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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第四章 黄金竜の雛は愛しい番のためならば、全てを捧げる
第十七話 彼を守るもの
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その後、ウェイズリーは再び竜の姿になってユーリスを背に乗せ、何も言われずとも、シルヴェスター王子がいる天幕のある場所まで飛んでいってくれた。
空の上から、夜目にも白い天幕の並ぶ、シルヴェスターがおそらく休んでいるであろう場所を見下ろす。風がユーリスの黒髪を揺らした。
シルヴェスターがあそこにいると知っている。
だけど、降りて会いに行くことは出来ない。
一緒にいる黄金竜ウェイズリーのことが、皆にバレてしまうから。
「キュルルルキュ、キュキュ(夜も遅くなる。そろそろ帰ろう)」
ウェイズリーに促され、ユーリスは頷いた。
黄金色に輝く竜の背に乗って、ユーリスはレイヴン城へ戻った。
そして小さな雛の竜の姿に変わったウェイズリーを枕元に置いたまま、ユーリスもゆっくりと寝台の上に横になった。
『お前の望む全てを、私は叶えてやる』
そう黄金竜ウェイズリーは言った。
それも、彼は代償は求めないと言う。
『私は君に何も与えないのだよ』
そう言ったユーリスに、それでも、ウェイズリーはいいと言うのだ。
ユーリスはため息をつく。
小さな黄金竜の雛は、ユーリスを愛して、そして番のユーリスのためなら何でもすると言うのだ。何もかも全て捧げると。
でもユーリスは彼を愛することはない。
彼には、何も与えることはない。
無償の愛を捧げるウェイズリーに、ユーリスは何をどうすればいいのか分からなくなっていた。そもそもシルヴェスターを伴侶とする、男のユーリスを選んだことが、ウェイズリーの間違いである。そのことはウェイズリーに伝えたことがあった。彼の卵を孕むことのできる雌の竜を選ぶべきだと。ウェイズリーは希少な黄金竜であるからして、彼は自由に相手の雌の竜を選ぶことが出来るだろう。
でも、ウェイズリーはユーリスが良いと言うのだ。
不毛だ。
ユーリスは枕元で丸くなって眠る小さな黄金竜の雛に目をやった。
ウェイズリーはユーリスの視線を感じたのか、その黄金の双眸を薄く開く。
「キュキュルルルル(眠れないのか)」
そう問われたので、ユーリスは素直に頷いた。
「キュキュキュキュルルルルルルル、キュルキュキュ(明日も片付けがあって忙しいのだろう。早く寝た方がいい)」
「ああ」
ウェイズリーはユーリスをじっと見つめて言った。
「キュルキュルキュ(私の想いが重いのか)」
そんなことを言われたので、ユーリスは青い目を開いてしまった。
ハッキリ言えばそうである。
だが、そんなことを本人には言えないだろう。
「キュルキュルキュルルルル、キュキュキュキュルルル。キュキュルルル(お前は私を便利に使えばいい。私は代償を求めない。便利な存在だぞ。何でも出来るのだからな)」
以前の彼は、自分を愛するようにせがんだ。
でも今の彼は、それを求めない。
ユーリスがシルヴェスターを愛し、その愛し合う姿を見ているから。
求めても応えてくれないことを、知っているから。
そんなことを続けても、それはウェイズリーが辛いだけだ。
決して、手に入れることの出来ない相手のそばに居続けることは。
そこでユーリスは、小さな黄金竜の雛が、少し前に自分から離れていたことを思い出した。
突然、姿を見せなくなったウェイズリー。
あれは、シルヴェスターと再会したすぐ後のことだった。
ユーリスは自分の残酷なほどの鈍感さにようやく気が付いた。
彼は眉を寄せ、ため息をつく。
それを知ったからといって、自分に何が出来るだろうか。
何も出来ない。
「キュルキュル、キュキュキュルキュルキュル、キュルキュキュ(私はこれからもお前のそばにいて、お前の身を守り、お前の望みを叶えよう)」
ウェイズリーは最後にこう言った。
「キュキュルルルルル(だからお前のそばに置いてくれ)」
翌朝、当然のことながら、街のそばにある城が突然修復された姿を見せたことに、いや、以前よりも遥かに瀟洒で美しい城に生まれ変わっていることに、クランの者達も度肝を抜かれていた。
副クラン長フィアは「え、何、レイヴン城に引っ越したばかりだけど、あちらの城の方が環境が良いよね。また引っ越せということなのかな」と顔を引きつらせてブツブツと言っていた。
