異世界転移しても所詮引きこもりじゃ無双なんて無理!しょうがないので幼馴染にパワーレベリングして貰います

榊与一

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第二章 希望を求めて

第二十五話 お行儀

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「なるほどのう。クラウスはたかしの話、どう考える」
「只の盲言としか思えませんな。耳を傾ける価値はないでしょう」

クラウスは此方を一瞥したのち、リンに視線を移してから言葉を続ける。

「まあ、リンさんがいなければの話ですが。彼女程の力の持ち主を従えているとなれば、話は別です」
「うむ。リンはとんでもなく強いからのう」

二人に褒められて、リンが照れくさそうにアホ毛をぶるんぶるんする。
お陰でアホ毛が顔の横すれすれを行ったり来たりして気になって仕方がない。

口ぶりからするに、どうやら俺が気絶している間にリンは変身を披露しているようだ。この城内で危険な目に遭う事はないとは思うが、制限がある変身を勝手に使うのは止めてもらいたいものだ。

「それじゃあ信じて貰えるのか?」

俺は鬱陶しいリンのアホ毛を掴んで引っ張りながら訪ねる。

「全く信じられんな」
「何でだよ!?」

リンの力云々はどこ行った?

「そういった使命を帯びていてもおかしくない程の力を秘めている事は認めよう。だからと言って、貴様の言葉が真実だという保証はどこにも無い」

正論だ。
力こそ正義等と言う極端な思想でもなければ、まあそうなるのが当然の話ではある。

「まあ要は信頼に足る根拠を見せろという事じゃな」
「そういう事です」
「という訳でたかしよ!童にこれでもかと言うほどの証拠を見せて見よ!!」

そう叫びながら幼帝が椅子の上に立ち上がり、テーブルに片足を載せて此方を指さしてくる。その余りの行儀の悪さに周りのメイド達は顔を顰めたり、その姿を見ないように俯いて視線を落とす。

「陛下、流石にそれは……」
「エリンちゃん!行儀が悪いよ!!」
「む。童としたことが思わず興奮して見苦しい姿を見せてしまったな。許せ」

リンに叱られた幼帝がしっぱいしっぱいと可愛らしく頭の後ろを書きながら椅子に着き。話を続ける。

「お主等の力があれば自由に大精霊様を探す事も出来たはず。にもかかわらず此処――ドラグーン城――に来たと言う事は、童達を納得させるだけの物があるからじゃろう?」

勿論ある。
流石に話だけで納得して貰えるとは最初っから思っていない。

しかし子供の割に鋭いな。
リンと同じアホのオーラを所々漏らしてはいるが、流石はきちんとした教育を受けている皇帝だと得心する。

まあ行儀は悪いけど。

「証拠って訳じゃないけど。俺の召喚に霊竜と邪竜がいるから、そいつらに話を通して貰おうかと」
「霊竜と邪竜か……確か西の方で争っていた竜族じゃったかの?」

自信が無いのか疑問形で言葉を締めた後、答え合わせを求めるかの様に幼帝がクラウスに視線を送る。

「陛下のおっしゃる通り、この国が出来る以前から西で覇を争っていた種族です。確か風の噂では、霊竜側が勝利を収めたと聞き及んでおります」
「うむ。その通りじゃな」

どう見ても幼帝はうろお覚えで、クラウスに補足して貰ったとしか思えないが。
さも自分も知ってたかの様に偉そうに振舞う。

「邪竜は滅んだと思っていたのだが。話が本当なら生き残りが居たという事か」
「ああ、邪竜は最後の一匹が封印されてただけで。最近復活してる」
「成程。その2種族が口利きをするというなら、確かに信頼に値するな」
「そうなのか?配下ならば主の為に口裏を合わせるんでは無いかの?」

幼帝が不思議そうに首を捻る。

「例えば陛下のご両親が敵対者に殺されたとして、その相手と手を組めますか?」
「童の両親は両方病死じゃぞ?お主は何を言っとるんじゃ?」
「例え話です。陛下……」

クラウスは呆れたように溜息を吐きながら首を横に振る。

「なんじゃ例えか。それを先に言わぬか」

おもっくそ例えって言ってたけどな。

「それは失礼いたしました。で、例え話なのですが。親の敵と手を組まれますか?」

クラウスは自分が悪い事にしてさっさと話しを進める。
どうやら余計な突っ込みは入れない様だ。

「ありえん!仇を取るまで徹底抗戦じゃ!」
「ええ、それが普通です。我ら竜族は誇り高き種族。例え殺されようと仇と手を結ぶなどあり得ません。そんな竜族が手を結ぶとしたら――」
「成程、世界の危機でも起こらん限りあり得んという事か」
「左様です」

納得いったのか、幼帝が左掌に軽く握った拳をポンとぶつける。

流石子供とは言え国のトップだ。
真のアホの子とは出来が違うな。

今の説明では絶対理解していないだろうなと、ちらりとリンの方を横目でみると。
案の定何のことか理解できていない。
というか、今何の話をしているのかすら分かっていなさそうなあどけない表情――悪く言うとあほ面で此方を見返してくる。

「では早速その邪竜と霊竜を此処に呼び出すのじゃ」
「え!?ここで!?」

辺りを見回す。

この庭園は巨大だ。
両方呼んでも問題ないスペースはあると言える。
但しそれは庭園に植えられている植物の存在を無視すればの話だ。

「いや、あいつら相当デカいから。ここで呼んだら折角の花とかが滅茶苦茶になるぞ?」
「別に構わんが?」
「いや、流石に良くはありませんよ陛下。元に戻すのにどれだけの労力がかかると思っているのですか?」
「ふむ、そうか。ではコロッセウムに移動するかの。せっかく来てもらうんじゃから、一戦交えるのも悪くなかろう」

いや悪いだろう。
何故戦う必要がある?

「まだ成体になり切れていない陛下が確実に負けることになりますが?」
「敗北もまた経験じゃ」
「まあそれもそうですな」

戦わせんのかよ!?
皇帝なのに?

死んだらどうするつもりなのだろうか?
勿論戦う事になった場合、手加減をするよう頼むが。
それでも怪我をさせる恐れは十分にある。

ていうか成体になり切れてないって事は、もうほとんど大人って事か?
皇帝の姿を上から下までじっくり眺めるが、どう見ても10歳時前後にしか見えない。

まあでもよくよく考えれば人の姿をしている時点で変身している訳だから、幼い子供に意図して化けてるって事か。
恐らくは周りを油断させるためか何かなのだろう。

「お!そうじゃリン!折角だしタッグで戦わんか?」
「あ、ごめんなさい。まだ24時間経ってないから今は黒い方にしか変身できないの」
「黒い方?リン、お主他にも変身があったのか?」
「うん、黒い方に変身するとちょっと短気になっちゃうから。組んで戦うのはちょっと……」

仮に黒い方じゃなくても戦わす気はないけどな。

「そうか残念じゃ」

どんどん戦う方向で話が進んでいくので釘を指しておく。

「怪我でもされて文句言われても叶わないんで。戦いとかお断りだぞ?」
「まあそうけち臭い事を言うな。ではコロッセウムに行くかの」

そういうと幼帝は席から立ち上がり、すたすたと庭園から出て行ってしまう。
どうやら手合わせは確定の様だ。

「接待という言葉を知っているか?信頼を得たいのなら努力する事だ」

そう言い残し、クラウスも席を立って幼帝の後を追う。

わざと負けさせろってか?
そんなん絶対無理だぞ?

プライドの高い竜が八百長等してくれるはずがない。
呼び出しパーティーコールで呼ぶのではなく、召喚してブースト掛ければいい勝負にはなりそうだが。負けさせるために接待で呼び出した事がばれたら後々怖い。

「接待なんざ気にせずボコボコにしてやればいい。あのガキは俺と同じで戦いを楽しむタイプだ。眼を見りゃわかる。手加減して勝ちを譲って貰ったって絶対喜ばねぇぜ」

ガートゥが席を立ち上がり俺の肩に手を置く。

「俺を信じろって」
「わかった。お前を信じるよ」

厳つい顔でウィンクしてくるガートゥの勘を信じて、接待はしないと決める。
勿論死なない程度の手加減はしてもらうが。

結論が出た所で俺は席を立ち、膝に抱っこしていたケロを肩に担いで庭園の外へと向かう。
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