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第十三章 失われたものを取り戻すために
第十四話 カルフィー魔道具店から追い出された
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そして、アルバート王子とルーシェはカルフィー魔道具店から追い出された。
「お前達は出入り禁止にする!!」
そうカルフィー魔術師は仁王立ちして店先で言い放つ。
それにアルバート王子に抱っこされている幼児姿のルーシェは「俺はお前に会いに来たんじゃねぇぇぇ。友親を出せ、この野郎!!」と顔を真っ赤にして怒っていた。怒ってアルバート王子の腕の中で暴れている。
仕方なく、アルバート王子は喚き散らすルーシェを抱きながら、その場は店を後にしたのだった。
その日の宿で、アルバート王子は幼児姿のルーシェに少しだけ説教した。
「あのように店先で騒ぐとまずいだろう、ルーシェ」
椅子に座っている幼児のルーシェは、唇を尖らせていた。両腕を組んでムッツリとした顔でこう言う。
「だってあいつが悪いんだ。友親に会わせてくれないなんて酷い。酷すぎる。あいつが友親の旦那なんて最低だ。どうしてあんな最低な奴を友親は伴侶にしているんだ」
「そうだな」
だが、アルバート王子はある程度推測していた。
この世界の人間とは容姿からして異なるトモチカらは、この世界へ転移してきた時から、その“魔素”を操れるという特異な能力を持つが故に、目を付けられることになったと思う。実際、石野凛はハルヴェラ王国の王太子に望まれ、三橋友親は、二人の男を伴侶として囲い込まれた。
誰かの庇護が無ければ、この世界で生き抜くことは出来なかっただろう。
特に三橋友親と沢谷雪也の二人は、属性の一つも持たない、“魔素”だけを貯めることができる能力者だったから、余計に一人では生き辛かったはずだ。おそらくトモチカは、苦いものでも飲み込むようにして生きてきたはずだ。
「それにあいつ、友親に会わせることはできないって言っていた」
あの言い方だと、カルフィーのそばに友親がいることは間違いない。
「ああ」
「もしかして、あいつに友親は閉じ込められているんじゃないのか!!」
随分と過激な発想にルーシェは至ったのだった。
しかし、その時のルーシェの発想は、あながち間違いではなかったと後に分かるのである。
その日はむしゃくしゃした気分のままルーシェは、アルバート王子と夕食をとり、宿で眠りについた。翌日、カルフィーや友親、そしてもう一人の伴侶ケイオスの住むという屋敷を訪れる予定だった。
翌日訪れた屋敷もまた、大豪邸だった。門扉さえも見上げるほど大きく、入口には門を守る兵士が何人も警戒して立っている様子だ。勿論それはカルフィー魔術師の私兵なのだろう。
今まで訪れてきた王宮と同じくらい、いやそれ以上の広大な敷地。塀の外からそれを認めたルーシェは、またまたアルバート王子に抱っこされている腕の中で、のけぞり返ってその豪邸を眺めていた。
「……で、デカすぎる」
全敷地の周囲を回るだけでも、半日くらいかかるんじゃないかと思われる。街に面している場所は、背の高い塀がずっと続いており、その中は鬱蒼とした木々が生え、さらにその奥に屋敷の棟があるようだ。棟も何棟もあるのが遠目からも分かる。
正面から門の扉を叩いて訪ねても、昨日のカルフィー魔術師の様子だと、絶対に門前払いをされる。
ルーシェはアルバート王子の腕の中で渋面を作っていた。
とりあえず、二人はカルフィー魔術師達の邸宅近くの茶店に入り、どうするか考えることにした。
幼児姿のルーシェはアルバート王子の膝の上に座って、甘いケーキをムシャムシャと食べながら言った。人並外れた美貌のルーシェの顔が見えてしまうと、騒がれる恐れがあるので、目深にフードを被り、ケーキを食べている。
「やっぱり、屋敷に忍び込んで友親に会うしかないと思うんだ、俺」
「………………」
不穏な発言をするルーシェである。
しかし、正面切って面会を求めても拒否される現状、取れる選択肢はそれしかないように思える。
「随分と警戒が厳しい屋敷のようだったが。見つかればコトだな」
屋敷の正門前には私兵が立ち並び、警戒していた。そして塀の向こうでも巡回している姿が見えた。塀自体も普通なら乗り越えられない高さである。侵入して見つかったら、騒動になるだろうし、場合によっては外交問題にまで発展してしまうかも知れない。
「友親に会えれば大丈夫だよ。友親は絶対に俺の味方をしてくれるから。忍び込んだことにガタガタ言ってくるだろうあの野郎のことも、友親がなんとかしてくれるって」
全く友親頼りのルーシェである。
そう、三橋友親は前世のルーシェの親友で、絶対に彼は自分の味方をしてくれるとルーシェは信じていた。
アルバート王子は、ルーシェのまんまるほっぺについたクリームを手で拭い、その指を自身の唇で舐めとりながら言った。
「……とにかくトモチカ殿に会わなければ話は始まらないからな」
「うん」
無意識にアルバート王子がそうした甘い行動を取ることにルーシェは少しばかり頬を染め、それから「王子も、俺のケーキも食べる?」とケーキをフォークで刺して渡すと、「お前の口についているクリームで十分甘い」と言って、またルーシェの口元についているクリームを手で拭って自分の口に入れていたのだった。