とりあえず、街のそばに現れた城の中を探索して、何も問題がなければ再度そこへ引っ越すことを検討しようということになった。クラン長ダンカンもシルヴェスターと共に戦地へ向かっているのだ。最終的な判断はダンカンにしてもらわなければならないだろう。
そしてフィアは、経理の書類を箱から取り出して整理しているユーリスを横目に見て思っていた。
時間はかかったが、遥か北方のラウデシア王国で起きたことの詳細が少しずつ、情報として届いている。
先日、ラウデシア王国の王都が、“星弾”で襲われたがその被害は無かった。
それを防いだのは、ラウデシア王国を守護する黄金竜の“金色の芽”によるものだという。
“金色の芽”
以前、イスフェラ皇国の街で、渦から何かが湧き出そうとするのを止めたのもユーリスのそばから突然現れたという“金色の芽”だった。
フィアはようやくわかったのだ。
ユーリス=バンクールの身は、黄金竜によって守られているということが。
空の上から、夜目にも白い天幕の並ぶ、シルヴェスターがおそらく休んでいるであろう場所を見下ろす。風がユーリスの黒髪を揺らした。
シルヴェスターがあそこにいると知っている。
だけど、降りて会いに行くことは出来ない。
一緒にいる黄金竜ウェイズリーのことが、皆にバレてしまうから。
「キュルルルキュ、キュキュ(夜も遅くなる。そろそろ帰ろう)」
ウェイズリーに促され、ユーリスは頷いた。
黄金色に輝く竜の背に乗って、ユーリスはレイヴン城へ戻った。
そして小さな雛の竜の姿に変わったウェイズリーを枕元に置いたまま、ユーリスもゆっくりと寝台の上に横になった。
『お前の望む全てを、私は叶えてやる』
そう黄金竜ウェイズリーは言った。
それも、彼は代償は求めないと言う。
『私は君に何も与えないのだよ』
そう言ったユーリスに、それでも、ウェイズリーはいいと言うのだ。
ユーリスはため息をつく。
小さな黄金竜の雛は、ユーリスを愛して、そして番のユーリスのためなら何でもすると言うのだ。何もかも全て捧げると。
でもユーリスは彼を愛することはない。
彼には、何も与えることはない。
無償の愛を捧げるウェイズリーに、ユーリスは何をどうすればいいのか分からなくなっていた。そもそもシルヴェスターを伴侶とする、男のユーリスを選んだことが、ウェイズリーの間違いである。そのことはウェイズリーに伝えたことがあった。彼の卵を孕むことのできる雌の竜を選ぶべきだと。ウェイズリーは希少な黄金竜であるからして、彼は自由に相手の雌の竜を選ぶことが出来るだろう。
でも、ウェイズリーはユーリスが良いと言うのだ。
不毛だ。
ユーリスは枕元で丸くなって眠る小さな黄金竜の雛に目をやった。
ウェイズリーはユーリスの視線を感じたのか、その黄金の双眸を薄く開く。
「キュキュルルルル(眠れないのか)」
そう問われたので、ユーリスは素直に頷いた。
「キュキュキュキュルルルルルルル、キュルキュキュ(明日も片付けがあって忙しいのだろう。早く寝た方がいい)」
「ああ」
ウェイズリーはユーリスをじっと見つめて言った。
「キュルキュルキュ(私の想いが重いのか)」
そんなことを言われたので、ユーリスは青い目を開いてしまった。
ハッキリ言えばそうである。
だが、そんなことを本人には言えないだろう。
「キュルキュルキュルルルル、キュキュキュキュルルル。キュキュルルル(お前は私を便利に使えばいい。私は代償を求めない。便利な存在だぞ。何でも出来るのだからな)」
以前の彼は、自分を愛するようにせがんだ。
でも今の彼は、それを求めない。
ユーリスがシルヴェスターを愛し、その愛し合う姿を見ているから。
求めても応えてくれないことを、知っているから。
そんなことを続けても、それはウェイズリーが辛いだけだ。
決して、手に入れることの出来ない相手のそばに居続けることは。
そこでユーリスは、小さな黄金竜の雛が、少し前に自分から離れていたことを思い出した。
突然、姿を見せなくなったウェイズリー。
あれは、シルヴェスターと再会したすぐ後のことだった。
ユーリスは自分の残酷なほどの鈍感さにようやく気が付いた。
彼は眉を寄せ、ため息をつく。
それを知ったからといって、自分に何が出来るだろうか。
何も出来ない。
「キュルキュル、キュキュキュルキュルキュル、キュルキュキュ(私はこれからもお前のそばにいて、お前の身を守り、お前の望みを叶えよう)」
ウェイズリーは最後にこう言った。
「キュキュルルルルル(だからお前のそばに置いてくれ)」
翌朝、当然のことながら、街のそばにある城が突然修復された姿を見せたことに、いや、以前よりも遥かに瀟洒で美しい城に生まれ変わっていることに、クランの者達も度肝を抜かれていた。
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