転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

文字の大きさ
513 / 711
外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第四章 黄金竜の雛は愛しい番のためならば、全てを捧げる

第十六話 城の復活

しおりを挟む
 シルヴェスターが戦地に向かって旅立っていった。
 ユーリスは城の窓辺から、彼の姿が消えていくまで見守る。
 また二週間、シルヴェスターは帰ってこない。
 クランの仲間達と共に戦地へ向かう彼の身が心配だったが、同じく城の留守を預かる副クラン長フィアは「シルヴェスターは簡単に死ぬようなタマではない。心配するだけ無駄です」とも言っていた。
 相当、シルヴェスターは優秀な兵士のようだった。

 そしてシルヴェスターが出立したその夜から、城の窓辺にひょっこりと小さな黄金竜の雛が顔を覗かせ、「キュイキュイキューキュー」と可愛らしく鳴いていた。
 ユーリスは黄金竜の雛ウェイズリーを部屋の中に迎え入れた。

「また遊びに来てくれたのか、ウェイズリー」

「キュキュウウ」

 甘えて鳴くウェイズリーをユーリスは胸に抱いて、頭を優しく撫でる。

「シルヴェスターが戦場に行ってしまったんだ」

「…………キュ」

 チロリとウェイズリーはユーリスの顔を見上げる。
 内心ウェイズリーは(そのままシルヴェスターが戦場で戦死してしまえばいいのに)と物騒な事を思っていたが、そんなことはおくびにも出さず「キュルルキューキュウキュウ(それは心配だな、ユーリス)」と言って尤もらしく頷いていた。

 ユーリスはウェイズリーの頭を撫でている中、ふいに思いついたように言った。

「ウェイズリー、私を乗せて空へ連れていってくれないか」

 竜であるウェイズリーの背に、また前回のように乗せてもらって空を飛べば、戦地へ向かうシルヴェスターの姿を捉えることが出来るかも知れない。今頃彼も、道程の途中でクランの者達と幕を張って休んでいることだろう。

「キュキュ」

「頼むよ、ウェイズリー」

 そう番にねだられては、ウェイズリーも叶えないわけにはいかない。
 ウェイズリーはベランダへ続く窓を開くと、またユーリスをその背に乗せられるくらいの成長した竜の姿に変わった。
 ユーリスは、光り輝く黄金色の鱗を持つ竜の体にそっと触れ、「君は綺麗な竜なのだな」と感心したように言っていた。その瞳さえも黄金を溶かしたかのように美しい竜である。
 それにウェイズリーは得意気に頭を上げていた。
 それから頭を下げ、ユーリスが背に跨るのを待ち、彼が背に乗った後にはふわりと空へと舞い上がったのだった。


 空高く旋回するウェイズリーの背に跨ったユーリスは、興奮していた。

「凄いな、ウェイズリー」

 現在、クランが置かれている拠点は、旧カリン王国の西に位置するレイヴン城である。大きいが古い城であった。森の中にある城で、フィアは「街から離れているから不便だ」と零していた。街の近くにあった城は、サトー王国の“星弾”を受けて崩壊している。
 見張りの者に見つからないように、ユーリスは空高くウェイズリーに飛ぶように頼んでいた。それでグンと灰色の雲を抜けて、黄金竜は飛んで行く。
 あまり強い風が当たらないように、ウェイズリーは気を遣い、どこかゆったりと空を飛んでいた。その気遣いが嬉しく、ウェイズリーの首を優しくユーリスは撫でた。

「街の方を飛んでもらえるか」

 シルヴェスターの様子を見に行く前に、“星弾”を受けて崩壊したという城の様子も見てみたかった。
 眼下の城壁に囲まれた街が、まるでミニチュアの玩具のように見える。そして街の高台に、黒々とした大きな穴が開いていた。

「……あれが“星弾”で壊された跡か」

 あれほど大きな穴が開いているのだ。
 “星弾”がこの場所に墜ちた時にはきっと、大勢の人間が死んでしまっただろう。
 ユーリスの眉がしかめられる。

 ウェイズリーは大地を抉るように大きな穴の開いている場所を、空高くからじっと見下ろしていた。

「キュルキュルキュキュキュキュウウ(ユーリス、街の近くにも城があった方がいいだろう)」

「そうだね。でも、壊れてしまったから」

 実際、街のそばに後から建てた城の方が利便性が高かったため、元領主の伯爵は、大きくて古いレイヴン城を使わなくなり、“星弾”で壊されてしまった街近くの城を使用していたのだ。

「キュルキュルキューキューキュルルルルルルル(大丈夫だ、ユーリス。直してやろう)」

 その言葉の意味が分からず、ユーリスは黄金竜の輝く瞳を見つめた。

「キュッキュキューキュー!!」

 そう甲高い声で鳴くと、次の瞬間、まるで巻き戻したかのように、砕けた煉瓦や焼け焦げた煉瓦が形を取り戻し、次々とそれが飛んで積み上げられていく。溶けた鉄の門扉も立ち上がり、みるみる形を取り戻していく。

「…………………ウェイズリー」

 ユーリスの青い目は開かれていた。

 星の瞬く夜の空を煉瓦や石が何百、何千と飛んで、ひとりでに積み上げられていく。
 元の形に。すべて元のあった場所に。
 城壁が立ち上がる。回廊の大きな柱も、美しいタイルの床も、長い階段もひとりでに積み上げられていく。

 それは不思議な光景だった。

 その魔法が全て終わるのに、おそらく半刻も必要なかっただろう。
 ウェイズリーがユーリスを背に乗せて空を旋回した時、眼下には高い尖塔を備えた優美な城が出来上がっていた。
 街の方で、その異変に気が付いたのか、驚き叫ぶ声が遠く聞こえる。
 ウェイズリーは城の中庭にゆっくりと着陸した。

 ユーリスはウェイズリーの背から降り、信じられないように周囲を見回し、壁に手を触れさせ、中庭にある水の噴き出す美しい噴水に目をやった。
 花々が咲き乱れる庭園までもその城は備えているのだ。

 ユーリスは叫んだ。

「ウェイズリー、君は凄い!!」

 そしてユーリスが振り返った時、ウェイズリーは竜の姿から人の男の姿に変わっていた。豊かな金の髪を持つ若い男が、ユーリスを見つめ、そしてユーリスのそばに近づき、ユーリスの手を取って言った。

「お前の望む全てを、私は叶えてやる」
 



 そう言われたユーリスは動きを止めた。その顔も少し強張っている。

「…………私は君の想いには応えられない」

「分かっている」

 ユーリスの手の甲に、ウェイズリーは口づけを落とす。
 ユーリスはそれを振り払い、少し後ずさり、ウェイズリーを見つめた。

「私は君のものにはならない」

「分かっている」

 人の姿のウェイズリーもまた美しい男だった。燦然と輝く豊かな黄金の髪を持つ男は、その黄金の瞳をどこか哀しそうに細めながらも、ユーリスを見つめ続けていた。

「分かっている。ユーリス」

 その言葉に、ユーリスは立ち尽くしていた。ウェイズリーは言った。

「それでも私は、お前の望みを叶えるだろう」

「私は君に何も与えないのだよ」

 美しい花の咲き乱れる中庭に立つ黄金の瞳を持つ男は、夜風に長い金の髪をなびかせながら、なおも切なげな表情を浮かべたまま言った。

「それでもいいのだ、ユーリス」
しおりを挟む
感想 276

あなたにおすすめの小説

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!

ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。 らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。 なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。 挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

処理中です...