転生したら竜でした。が、マスターが性的に俺の上に乗っかろうとしています。

曙なつき

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外伝 その王子と恋に落ちたら大変です  第十章 蝶の夢(下)

第三十話 空中城の卵(下)

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 大切なものというのは、大抵の場合、城の一番てっぺんに置かれていることが多い。
 白銀竜コンラートはそう考えていた。
 城の中を歩いていた時、何人かの小人や人間と出会ったが、コンラートは出会うなり彼らを魔法で眠らせた。殺しても良かったが、別に殺すほどのことでもないと思ったからだ。

 そして空中城の一番てっぺんにある部屋に辿り着いて、扉を開けた時、そこに一人の人間と小さな黄金竜の姿をコンラートは見つけた。
 若い金髪の男は、心底びっくりした顔でコンラートを見て、それから一瞬で怯えた顔になる。

「何故、あなたがここに」

 コンラートのことを知っている様子に、恐らくユーリスの部下で、王城から来たものだろうとコンラートは踏んだ。そしてそれは間違えていなかった。彼は副官のセリムだった。

 セリムはすぐさま転がるようにして、部屋の壁際の棚に近づく。
 そして小さな黄金竜は真っ白い丸いものの上に立って、怒りに金色の目を輝かせ、尻尾を立て、威嚇するように歯をむき出しにしていた。

 白銀竜コンラートは、小さな黄金竜の足元にあるものを凝視した。

「…………え」

 思わず驚いたように声が零れる。
 コンラートはようやく気が付いたのだ。

 ユーリスが小さな黄金竜に言った言葉の意味が。
 
『“巣”には、君が大切にしているものがあるはずだ』


 あああ
 だからか
 だから、ユーリスは長い間、王城に戻らず、自分の身を守っていたのか

 コンラートはようやく理解した。

 愛しい黄金竜シルヴェスターのそばに戻らずにいたのは、ユーリスが卵を身籠っていたからだ。
 そして小さな黄金竜はその卵を守るために、番のそばから離れたのだ。


 セリムは、一目で白銀の髪をした少年コンラートの姿を見て、それが王城に現れた白銀竜の弟の方であることが分かった。分かったと同時に恐怖する。
 この空中城は、安全である場所のはずだった。白銀竜達が近づくことはないと思っていた。その場所に白銀竜が現れたのだ。

 かつて、セリムがゴルティニア王国の王城で働いていた時、セリムは白銀竜達の精神を支配する魔法にかけられて、ユーリスの存在すべてを忘れた。他の同僚達もすべてそうだった。王城から離れて、空中城に連れてこられてようやく意識も鮮明になり、記憶も正常に戻ったのだ。他人に精神を支配されるというその恐怖をセリムは覚えていた。

 だからこそ、ユーリスから与えられた“結界の指輪”を手にするべく、部屋の棚の方に走ったのだ。
 今自分が、白銀竜の魔法にかかってはいけない。
 すぐそばにはユーリスの卵があるのだ。

 セリムが震える手で“結界の指輪”が入っている箱を開けようしたところで、卵の上に立っていた小さな黄金竜が、白銀竜コンラート目掛けて炎を噴き出したのだ。

 コンラートは「危ないだろう!!」と声を荒げて、炎から身を避ける。
 逃げた先目掛けてまた小さな黄金竜は炎を噴き出していた。

「あああ、ウェイズリー、火事になりますから部屋の中ではやめてください!!!!」

 必死になって、セリムがそう言うと、ウェイズリーは頷いて卵から足を離し、コンラートと、もつれあうようにして窓から飛び出したのだった。

 そしてコンラートも窓から飛び出すと同時に、少年の姿から大きな白銀の竜の姿に変わり、二頭は激しく争う。ウェイズリーは口から炎を吐き出し続け、コンラートもまた雷をウェイズリーの身に叩きつけていた。

 セリムは必死になってカーテンに移った火を消した後(ウェイズリーが口から噴き出した火がカーテンに燃え移っていた)、テーブルの上の小さなクッションの上に置かれていた卵を、孵卵器に入れ、その孵卵器を両手でしっかりと胸に抱いた後、彼は指に“結界の指輪”をはめたのだった。


 空中城の窓の外に飛び出した小さな黄金竜と、白銀竜コンラートは、空中城から離れて戦っていた。
 ウェイズリーは、空中城にいる者達のことを案じて空中城から離れようとしたのだ。そして白銀竜もその懸念に応えて、空中城から離れてくれる。

 コンラートはこの戦闘に乗り気ではなかった。
 先ほど見た、テーブルの上の小さなクッションの上に置かれていた小さな卵のことが気にかかったのだ。

(竜の卵というのは、あれほど小さなものなのか。真っ白で、落としたらすぐに割れてしまいそうだった)

 コンラートは、黄金竜の卵が、卵の意思で大きさを変えられることを知らなかった。
 竜の卵の小ささに驚くと共に、生命の神秘さえ感じていた。

(黄金竜シルヴェスターの番、ユーリスが産んだ卵)

 あれほど仲睦まじい二人である。ルドガーの後に、再び卵をユーリスが身籠っていても全くおかしなことではない。

 だが、コンラートはそのことを知らなかった。
 そして姉エリザヴェータも当然、このことは知らないだろう。

 戦意を見せないコンラートとは対照的に、小さな黄金竜ウェイズリーは戦闘意欲に満ちていた。
 絶対に、白銀竜を空中城に近づけてはならない。
 ユーリスの卵を守らないといけない。
 その一心である。
 ましてや番のユーリスは、ゴルティニア王国の王城に閉じ込められるように留まっている。自分の卵を温めることすら出来ないのだ。
 それも全て、白銀竜達のせいで。

 小さな黄金竜の目はギラギラと輝き、翼を広げ、大きく息を吸い込んだ後、真っ赤な炎を白銀竜に向けて吹き出したのだった。
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