機を察するだけで反射的にそれを作ることが出来る。そしてその土魔法の壁に、何本もの矢が食い込んでいく。

 当然、平屋の周囲で警戒していた私兵達も、空から侵入者が現れたことに声を上げ、笛を吹いていた。

「侵入者だ!!」

「侵入者がいるぞ!!」

 大きな声で叫ばれ、屋根の上に上ろうと梯子を運んで来ようとする者達まで出てきている。

(どうする?)

 大きな竜の姿よりも、人間の幼児の姿の方が攻撃は当たりにくい。
 ルーシェは幼児の姿になると、アルバート王子の膝にしがみつく。

 アルバート王子は声に出して言った。

「屋根を土魔法で穴が開けられるだろう。そこから入るぞ」

「分かった」

 ルーシェは王子の指示の元、土魔法で平屋の建物の屋根に穴を開ける。土魔法の使い手であるルーシェは、こうした建造物も砂に返すこともできるのだ。屋根が一部砂のように崩れて、人が入れるほどの大きさの穴が開くと、王子は幼児姿のルーシェをいつものように背負い、建物の中へと入って行ったのだった。



 建物の中は明るかった。
 壁に明りの魔道具が点灯している。
 そこは円形の部屋で、地下へと続く階段が開いていた。
 どうやらこの円形の建物は、地下の部屋へと続く階段のための建物であったようだ。部屋の中には階段しかないのだ。

 建物の中へ入ることは、私兵達には許されていないようで、建物の外が騒がしい。
 人も集まっている気配がする。
 
「先へ進むぞ」

 アルバート王子はそう言うと、ルーシェを背中に背負ったまま階段を降り始めた。
 その階段は長かった。
 明りの魔道具が壁につけられているため、暗さはまったくない。
 王子はルーシェを背負ったまま急ぎ足で下っていく。
 背負われながら、ルーシェが不吉なことを気弱な声で言う。

「もし下に友親がいなかったら、どうしよう……」

 階段は一本道なのである。そして地下だから、窓を破って空へと逃げることも出来ない。追い詰められたらまさに袋の鼠状態である。

「後のことを今は考えるな」

 こうなったら先へ進むしかないのだ。
 アルバート王子は長い階段を、とにかく下へ下へと下り続けていったのだった。

 やがてようやく階段が尽きたところで、扉が現れた。
 扉には鍵が掛かっている。
 それを、アルバート王子が手加減しながら腰から抜いた“勇者の剣”を一閃させると、扉は大きな音を立てながら前へと倒れたのだった。




 そこは広々とした円形の部屋だった。
 木の扉が倒れた先には石の床がしばらく続く。そしてそれが突然途切れたかと思うと、浅い、膝丈ほどの水をたたえたプールのようなものが現れる。
 アルバート王子はルーシェを背中に背負ったまま歩いていく。

 想像とは違った部屋であった。
 三橋友親は、地下の部屋で匿われているか、閉じ込められている状況ではないかと考えていた。
 長い階段を降りた、石の壁と床で囲まれたその部屋には、浅い水場があるだけだった。
 人のいる様子は見えない。
 静まり返った部屋に、ルーシェはゴクリと唾を飲み込んでいた。

「…………友親はいないみたいだ」

 だが、誰もいないガランとした、ただ、水がたたえられている地下にある部屋の地上部分に、あれほど警備の私兵を置くことが解せなかった。
 ルーシェを背負ったままのアルバート王子が、水場の近くにゆっくりと近寄る。
 綺麗な水で、底の灰色をした石の部分まで透けて見えるくらいだった。
 長い階段を降りた先にあった水は、ルーシェが好奇心から触れてみたところ、ひんやりと冷たい。
 深い地下にある水だ。湧き水なのだろうか。
 不思議なことに、その水に触れていると、何故か力が満ち溢れてくるような気がした。何らかの効用のある地下水のようだ。
 
「飲めるのかな」

 そんなことをポツリと口にした後、ルーシェは視線を先にやって、小さく悲鳴を上げたのだった。





 浅い水の中で、横たわっていた人影があった。
 水の中でユラユラと揺れる黒髪に、彫りの浅いその顔立ちをルーシェはよく知っていた。

「友親!!!!」

 ルーシェは気が付くと、すぐさま水の中に飛び込んだ。大人の膝丈までの水は、幼児のルーシェの胸ほどまでに達する。溺れそうになるルーシェを慌ててアルバート王子は掴んで、自分の腕の中に抱き上げた。
 ルーシェは半狂乱になっていた。

「友親、友親が!! どうして友親が!!」

 地下の部屋の水の中で横になっているのか分からない。
 死んでいるのか、ピクとも動かない。

 ルーシェは泣きじゃくり、アルバート王子の胸にしがみつく。
 アルバート王子は水の中を歩き、水の中で静かに仰向けに横たわっている友親のそばに近寄ろうとした。

 その時、背後の壊した扉の方から制止の声が響き渡った。

「トモチカを起こすな!!!!」

 恐らく相当急いで来たのだろう。息を切らし、顔を強張らせ、声を張り上げて部屋に飛び込んで来たのは、友親の伴侶の一人で、彼の護衛を務めていたケイオスだった。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

腐男子♥異世界転生

よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...