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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第五章 その王子と竜に愛されたら大変です(上)
第二話 私の大切な竜です(下)
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「私の大切な竜です」
ユーリスのその台詞を聞いた黄金竜の雛ウェイズリーは有頂天になっていた。
(聞いたか、シルヴェスター。ユーリスは私の事を「私の大切な竜」だと言っていたのだぞ!!)
自分の中のシルヴェスターの存在に向けて、ウェイズリーは話しかける。
“同化”した後、肉体だけでなく、シルヴェスターとウェイズリーの魂もまた一つに溶け込んでいたが、その中には個別の自我が残っていた。ウェイズリーが鼻高々な様子でそう言うのに、シルヴェスターは言った。
「ユーリスは優しいからな。お前のことも大切に思っている」
「ああ、優しくて素晴らしい番だ」
シルヴェスターとウェイズリーは同時に頷いている。二人は共にユーリスを愛していた。
もし同化していなければ、ウェイズリーはシルヴェスターに対する嫉妬で身を焦がし続けていただろう(実際、ウェイズリーはシルヴェスターのことを殺したいほど憎いと思っていたこともあった)。今は同化して、一体となったが故に、互いをこれ以上憎悪し殺し合うような事態になることは回避できていた。そして一体化しているが故に、一人と一頭はユーリスを同時に愛することが出来ていた。シルヴェスターがユーリスを愛していることも、ウェイズリーがユーリスを愛していることも、一人と一頭は同化しているが故に、同じ身の上に起きる出来事として体験している。
そのことを未だにユーリスはよく理解できないようだった。
「共感状態にあるということなのかな」
寝物語のように、寝台の上でユーリスがシルヴェスターに尋ねると、シルヴェスターは「共感ではないと思う。共感というのは二つ以上の存在が共に感じる状態を言うのだろう。私とウェイズリーは二つには分かれていない。一つの存在だ」と答えた。
「…………よく分からない」
そのユーリスの唇にシルヴェスターは唇を重ね、舌を絡めるような濃厚な口づけをする。唾液をすするようなその口付けにユーリスの体の芯も熱くなってくる。吐息も熱く、ユーリスの青い目が潤み出す。
「この口づけは、私だけではなくウェイズリーも感じている」
そうシルヴェスターが言った時、ユーリスの頬がサッと赤く染まった。
「…………」
「お前を愛する時も常にウェイズリーも一緒だ。私と同化しているのだから」
ユーリスはわなわなと震え、赤く染まった顔のまま言った。
「ウェイズリーはまだ赤ん坊の竜です!! ヴィー。彼の目を覆ってください」
「アレは雄の竜だぞ。赤ん坊のふりをしているだけだ。いつもお前と交尾したいとうるさい」
「!!!!!!」
そのシルヴェスターの言葉に、愕然とするユーリス。
実際、出会ってしばらく経った頃、ウェイズリーはユーリスに甘えながら「早く交尾をしたい」「卵を生ませたい」と言っていた。ユーリスはその言葉を小さな竜の戯言だと考えていた。
「私がお前と愛し合うことも、ウェイズリーは一緒に経験している」
「ウェイズリーは赤ん坊です。そんなことはまだ早い!!」
あくまでそう言い張るユーリスに、シルヴェスターは「なら、ウェイズリーと今すぐこの身を替わろうか。ウェイズリーにも愛してもらえばいいだろう」と言ったので、なおもユーリスは狼狽するのだった。
「そんなこと、マズイです」
まだユーリスの脳裏にあるのは小さくて可愛い黄金竜の雛で、幼い子供の姿を取るウェイズリーの姿なのだろう。
「今すぐにとは言わない。ウェイズリーのこともちゃんと認めてやってくれ」
「ウェイズリーのことを私は大切に思っています」
ユーリスはキッパリと言った。
「私の大切な小さな竜です」
その言葉に、喜んでいいのか悲しんでいいのか、黄金竜ウェイズリーには分からなかった。
ユーリスが、自分のことをとても大切にしてくれていることは知っている。
小さな竜の姿で現れると、手を広げて歓迎して、飛んでくるウェイズリーをぎゅっと抱きしめてくれる。
番に可愛がられる多幸感で、ウェイズリーは目の前が桃色に染まるくらいであった。
大人のウェイズリーの姿で、いつかユーリスを愛し、ユーリスから愛されたかった。
でもそれが、それほど遠くない未来に実現するであろうことをウェイズリーは知っていた。だから今は、たとえ情欲の伴わない「小さくて可愛い竜扱い」されていても我慢できていた。
ユーリスのその台詞を聞いた黄金竜の雛ウェイズリーは有頂天になっていた。
(聞いたか、シルヴェスター。ユーリスは私の事を「私の大切な竜」だと言っていたのだぞ!!)
自分の中のシルヴェスターの存在に向けて、ウェイズリーは話しかける。
“同化”した後、肉体だけでなく、シルヴェスターとウェイズリーの魂もまた一つに溶け込んでいたが、その中には個別の自我が残っていた。ウェイズリーが鼻高々な様子でそう言うのに、シルヴェスターは言った。
「ユーリスは優しいからな。お前のことも大切に思っている」
「ああ、優しくて素晴らしい番だ」
シルヴェスターとウェイズリーは同時に頷いている。二人は共にユーリスを愛していた。
もし同化していなければ、ウェイズリーはシルヴェスターに対する嫉妬で身を焦がし続けていただろう(実際、ウェイズリーはシルヴェスターのことを殺したいほど憎いと思っていたこともあった)。今は同化して、一体となったが故に、互いをこれ以上憎悪し殺し合うような事態になることは回避できていた。そして一体化しているが故に、一人と一頭はユーリスを同時に愛することが出来ていた。シルヴェスターがユーリスを愛していることも、ウェイズリーがユーリスを愛していることも、一人と一頭は同化しているが故に、同じ身の上に起きる出来事として体験している。
そのことを未だにユーリスはよく理解できないようだった。
「共感状態にあるということなのかな」
寝物語のように、寝台の上でユーリスがシルヴェスターに尋ねると、シルヴェスターは「共感ではないと思う。共感というのは二つ以上の存在が共に感じる状態を言うのだろう。私とウェイズリーは二つには分かれていない。一つの存在だ」と答えた。
「…………よく分からない」
そのユーリスの唇にシルヴェスターは唇を重ね、舌を絡めるような濃厚な口づけをする。唾液をすするようなその口付けにユーリスの体の芯も熱くなってくる。吐息も熱く、ユーリスの青い目が潤み出す。
「この口づけは、私だけではなくウェイズリーも感じている」
そうシルヴェスターが言った時、ユーリスの頬がサッと赤く染まった。
「…………」
「お前を愛する時も常にウェイズリーも一緒だ。私と同化しているのだから」
ユーリスはわなわなと震え、赤く染まった顔のまま言った。
「ウェイズリーはまだ赤ん坊の竜です!! ヴィー。彼の目を覆ってください」
「アレは雄の竜だぞ。赤ん坊のふりをしているだけだ。いつもお前と交尾したいとうるさい」
「!!!!!!」
そのシルヴェスターの言葉に、愕然とするユーリス。
実際、出会ってしばらく経った頃、ウェイズリーはユーリスに甘えながら「早く交尾をしたい」「卵を生ませたい」と言っていた。ユーリスはその言葉を小さな竜の戯言だと考えていた。
「私がお前と愛し合うことも、ウェイズリーは一緒に経験している」
「ウェイズリーは赤ん坊です。そんなことはまだ早い!!」
あくまでそう言い張るユーリスに、シルヴェスターは「なら、ウェイズリーと今すぐこの身を替わろうか。ウェイズリーにも愛してもらえばいいだろう」と言ったので、なおもユーリスは狼狽するのだった。
「そんなこと、マズイです」
まだユーリスの脳裏にあるのは小さくて可愛い黄金竜の雛で、幼い子供の姿を取るウェイズリーの姿なのだろう。
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その言葉に、喜んでいいのか悲しんでいいのか、黄金竜ウェイズリーには分からなかった。
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小さな竜の姿で現れると、手を広げて歓迎して、飛んでくるウェイズリーをぎゅっと抱きしめてくれる。
番に可愛がられる多幸感で、ウェイズリーは目の前が桃色に染まるくらいであった。
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