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第十六章 心地良い場所
第二十三話 王国の行方
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今日もまた、リヨンネは王宮の外れにある湖のそばの小さな祠に幼いイシターを連れて来ている。
明るい金髪に鳶色の瞳の、可愛らしい顔立ちの少年である。イシターは次期王太子に指名されて以来、彼の周りは護衛の騎士達でしっかりと固められている。
イシターだけが呪いを受けていない理由は何故だろうかと、リヨンネは考えたことがあった。
イシターは、アンリ王子の養子に入ったとしても、その呪いを受けることはなかった。リヨンネにはそのことが不思議だった。リチャード王子の養子に入った子供は突然、理由もなく命を落としていたからだ。夜、寝台で横になり、朝には起き上がることなく冷たくなっていたという。
もし、ラウデシア王家の断絶を目指すなら、例外なくイシターの命も奪う必要がある。でも、イシターだけがそれから逃れている。
不思議がるリヨンネに、マリアンヌは静かにこう言った。
「ザナルカンド王国の人達が、イシターを守ってくれているのだと思います」
彼女は、自分がザナルカンド王国の城を離れる際の光景を決して忘れることはなかった。
マリアンヌを迎えに来た兄アルバートと紫竜ルーシェ。その背に乗せられる時、亡国の騎士や女官達は口々に言った。
「道中、お気をつけて」
「殿下、妃殿下をお頼みします」
「御身を大切になさって下さい」
彼らは皆、一様にそう言って、どこか儚げな笑顔を見せて別れの挨拶をした。
彼女の夫であったニコラウス王子。義妹のリュドミラ王女。
二人もまた「どうか、貴女は幸せになって。マリアンヌ」と、マリアンヌの背を押して送り出した。
その時のマリアンヌの身体に宿っていたのは、間違いなく、今は無きザナルカンド王国の希望だった。
だから、マリアンヌの息子イシターは、失われてしまったザナルカンド王国の多くの人々に守られている。
マリアンヌの言葉を聞いて以来、リヨンネはイシターのそばには彼を守護する魂のような存在がたくさんいるように感じていた。
そして
イシター王太子は、リチャード国王亡き後、国王として即位する。
彼は、ラウデシア王国、旧ザナルカンド王国、旧バーズワース王国といった広大な版図を支配する王国の王となった。そんな王を、北方地方にある勇猛果敢な竜騎兵団はよく支え、ラウデシア王国は過去最高の繁栄を見せたのだった。
ラウデシア王国の竜騎兵団には、王国の七番目の王子がおり、王子のそばには滅多に生まれることのない紫色の竜がいた。それは、大きな黒い瞳に優美な長い首を持つ、一際美しい竜だった。
“勇者”の称号を持つその王子が紫色の竜に乗って戦場に現れると、どんなにか不利な戦いの場であろうとも、必ず戦況はひっくり返され、ラウデシア王国は勝利したという。
王子と紫色の竜は愛し合い
一人と一頭は どんな時でも
常に共にいたという。
その後、ラウデシア王国は幾度も危機を迎えたが、今も大陸に王国の名は残り、王家は連綿と続いている。それは多くの竜達の護る国であるからと、昔から言われている。
明るい金髪に鳶色の瞳の、可愛らしい顔立ちの少年である。イシターは次期王太子に指名されて以来、彼の周りは護衛の騎士達でしっかりと固められている。
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もし、ラウデシア王家の断絶を目指すなら、例外なくイシターの命も奪う必要がある。でも、イシターだけがそれから逃れている。
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彼女は、自分がザナルカンド王国の城を離れる際の光景を決して忘れることはなかった。
マリアンヌを迎えに来た兄アルバートと紫竜ルーシェ。その背に乗せられる時、亡国の騎士や女官達は口々に言った。
「道中、お気をつけて」
「殿下、妃殿下をお頼みします」
「御身を大切になさって下さい」
彼らは皆、一様にそう言って、どこか儚げな笑顔を見せて別れの挨拶をした。
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その時のマリアンヌの身体に宿っていたのは、間違いなく、今は無きザナルカンド王国の希望だった。
だから、マリアンヌの息子イシターは、失われてしまったザナルカンド王国の多くの人々に守られている。
マリアンヌの言葉を聞いて以来、リヨンネはイシターのそばには彼を守護する魂のような存在がたくさんいるように感じていた。
そして
イシター王太子は、リチャード国王亡き後、国王として即位する。
彼は、ラウデシア王国、旧ザナルカンド王国、旧バーズワース王国といった広大な版図を支配する王国の王となった。そんな王を、北方地方にある勇猛果敢な竜騎兵団はよく支え、ラウデシア王国は過去最高の繁栄を見せたのだった。
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常に共にいたという。
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