710 / 711
外伝 その王子と恋に落ちたら大変です 終章
第十三話 その頃彼は
しおりを挟む
「おじいさまが、旅立った?」
それはまさに、青天の霹靂だった。
祖父ジャクセンが、夜のうちにどこか遠くへ旅立ったというのだ。
ユーリスは、短くその事実だけをルドガーに教えた。
当然ルドガーは、ジャクセンがどこに行ったのかとユーリスを厳しく追及するが、ユーリスは首を振る。
「私も教えられていないんだ。突然、慌ただしく旅立たれたから」
「そんな……」
追いかけようにも、ジャクセンの向かった場所の見当がつかない。
ルドガーは呆然とする。
それでも、その日からルドガーは“転移”魔法を繰り返して、ジャクセンが向かったのではないかと思われる場所を、大陸の方々を訪ねて歩く。しかし、祖父の姿をどこにも見つけることは出来ず、焦燥にかられる。
忽然と姿を消したジャクセン。
そんな彼に、ルドガーは怒りにも似た想いを抱く。
生き返らせて、その身も自分にふさわしいように“特別”なものに変えた。
そして、時間をかけて、彼の心が自分に向くことを、気長に待つつもりだった。
なのに、彼は逃げた。
行き先も告げずに、逃げたのだ。
そんなこと、許せるわけがない。
もし今度見つけて、捕まえたら。
ルドガーはそのことを思う。
もし見つけたら、閉じ込めて、決して外には出さない。
許しを乞うても、絶対に、絶対に逃がさない。
ルドガーの青い瞳は、狂気にも似た輝きを灯していた。
そしてその頃、ジャクセン達一行は、この世界とは別の世界にいた。
若い頃から素晴らしい美男子として知られたジャクセンは、自分へ強い“執着”を持つ男女の想いをよく理解していた。理不尽な怒りをぶつけられることも、過去から、多々経験していた。
そしてそれについては、護衛のバンクリフも、主君の身を守るように動いてくれた。
さすがにルドガーも、ジャクセンが今の世界から、全く違う世界へと界を渡って“転移”しているとは考えてもいなかった。ジャクセンは白銀竜の膨大な魔力を継承していた。彼と、黄金竜の雛アリアナが協力すれば、彼らに不可能なことは何もなかった。
ジャクセンは生まれた時から、バンクール家の長男として、後継ぎとして大切に育てられた。バンクール商会を継承することも定められし運命だった。婚約者ルイーズとの結婚もまた、定められしことだった。
しかし、一度死んで生まれ変わった彼は、何のしがらみもなく、今、自由であった。
小さな黄金竜の雛と、灰色の髪をした護衛の男を連れて、新しい世界の中、初めて彼は人生を謳歌するのだった。
それはまさに、青天の霹靂だった。
祖父ジャクセンが、夜のうちにどこか遠くへ旅立ったというのだ。
ユーリスは、短くその事実だけをルドガーに教えた。
当然ルドガーは、ジャクセンがどこに行ったのかとユーリスを厳しく追及するが、ユーリスは首を振る。
「私も教えられていないんだ。突然、慌ただしく旅立たれたから」
「そんな……」
追いかけようにも、ジャクセンの向かった場所の見当がつかない。
ルドガーは呆然とする。
それでも、その日からルドガーは“転移”魔法を繰り返して、ジャクセンが向かったのではないかと思われる場所を、大陸の方々を訪ねて歩く。しかし、祖父の姿をどこにも見つけることは出来ず、焦燥にかられる。
忽然と姿を消したジャクセン。
そんな彼に、ルドガーは怒りにも似た想いを抱く。
生き返らせて、その身も自分にふさわしいように“特別”なものに変えた。
そして、時間をかけて、彼の心が自分に向くことを、気長に待つつもりだった。
なのに、彼は逃げた。
行き先も告げずに、逃げたのだ。
そんなこと、許せるわけがない。
もし今度見つけて、捕まえたら。
ルドガーはそのことを思う。
もし見つけたら、閉じ込めて、決して外には出さない。
許しを乞うても、絶対に、絶対に逃がさない。
ルドガーの青い瞳は、狂気にも似た輝きを灯していた。
そしてその頃、ジャクセン達一行は、この世界とは別の世界にいた。
若い頃から素晴らしい美男子として知られたジャクセンは、自分へ強い“執着”を持つ男女の想いをよく理解していた。理不尽な怒りをぶつけられることも、過去から、多々経験していた。
そしてそれについては、護衛のバンクリフも、主君の身を守るように動いてくれた。
さすがにルドガーも、ジャクセンが今の世界から、全く違う世界へと界を渡って“転移”しているとは考えてもいなかった。ジャクセンは白銀竜の膨大な魔力を継承していた。彼と、黄金竜の雛アリアナが協力すれば、彼らに不可能なことは何もなかった。
ジャクセンは生まれた時から、バンクール家の長男として、後継ぎとして大切に育てられた。バンクール商会を継承することも定められし運命だった。婚約者ルイーズとの結婚もまた、定められしことだった。
しかし、一度死んで生まれ変わった彼は、何のしがらみもなく、今、自由であった。
小さな黄金竜の雛と、灰色の髪をした護衛の男を連れて、新しい世界の中、初めて彼は人生を謳歌するのだった。
12
あなたにおすすめの小説
死に戻りした僕を待っていたのは兄たちによる溺愛モードでした
液体猫(299)
BL
*諸々の事情により第四章の十魔編以降は一旦非公開にします。十魔編の内容を諸々と変更いたします。
【主人公(クリス)に冷たかった兄たち。だけど巻き戻した世界では、なぜかクリスを取り合う溺愛モードに豹変してしまいました】
アルバディア王国の第五皇子クリスが目を覚ましたとき、十三年前へと戻っていた。
前世でクリスに罪を着せた者への復讐は『ついで。』二度目の人生の目的はただ一つ。前の世界で愛し合った四男、シュナイディルと幸せに暮らすこと。
けれど予想外なことに、待っていたのは過保護すぎる兄たちからの重たい溺愛で……
やり直し皇子、クリスが愛を掴みとって生きていくコミカル&ハッピーエンド確定物語。
第三章より成長後の🔞展開があります。
※濡れ場のサブタイトルに*のマークがついてます。冒頭、ちょっとだけ重い展開あり。
※若干の謎解き要素を含んでいますが、オマケ程度です!
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます
トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。
魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・
なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️
エブリスタにも、掲載しています。
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました
猫むぎ
BL
※イヴ視点26以降(ハルフィリア編)大幅修正いたします。
見てくださった皆様には申し訳ございません。
これからも見ていただけたら嬉しいです。
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。
当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。
それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。
漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは…
出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。
メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。
最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる