転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
403 / 711
外伝 ある護衛騎士の災難  第一章

第六話 視察に同行する

しおりを挟む
 アンリ王子が予定されていた南方地域の視察へ行くことになった。
 雪深い北方地域には絶対に同行したくなかったが、南方地域ならマシである。
 呪いを受けて早二週間。
 まだアンリ王子の呪いは解けていない。
 当然、私も南方地域の視察へ同行することになった。


 南方地域は小麦の産地である。非常に豊かな土地であり、そこには王家の直轄地も存在する。
 当初、アンリ王子は伴侶であるアビゲイル妃を同行する予定であったが、仕立てられた馬車の中、王子の対面に座っていたのはこの私、ハヴリエルであった。

 相変わらず、「真実の愛を見つけた」などたわけたことを言い続けているアンリ王子は、南方地域への同行者に私を選択した。大抵のことを許してきたアビゲイル妃の白い額に、今回の件だけは青筋が立って見えたのは私だけではないだろう。
 急遽、アビゲイル妃は体調不良という理由で残念ながら同行できなくなり、すっかり愛人めいた立場になっている私は(そんな立場に置かれているが、私と王子は未だ清い関係である)、諦め顔で王子の乗る馬車に同席することになった。
 なお、馬車の中は二人きりではない。
 護衛騎士も二人乗っている。
 別に、馬車の中は王子と私の二人きりでも構わないらしいが(それというのも馬車の外の四方に馬に跨る護衛騎士達も警備のため存在していたからだ)、私が、護衛騎士にも馬車に同席して欲しいと頼んだのだ。

 旅の道中、延々とされるであろう馬車の中での王子の熱い愛の囁きに、耐えられる気がしなかったからだ。
 
 この王子は時間さえあれば、私を口説こうとしていた。
 呪いとは本当に恐ろしいものである。
 もう二週間経っているのに、王子は私に「ハヴリエル卿、そなたはなんて素敵なのだ」「毎朝そなたの顔を見て目覚めることが出来て、私は幸福だ」「そのように照れるでない。卿は本当に愛い奴だ」など、心底背筋が寒くなるような台詞を言ってくれる。警護の護衛騎士達もドン引きである。
 それを言われ続ける私の身を案じて欲しい。
 この二週間、毎日毎日愛を囁かれる私は、「アーーーーー」と言って両耳を押さえて王子の声を聞かないようにしていたこともあったが(その私の態度にも警護の護衛騎士達はドン引きしていた)、最近は諦めてしまった。
 
「そのようなことばかり言っておられると、呪いが解けた時には後悔なさりますよ」

 そう忠告しても王子はまったく聞かないのだ。
 ただただ、情熱的に愛を囁く。その呆れるほどの情熱の強さに、私は疲労困憊していた。
 まったく、私ではなくアビゲイル妃へ恋する呪いであったのなら、良かったのに。
 その無駄な情熱をさっさとどこかへやって欲しかった。


 馬車の中で、アンリ王子はニコニコとしていた。
 彼は私を前にすると、いつもそうした笑顔を見せてくれる。
 以前の、真面目で穏やかで優しい、誰にも好かれるようなどこか八方美人なアンリ王子とは違い、今の彼は私だけにそうした甘い態度を見せ、純粋に真っ直ぐに好意をぶつけてくる。

「ハヴリエル卿。卿は南方地域には行ったことはあるか?」

「ございません」

「そうか。南方地域は広大な平野部が続いており、王国の“穀物庫”と呼ばれる地域だ。小麦をはじめとした穀類がたくさんとれる。平野部には大河が流れ、それが畑を潤している」

 そう滔々と私に南方地域のことを説明してくれる。
 元から優秀で頭の良い王子なのだ。

「昨今は西方諸国での戦の影響もあり、難民が少しずつ南方地域にも流れ込んでおり、その対処が大きな問題となっている」

 それもあって、アンリ王子の視察が組まれたのだ。
 戦とは無縁のこの豊かな王国に、難民が流れ込むのは当然のことだった。
 私が黙ってアンリ王子の話を傾聴していると、王子はとても嬉しそうだった。

「そなたが私の話をきちんと聞いてくれることが嬉しい」

「殿下の話はとても分かりやすいです」

 実際、そうだった。
 現在の南方地域が置かれている状況について、問題点とその解決策も、王子なりにまとめて話してくれる。

「アビゲイルは、難しい話は聞きたくないという」

「さようでございますか」

 アンリ王子はそれだけ言って、その後は黙りこんでいた。
 もしかして、アンリ王子はアビゲイル妃に対してその点、不満を持っているのだろうか。
 それなら、彼女にもっと政務に興味を持って欲しいと伝えればいいのではないかと思ったが、呪いで好意を寄せられているだけの護衛騎士である私に、王子の妃を批判したり、訳知り顔でアドバイスなどする資格はない。
 だから私も黙り込むしかなかった。

「私の話や考えを、また機会があれば聞いておくれ、ハヴリエル」

「はい」

 それがアンリ王子のお役に立つというのなら、自分はそうするつもりだった。
 アンリ王子は私が頷いて同意すると、彼は嬉しそうに笑みを浮かべ、私の手を取り、その甲にそっと口づけた。

「そなたはいいな」

 何故そこで口づける。

 私はすぐさま手を取り上げ、顔を背けて馬車の窓から外を眺めた。
 馬車は軽快に道を進んでいっていた。


 私が王子の小難しい話も嫌がることなく聞いてくれることを知った王子は、それからも機会さえあれば、私にアレコレと政治にかかわる小難しい話をするようになった。自分の意見を聞いてもらい、それについて時に私の意見を求める。
 王子の話は分かりやすく面白かったので、私は彼の話を聞くことは嫌いではなかった。
 だが、話が終わる度に、彼は私の手を取って甲に口づけしようとするのは止めて欲しかった。
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした

液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。 【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】  アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。  前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。  けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……  やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。  第三章より成長後の🔞展開があります。 ※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。 ※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

処理中です...