283 / 711
第十四章 招かれざる客人
第二十一話 下僕(上)
しおりを挟む
ルティ魔術師の言葉に息を飲んだのは、三橋友親だけでなく、隣に座っていたカルフィーやケイオスも一緒だった。カルフィーは青い顔をしており、ケイオスは顔を強張らせていた。
「俺を、元の世界へ戻せるのか?」
友親はそう言って、もう一度ルティ魔術師に尋ねると、ルティ魔術師は頷いた。
「はい。私は“召喚”魔法の研究を続けてきた魔術師です。実際、竜騎兵団も“召喚”して見せたでしょう。当然、逆も出来ます。ただ、次元の壁を越えるためには膨大な魔力が必要です。けれど貴方の持つ“魔素”を使えば、それは可能でしょう」
そうだった。
あの時、ルティ魔術師から『私が別の次元に留まっている対象物を、“召喚”します』という説明を聞いた時、思いついてしかるべきことだった。“召喚”できるなら、逆もできる。
この世界から、別の世界へ“転移”させることもできるはずだ。
三橋友親は、ぎゅっと目を瞑り、拳を握り締めている。
やがて、彼は目を開き、ぽつりと言った。
「……………………いや、それはいい。もう元の世界には戻れないから」
「戻して差し上げると言っているのですよ。戻れないことはないんです」
「戻れないんだ」
どこか疲れたような友親のその声に、ルティ魔術師は理解出来ない様子だった。
彼は続けて、言った。
「…………では、アレドリア魔術師ギルドに協力して頂けないのですか」
「協力はしない」
その言葉に、ケイオスもカルフィーも見るからに安堵した様子である。ルティ魔術師は必死に続けた。
「どうしてでしょうか。貴方にとって、悪い話ではない。元の世界に戻れる。サトー王国のサトーも倒せるのですよ」
「サトーは倒したい。でもお前は、信用ならない」
友親の言葉に、カルフィーは頷く。
「そうだ。こんな風に閉じ込めて、信用できるか!!」
「…………なら、貴方が協力して下さらないなら、あの紫竜に協力してもらうしかありません」
その言葉に、友親はハッとしたように顔を上げた。
「竜騎兵団の竜ですから、正式に協力要請をかけましょう。アレドリア国王、アレドリア魔術師ギルドの連名で、文書を出せば、断ることは難しいでしょう。それにあの竜はおかしいのですよ。体内の魔力を使わず、魔法が使えている。それはまるで」
ルティ魔術師の言葉に友親は愕然とする。
「まるで空気中の“魔素”をあの竜も使っているように思えます」
あれほど知られるなと言ったのに。
一番知られちゃいけない相手に、あいつは。
あいつは。
友親は立ち上がると、足を引きずり歩き、そのままルティ魔術師のそばに近寄る。
突然の彼の行動に、カルフィーもケイオスもすぐに反応できなかった。
それはルティ魔術師も一緒だった。
三橋友親。
足が不自由な小柄な男。常に護衛をそばから離さない、非力な男。
その事実に油断していたのだろう。
友親が身をかがめ、椅子に座るルティ魔術師の首筋に牙を突き立てるのを、カルフィーもケイオスもただ呆然と見守るしかなかった。
「俺を、元の世界へ戻せるのか?」
友親はそう言って、もう一度ルティ魔術師に尋ねると、ルティ魔術師は頷いた。
「はい。私は“召喚”魔法の研究を続けてきた魔術師です。実際、竜騎兵団も“召喚”して見せたでしょう。当然、逆も出来ます。ただ、次元の壁を越えるためには膨大な魔力が必要です。けれど貴方の持つ“魔素”を使えば、それは可能でしょう」
そうだった。
あの時、ルティ魔術師から『私が別の次元に留まっている対象物を、“召喚”します』という説明を聞いた時、思いついてしかるべきことだった。“召喚”できるなら、逆もできる。
この世界から、別の世界へ“転移”させることもできるはずだ。
三橋友親は、ぎゅっと目を瞑り、拳を握り締めている。
やがて、彼は目を開き、ぽつりと言った。
「……………………いや、それはいい。もう元の世界には戻れないから」
「戻して差し上げると言っているのですよ。戻れないことはないんです」
「戻れないんだ」
どこか疲れたような友親のその声に、ルティ魔術師は理解出来ない様子だった。
彼は続けて、言った。
「…………では、アレドリア魔術師ギルドに協力して頂けないのですか」
「協力はしない」
その言葉に、ケイオスもカルフィーも見るからに安堵した様子である。ルティ魔術師は必死に続けた。
「どうしてでしょうか。貴方にとって、悪い話ではない。元の世界に戻れる。サトー王国のサトーも倒せるのですよ」
「サトーは倒したい。でもお前は、信用ならない」
友親の言葉に、カルフィーは頷く。
「そうだ。こんな風に閉じ込めて、信用できるか!!」
「…………なら、貴方が協力して下さらないなら、あの紫竜に協力してもらうしかありません」
その言葉に、友親はハッとしたように顔を上げた。
「竜騎兵団の竜ですから、正式に協力要請をかけましょう。アレドリア国王、アレドリア魔術師ギルドの連名で、文書を出せば、断ることは難しいでしょう。それにあの竜はおかしいのですよ。体内の魔力を使わず、魔法が使えている。それはまるで」
ルティ魔術師の言葉に友親は愕然とする。
「まるで空気中の“魔素”をあの竜も使っているように思えます」
あれほど知られるなと言ったのに。
一番知られちゃいけない相手に、あいつは。
あいつは。
友親は立ち上がると、足を引きずり歩き、そのままルティ魔術師のそばに近寄る。
突然の彼の行動に、カルフィーもケイオスもすぐに反応できなかった。
それはルティ魔術師も一緒だった。
三橋友親。
足が不自由な小柄な男。常に護衛をそばから離さない、非力な男。
その事実に油断していたのだろう。
友親が身をかがめ、椅子に座るルティ魔術師の首筋に牙を突き立てるのを、カルフィーもケイオスもただ呆然と見守るしかなかった。
43
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
腐男子♥異世界転生
よしの と こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。
目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。
トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、カクヨムさん、Caitaさんでも掲載しています。
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした
液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。
【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。
前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。
けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……
やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。
第三章より成長後の🔞展開があります。
※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。
※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる