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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 第五章 その王子と竜に愛されたら大変です(上)
第一話 私の大切な竜です(上)
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“竜の牙”のクラン長であるダンカンは、死にかけるほどの大怪我を負ったシルヴェスターの体調を気遣い、彼に長めの傷病休暇を与えた。だが、シルヴェスターは目を醒ましてからすこぶる元気であった。背中を貫かれるほどの大怪我を負ったはずなのに、平然と身を起こして立ち歩いている。シルヴェスターには恋人のユーリスがそばについて看病していたのだが、常ならばシルヴェスターは戦場にいて、べったりとユーリスと過ごす機会はそうない。だからこんな時であるのに、今は共にいられることが嬉しくてたまらないような様子であった。
この機会にこれ幸いと、ユーリスを寝台の中へ引き込んでいるという話すら流れてきている。
それを見て、休ませていることが馬鹿馬鹿しい、今、魔族からの総攻撃を受けて大変な中、シルヴェスターだけを休ませて恋人とイチャイチャさせておくこともないだろうと、副クラン長のフィアが顔をしかめて、シルヴェスターを戦場へ戻すように進言した。
確かにその通りだと、クラン長ダンカンも進言を受け入れる。
ダンカンは、シルヴェスターを戦場へ向かわせる前にシルヴェスターの部屋へ足を運び、彼が目を醒ましてから聞きたいと考えていた話を尋ねることにした。
つまり、シルヴェスターは死にかけていたのに、何故、死の淵から蘇ったのかと。当然の疑問をぶつけたのだった。
少年の時から、父親以上にシルヴェスターを愛し、教育してくれたダンカンに対して、シルヴェスターは今まで一度も隠し事をしたことがなかった。
だから今回の件についても、ダンカンにシルヴェスターは全て話した。
死にかけた自分を救うため、黄金竜の雛ウェイズリーと“同化”したことを。
話を全て聞き終えたクラン長ダンカンと、副クラン長フィアはしばらくの間黙り込んでいた。
やがてダンカンは、信じられないような口調で尋ねてくる。
「つまり、お前は竜と“同化”しているということなのか? 今もそうなのか?」
部屋の中には、クラン長ダンカンと副クラン長フィアが並んで椅子に座っている。そしてその前にシルヴェスターが腕を組んで立ち、シルヴェスターのすぐそばにユーリスも椅子に座っていた。
「そうだ」
ダンカンは信じられないような様子であったが、フィアはすんなりと納得していた。
「なるほど。その黄金竜の雛は、ユーリスについていたものでしょう?」
問いかけに「そうです」とユーリスは頷く。
ユーリスが襲われた時、ユーリスの身を守るように出現した“金色の芽”の話を聞いた時から、フィアはユーリスを守るため、そのそばに黄金竜がついていることを察していた。その黄金竜がユーリスの命令で、シルヴェスターの命を救ったということなのだろう。
「だが今も竜と“同化”しているだって? お前は人の姿のままじゃないか。竜が“同化”しているようには見えないぞ」
ダンカンの言葉に、シルヴェスターは「では見せましょうか」と言ったので、ダンカンとフィアは同時に頷いた。次の瞬間、シルヴェスターの姿がかき消え、目の前にはパタパタと小さな翼で空を飛ぶ可愛らしい金色の竜の雛がいた。
「キュッキュッキューキュー」
そう甘えるように鳴くと、ユーリスの胸元目掛けてまっしぐらに飛んで、ユーリスの胸にしがみついて小さな頭をぐりぐりと押し付けている。
「ウェイズリー」
ユーリスは嬉しそうに小さな竜の雛を抱きしめ返していた。
「……おい、シルヴェスターの姿が消えたぞ!!」
「これは面白いです。同化していると、互いの姿に一瞬で切り替えることが出来るのですね。一体どういう仕組みなのでしょうか。竜になった時には、シルヴェスターの着ていた服はどこへ行ったのでしょうか」
魔術師でもある副クラン長フィアは興味津々の様子で尋ねてくる。
ウェイズリーの頭を撫でながら、そのことはユーリスが説明してくれた。
「最初のうちは服も下に落ちていたのですが、今は姿を変えると同時に“無限収納”の中に放り込んでいるようです」
「“無限収納”持ちなのか!!」
言葉通り、無限に収納が出来る能力である。そうした能力を持つ者がいるという話を聞いたことがあったが、眉唾物だろうと思っていた。
ウェイズリーはユーリスの胸に張り付きながら、上の方へ上の方へずり上がり、ユーリスの口元に口を突き出すようにしてキスをした。それから「キュウキュウ」と甘く鳴いている。それにユーリスは苦笑していた。
「随分とユーリスに慣れているのですね」
フィアの問いかけに、ユーリスは頷いた。
「ええ。雛竜で本当に甘えん坊なのです」
今もぴったりとユーリスの胸元に張り付いているウェイズリー。それを見ながら、フィアは尋ねた。
「黄金竜の雛というと、ラウデシア王国を守ると言われている女王竜の系譜の竜なのでしょうか」
「そうです」
以前、ウェイズリーに両親のことを尋ねた時、父は知らぬが母は女王竜だと答えていた。
「……そうか」
ダンカンは驚き冷めやらぬ様子で、小さな竜とユーリスを見ていた。
「その小さな竜の姿の時、シルヴェスターはどうなっているんだ?」
「ウェイズリーの中に一緒にいるそうです」
「随分と面白いことになっているな…………」
「はい。でもウェイズリーが助けてくれなければシルヴェスターは死んでいました。私はウェイズリーに感謝してもし切れないです」
「キュキュキュルルルルルル」
ウェイズリーはその言葉にユーリスの胸に頭を擦りつける。その小さな竜の頭にユーリスは口づけしながら言った。
「私の大切な竜です」
この機会にこれ幸いと、ユーリスを寝台の中へ引き込んでいるという話すら流れてきている。
それを見て、休ませていることが馬鹿馬鹿しい、今、魔族からの総攻撃を受けて大変な中、シルヴェスターだけを休ませて恋人とイチャイチャさせておくこともないだろうと、副クラン長のフィアが顔をしかめて、シルヴェスターを戦場へ戻すように進言した。
確かにその通りだと、クラン長ダンカンも進言を受け入れる。
ダンカンは、シルヴェスターを戦場へ向かわせる前にシルヴェスターの部屋へ足を運び、彼が目を醒ましてから聞きたいと考えていた話を尋ねることにした。
つまり、シルヴェスターは死にかけていたのに、何故、死の淵から蘇ったのかと。当然の疑問をぶつけたのだった。
少年の時から、父親以上にシルヴェスターを愛し、教育してくれたダンカンに対して、シルヴェスターは今まで一度も隠し事をしたことがなかった。
だから今回の件についても、ダンカンにシルヴェスターは全て話した。
死にかけた自分を救うため、黄金竜の雛ウェイズリーと“同化”したことを。
話を全て聞き終えたクラン長ダンカンと、副クラン長フィアはしばらくの間黙り込んでいた。
やがてダンカンは、信じられないような口調で尋ねてくる。
「つまり、お前は竜と“同化”しているということなのか? 今もそうなのか?」
部屋の中には、クラン長ダンカンと副クラン長フィアが並んで椅子に座っている。そしてその前にシルヴェスターが腕を組んで立ち、シルヴェスターのすぐそばにユーリスも椅子に座っていた。
「そうだ」
ダンカンは信じられないような様子であったが、フィアはすんなりと納得していた。
「なるほど。その黄金竜の雛は、ユーリスについていたものでしょう?」
問いかけに「そうです」とユーリスは頷く。
ユーリスが襲われた時、ユーリスの身を守るように出現した“金色の芽”の話を聞いた時から、フィアはユーリスを守るため、そのそばに黄金竜がついていることを察していた。その黄金竜がユーリスの命令で、シルヴェスターの命を救ったということなのだろう。
「だが今も竜と“同化”しているだって? お前は人の姿のままじゃないか。竜が“同化”しているようには見えないぞ」
ダンカンの言葉に、シルヴェスターは「では見せましょうか」と言ったので、ダンカンとフィアは同時に頷いた。次の瞬間、シルヴェスターの姿がかき消え、目の前にはパタパタと小さな翼で空を飛ぶ可愛らしい金色の竜の雛がいた。
「キュッキュッキューキュー」
そう甘えるように鳴くと、ユーリスの胸元目掛けてまっしぐらに飛んで、ユーリスの胸にしがみついて小さな頭をぐりぐりと押し付けている。
「ウェイズリー」
ユーリスは嬉しそうに小さな竜の雛を抱きしめ返していた。
「……おい、シルヴェスターの姿が消えたぞ!!」
「これは面白いです。同化していると、互いの姿に一瞬で切り替えることが出来るのですね。一体どういう仕組みなのでしょうか。竜になった時には、シルヴェスターの着ていた服はどこへ行ったのでしょうか」
魔術師でもある副クラン長フィアは興味津々の様子で尋ねてくる。
ウェイズリーの頭を撫でながら、そのことはユーリスが説明してくれた。
「最初のうちは服も下に落ちていたのですが、今は姿を変えると同時に“無限収納”の中に放り込んでいるようです」
「“無限収納”持ちなのか!!」
言葉通り、無限に収納が出来る能力である。そうした能力を持つ者がいるという話を聞いたことがあったが、眉唾物だろうと思っていた。
ウェイズリーはユーリスの胸に張り付きながら、上の方へ上の方へずり上がり、ユーリスの口元に口を突き出すようにしてキスをした。それから「キュウキュウ」と甘く鳴いている。それにユーリスは苦笑していた。
「随分とユーリスに慣れているのですね」
フィアの問いかけに、ユーリスは頷いた。
「ええ。雛竜で本当に甘えん坊なのです」
今もぴったりとユーリスの胸元に張り付いているウェイズリー。それを見ながら、フィアは尋ねた。
「黄金竜の雛というと、ラウデシア王国を守ると言われている女王竜の系譜の竜なのでしょうか」
「そうです」
以前、ウェイズリーに両親のことを尋ねた時、父は知らぬが母は女王竜だと答えていた。
「……そうか」
ダンカンは驚き冷めやらぬ様子で、小さな竜とユーリスを見ていた。
「その小さな竜の姿の時、シルヴェスターはどうなっているんだ?」
「ウェイズリーの中に一緒にいるそうです」
「随分と面白いことになっているな…………」
「はい。でもウェイズリーが助けてくれなければシルヴェスターは死んでいました。私はウェイズリーに感謝してもし切れないです」
「キュキュキュルルルルルル」
ウェイズリーはその言葉にユーリスの胸に頭を擦りつける。その小さな竜の頭にユーリスは口づけしながら言った。
「私の大切な竜です」
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