それを見ていた茶店の店員が、銀色のお盆を床に落として激しく動揺していたのだった。
「お前達は出入り禁止にする!!」
そうカルフィー魔術師は仁王立ちして店先で言い放つ。
それにアルバート王子に抱っこされている幼児姿のルーシェは「俺はお前に会いに来たんじゃねぇぇぇ。友親を出せ、この野郎!!」と顔を真っ赤にして怒っていた。怒ってアルバート王子の腕の中で暴れている。
仕方なく、アルバート王子は喚き散らすルーシェを抱きながら、その場は店を後にしたのだった。
その日の宿で、アルバート王子は幼児姿のルーシェに少しだけ説教した。
「あのように店先で騒ぐとまずいだろう、ルーシェ」
椅子に座っている幼児のルーシェは、唇を尖らせていた。両腕を組んでムッツリとした顔でこう言う。
「だってあいつが悪いんだ。友親に会わせてくれないなんて酷い。酷すぎる。あいつが友親の旦那なんて最低だ。どうしてあんな最低な奴を友親は伴侶にしているんだ」
「そうだな」
だが、アルバート王子はある程度推測していた。
この世界の人間とは容姿からして異なるトモチカらは、この世界へ転移してきた時から、その“魔素”を操れるという特異な能力を持つが故に、目を付けられることになったと思う。実際、石野凛はハルヴェラ王国の王太子に望まれ、三橋友親は、二人の男を伴侶として囲い込まれた。
誰かの庇護が無ければ、この世界で生き抜くことは出来なかっただろう。
特に三橋友親と沢谷雪也の二人は、属性の一つも持たない、“魔素”だけを貯めることができる能力者だったから、余計に一人では生き辛かったはずだ。おそらくトモチカは、苦いものでも飲み込むようにして生きてきたはずだ。
「それにあいつ、友親に会わせることはできないって言っていた」
あの言い方だと、カルフィーのそばに友親がいることは間違いない。
「ああ」
「もしかして、あいつに友親は閉じ込められているんじゃないのか!!」
随分と過激な発想にルーシェは至ったのだった。
しかし、その時のルーシェの発想は、あながち間違いではなかったと後に分かるのである。
その日はむしゃくしゃした気分のままルーシェは、アルバート王子と夕食をとり、宿で眠りについた。翌日、カルフィーや友親、そしてもう一人の伴侶ケイオスの住むという屋敷を訪れる予定だった。
翌日訪れた屋敷もまた、大豪邸だった。門扉さえも見上げるほど大きく、入口には門を守る兵士が何人も警戒して立っている様子だ。勿論それはカルフィー魔術師の私兵なのだろう。
今まで訪れてきた王宮と同じくらい、いやそれ以上の広大な敷地。塀の外からそれを認めたルーシェは、またまたアルバート王子に抱っこされている腕の中で、のけぞり返ってその豪邸を眺めていた。
「……で、デカすぎる」
全敷地の周囲を回るだけでも、半日くらいかかるんじゃないかと思われる。街に面している場所は、背の高い塀がずっと続いており、その中は鬱蒼とした木々が生え、さらにその奥に屋敷の棟があるようだ。棟も何棟もあるのが遠目からも分かる。
正面から門の扉を叩いて訪ねても、昨日のカルフィー魔術師の様子だと、絶対に門前払いをされる。
ルーシェはアルバート王子の腕の中で渋面を作っていた。
とりあえず、二人はカルフィー魔術師達の邸宅近くの茶店に入り、どうするか考えることにした。
幼児姿のルーシェはアルバート王子の膝の上に座って、甘いケーキをムシャムシャと食べながら言った。人並外れた美貌のルーシェの顔が見えてしまうと、騒がれる恐れがあるので、目深にフードを被り、ケーキを食べている。
「やっぱり、屋敷に忍び込んで友親に会うしかないと思うんだ、俺」
「………………」
不穏な発言をするルーシェである。
しかし、正面切って面会を求めても拒否される現状、取れる選択肢はそれしかないように思える。
「随分と警戒が厳しい屋敷のようだったが。見つかればコトだな」
屋敷の正門前には私兵が立ち並び、警戒していた。そして塀の向こうでも巡回している姿が見えた。塀自体も普通なら乗り越えられない高さである。侵入して見つかったら、騒動になるだろうし、場合によっては外交問題にまで発展してしまうかも知れない。
「友親に会えれば大丈夫だよ。友親は絶対に俺の味方をしてくれるから。忍び込んだことにガタガタ言ってくるだろうあの野郎のことも、友親がなんとかしてくれるって」
全く友親頼りのルーシェである。
そう、三橋友親は前世のルーシェの親友で、絶対に彼は自分の味方をしてくれるとルーシェは信じていた。
アルバート王子は、ルーシェのまんまるほっぺについたクリームを手で拭い、その指を自身の唇で舐めとりながら言った。
「……とにかくトモチカ殿に会わなければ話は始まらないからな」
「うん」
無意識にアルバート王子がそうした甘い行動を取ることにルーシェは少しばかり頬を染め、それから「王子も、俺のケーキも食べる?」とケーキをフォークで刺して渡すと、「お前の口についているクリームで十分甘い」と言って、またルーシェの口元についているクリームを手で拭って自分の口に入れていたのだった。
それを見ていた茶店の店員が、銀色のお盆を床に落として激しく動揺していたのだった。
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