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第十四章 招かれざる客人
第十六話 素朴な疑問(下)
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ルーシェの問いかけに、リン王太子妃は答えた。
「うちの国は三か国の中で一番遠い場所にあって、そのせいかまだ“星弾”の攻撃は一度も受けたことがないのよね。うちの国が対サトー同盟に加わった理由を知っている?」
アルバート王子は頷いたが、ルーシェはプルプルと頭を振った。
「知らない!!」
「アレドリア王国とハルヴェラ王国は、その昔から、双子国、兄弟国とも言われていて、アレドリア王国の王家とハルヴェラ王国の王家は極めて親しい姻戚関係にあるの。それもずーっと昔から。同盟にアレドリア王国が加盟することになった時は、ハルヴェラ王国も一緒にという話になったのよ」
「え、それだけが理由なの!?」
「そうよ。それだけが理由なの」
そのことにちょっとルーシェはびっくりした。仲良しだから同盟も一緒。
戦う時も一緒だし、……ある意味、沈む時も一緒なのか!!
「…………まぁ、今までそれでうまいことやってきたし、アレドリア王国はほら、知っての通り、大陸随一の学術都市を抱えていて、魔法使いもめちゃくちゃたくさんいるでしょ。大陸においては知の先駆者的な国なのよね。対してハルヴェラ王国は穏やかな小さな国で、特筆すべき産業もないし」
「そんなことはありません!! リン王太子妃殿下が王太子妃になられてから、随分と開明的なことが行われるようになっているではありませんか」
今まで黙ってそばに控えていた女騎士ガヴリエラが、我慢できないように口を開く。それに、女官メリッサも頷いている。
「そうです。民のために学校も開き、目安箱なるものを置き、新しい作物を植え、観光産業も起こし」
そうメリッサも言葉を続ける。
どうやら王宮の者達は、随分とリン王太子妃贔屓のようだ。口々に王太子妃の今までの業績を口にする。
それに、リン王太子妃はヒラヒラと手を振った。
「そういうのはいいから。まぁ、まとめると、うちの国はお兄ちゃん国のアレドリア王国の言う通りにやることが多くて同盟に入りました。でも小さな国でサトー王国からは三か国の中で一番遠いのでまだ攻撃を受けていないということ」
「なるほど、分かりやすいね」
アルバート王子の膝の上で、小さなルーシェが頷いている。
随分と失礼な解説だが、すんなりと納得しているルーシェに、何故かガヴリエラとメリッサはジロリと睨むように見つめてきた。苦情を申し立てたいらしいが、王太子妃の言うことなので睨むしかない。そんな簡単に納得するなというところだろう。
「うちの国を攻めるよりも、ルート的にはアレドリア王国の方がサトー王国に先に攻められるはずだし。アレドリア王国も、うちの国で何かあれば魔術師達を派遣するという話になっているのよね」
アレドリア王国にはたくさん魔術師がいるから、万が一の際には魔術師を派遣して防御魔法を多重にかける方法で同じようにハルヴェラ王国も守ろうというのだろう。
「でも、アレドリア王国が先にやられたら、次はうちなんだから、その時には魔術師を派遣するもへったくれもないと思わない? 先にやられているアレドリア王国から派遣できるわけないじゃない」
その言葉に、女官メリッサが辺りを見回し「妃殿下、滅多な事を仰ってはなりません」と言った。
リン王太子妃殿下のざっくばらんな意見に、室内の護衛騎士達も女官達もなんとなしに顔色が悪い。
「いや、本当のことでしょ。そのことを誰も指摘しないことがおかしいと思わないと。私は陛下に申し上げたこともあったけれど、陛下は嫌ーな顔をしてそのままだったわ。まぁ、天下のアレドリア王国がやられるはずがないというお考えなのでしょうけど。うちの国は今までずっとアレドリア王国の後ろをついてきて、脳死でやってきても上手い事やれていたから良かったけれど」
脳死でやってきても上手い事やれていた
なかなか凄い表現である。
アルバート王子もルーシェも、黙り込んでリン王太子妃の話を聞いている。
きっと彼女はすごく頭が良くて、やること為す事、今まで成功を積み上げてきたのだろう。だが、この口の悪さというか、表現の救いの無さが、間違いなく今まで、周囲の者達をかなり困惑させてきたのだろう。彼女の義父にあたるハルヴェラ国王が嫌な顔をするのもなんとなしに理解できた。
「しょうがないから、私が個人的にいろいろな対策を考えているのが現状ね。これで回答になったかしら」
「うん。分かった。リン殿下の国よりもアレドリア王国の方が多分先にやられるから、アレドリア王国の魔術師達が頑張るということだね」
その救いのない回答に、アルバート王子は小さなルーシェの口を塞いでいる。それでモゴモゴと言っているルーシェ。
「そもそも天下の魔法大国アレドリアがやられるって相当大変なことなのよね。そしてその時には多分」
リン王太子妃は更に救いがない言い方をしていた。
「人類存亡の危機に等しいと思うわ」
「うちの国は三か国の中で一番遠い場所にあって、そのせいかまだ“星弾”の攻撃は一度も受けたことがないのよね。うちの国が対サトー同盟に加わった理由を知っている?」
アルバート王子は頷いたが、ルーシェはプルプルと頭を振った。
「知らない!!」
「アレドリア王国とハルヴェラ王国は、その昔から、双子国、兄弟国とも言われていて、アレドリア王国の王家とハルヴェラ王国の王家は極めて親しい姻戚関係にあるの。それもずーっと昔から。同盟にアレドリア王国が加盟することになった時は、ハルヴェラ王国も一緒にという話になったのよ」
「え、それだけが理由なの!?」
「そうよ。それだけが理由なの」
そのことにちょっとルーシェはびっくりした。仲良しだから同盟も一緒。
戦う時も一緒だし、……ある意味、沈む時も一緒なのか!!
「…………まぁ、今までそれでうまいことやってきたし、アレドリア王国はほら、知っての通り、大陸随一の学術都市を抱えていて、魔法使いもめちゃくちゃたくさんいるでしょ。大陸においては知の先駆者的な国なのよね。対してハルヴェラ王国は穏やかな小さな国で、特筆すべき産業もないし」
「そんなことはありません!! リン王太子妃殿下が王太子妃になられてから、随分と開明的なことが行われるようになっているではありませんか」
今まで黙ってそばに控えていた女騎士ガヴリエラが、我慢できないように口を開く。それに、女官メリッサも頷いている。
「そうです。民のために学校も開き、目安箱なるものを置き、新しい作物を植え、観光産業も起こし」
そうメリッサも言葉を続ける。
どうやら王宮の者達は、随分とリン王太子妃贔屓のようだ。口々に王太子妃の今までの業績を口にする。
それに、リン王太子妃はヒラヒラと手を振った。
「そういうのはいいから。まぁ、まとめると、うちの国はお兄ちゃん国のアレドリア王国の言う通りにやることが多くて同盟に入りました。でも小さな国でサトー王国からは三か国の中で一番遠いのでまだ攻撃を受けていないということ」
「なるほど、分かりやすいね」
アルバート王子の膝の上で、小さなルーシェが頷いている。
随分と失礼な解説だが、すんなりと納得しているルーシェに、何故かガヴリエラとメリッサはジロリと睨むように見つめてきた。苦情を申し立てたいらしいが、王太子妃の言うことなので睨むしかない。そんな簡単に納得するなというところだろう。
「うちの国を攻めるよりも、ルート的にはアレドリア王国の方がサトー王国に先に攻められるはずだし。アレドリア王国も、うちの国で何かあれば魔術師達を派遣するという話になっているのよね」
アレドリア王国にはたくさん魔術師がいるから、万が一の際には魔術師を派遣して防御魔法を多重にかける方法で同じようにハルヴェラ王国も守ろうというのだろう。
「でも、アレドリア王国が先にやられたら、次はうちなんだから、その時には魔術師を派遣するもへったくれもないと思わない? 先にやられているアレドリア王国から派遣できるわけないじゃない」
その言葉に、女官メリッサが辺りを見回し「妃殿下、滅多な事を仰ってはなりません」と言った。
リン王太子妃殿下のざっくばらんな意見に、室内の護衛騎士達も女官達もなんとなしに顔色が悪い。
「いや、本当のことでしょ。そのことを誰も指摘しないことがおかしいと思わないと。私は陛下に申し上げたこともあったけれど、陛下は嫌ーな顔をしてそのままだったわ。まぁ、天下のアレドリア王国がやられるはずがないというお考えなのでしょうけど。うちの国は今までずっとアレドリア王国の後ろをついてきて、脳死でやってきても上手い事やれていたから良かったけれど」
脳死でやってきても上手い事やれていた
なかなか凄い表現である。
アルバート王子もルーシェも、黙り込んでリン王太子妃の話を聞いている。
きっと彼女はすごく頭が良くて、やること為す事、今まで成功を積み上げてきたのだろう。だが、この口の悪さというか、表現の救いの無さが、間違いなく今まで、周囲の者達をかなり困惑させてきたのだろう。彼女の義父にあたるハルヴェラ国王が嫌な顔をするのもなんとなしに理解できた。
「しょうがないから、私が個人的にいろいろな対策を考えているのが現状ね。これで回答になったかしら」
「うん。分かった。リン殿下の国よりもアレドリア王国の方が多分先にやられるから、アレドリア王国の魔術師達が頑張るということだね」
その救いのない回答に、アルバート王子は小さなルーシェの口を塞いでいる。それでモゴモゴと言っているルーシェ。
「そもそも天下の魔法大国アレドリアがやられるって相当大変なことなのよね。そしてその時には多分」
リン王太子妃は更に救いがない言い方をしていた。
「人類存亡の危機に等しいと思うわ」
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2023/04/06 後日談追加
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