先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬

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第1章

第10話

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翌朝。目覚まし時計が鳴る。俺は慌てて起きて、身支度を整える。

リビングに行くと、ルカが既にキッチンに立っていた。朝食とお弁当の両方を用意していたのだ。

「おはよう。朝食を先に食べるか?」

ルカが振り返る。朝からルカが見れるなんて新鮮だなぁ、と寝ぼけた頭で考える。

「え…両方作ったの?」

「ああ。朝ご飯も食べずに学校に行ったら、体に悪いだろ」

ルカが出来立てのパンケーキを皿に乗せる。横には新鮮なフルーツとコーヒーが置かれている。

「ありがとう」

俺は座ってパンケーキを食べた。ふわふわで、本当に美味しい。シェフの修行をしてるだけあって、何を作ってもレベルが違う。

食べ終わると、ルカはお弁当を手渡した。見た目も綺麗に詰められている。

「お弁当も持って行って」

「ありがとう、ルカ」

「泊めてもらってるから、これくらいはさせてくれ」

時計を見ると、そろそろ出発しないと遅刻しそうだ。

「行ってきます」

俺が玄関で言うと、ルカが後ろからついてきた。

「待て」

「え?なに──」

振り返ると、ルカは両手で俺の顔を優しく掴んで、頬にキスをした。

《本当に可愛いな。こいつ》

ルカの心の声が聞こえた。その声には、深い愛情が込められているような気がして、俺の顔は一気に赤くなる。

「…なんだか新婚さんみたいだね」

俺は何も考えずにそう呟く。こんなのテレビドラマでしか見たことがない。フランスでは当たり前なんだろうな。

ルカは大きなため息をついた。

「何?」

「いや、何でもない。気をつけて行ってこい」

ルカが微笑みながら手を振る。

「…わかった」

そう言いながら、俺の心臓はまだ高鳴ったままだった。


****


昼休み。俺は千隼と奏多と食堂で約束をしていた。

食堂に行くと、二人は既に昼食を頼み終え、席に着いていた。

「あ、遙真!」

千隼が手を振る。

「お、遙真も来たか」

二人の向かい側の席に座る。そして、俺はルカが作ってくれたお弁当を開く。

「わっ、何これ?」

千隼が目を丸くする。

「遙真のお弁当、豪華じゃん」

奏多も驚いている。ルカが詰めてくれたお弁当は、本当に見た目も綺麗だった。オムライスのような見た目のご飯に、色とりどりの副菜。本当にシェフが作ったんだな。

「誰が作ったの?」

千隼が聞く。

「従兄弟が泊まってて」

「従兄弟?」

「そう。ルカのこと覚えてる?小さい頃よく遊んでた」

「あ!覚えてるよ!金髪の人?」

千隼が興味深そうに尋ねてくる。

「うん。今、日本に戻って来てるんだ」

「へぇ、なるほど。それにしたって豪華だな」

奏多が覗き込む。

「美味しそう!」

「シェフ目指してるんだって。近いうちに晩ごはん食べにおいでよ、ルカも喜ぶと思うし」

ルカのお弁当を食べる。ルカの作った朝食のパンケーキも美味しかったけど、このお弁当も本当に美味しい。

ルカが作ったんだ……。

朝のキスを思い出す。フランスの文化だから…でも、なんか照れくさい。

「遙真?」

「え?」

奏多が心配そうに声をかけてくる。

「何か考えてたみたい」

「あ、ごめん。大丈夫」

口を動かすことで、心を落ち着かせる。二人にキスのことを話しても当たり前って言われるよな。ルカはなんとも思ってないはずだし、俺が勝手にどきどきしてるだけ…恥ずかしい。

「ところで、ルカは何日泊まってるの?」

千隼が聞く。

「昨日からだよ。二ヶ月いるんだって」

「二ヶ月か。長いな」

奏多が言う。

「ふふ、久しぶりに会えて嬉しいんだ」

「ふーん。遙真、ルカと仲良いんだ」

千隼が微笑む。『面白そう』って顔をしているのは、気のせいだろうか。

「うん。ルカはいつも優しくてさ」

ルカの話をしていると、不破先輩と橘先輩が食堂に入ってくるのが見えた。

不破先輩は、今日も俺たちの方を見ると、手を挙げた。

「遙真。いいか?」

不破先輩が立ち止まる。

「あ、はい」

「昨日のマドレーヌ、美味かった。いつかバイト先に行っていいか?」

「えっと…先輩来ると緊張しちゃうので…その、調子がいいときなら、いいですよ」

「あぁ、楽しみにしとく」

不破先輩が微笑む。
先輩がバイト先に来たら、俺が全然集中できない…。
香織さんにそれを見られるのもむず痒いし。

「春樹、行くぞ。昼休み、あんまり時間ないぞ」

橘先輩が不破先輩を急かす。

「あ、あぁ。遙真、また後でな」

不破先輩と橘先輩は食堂の別の方へ去っていった。

「…あ、遙真。もしかして」

千隼が俺を見つめている。

「何?」

「不破先輩のこと……好きなの?」

「え…」

言葉が出ない。

「遙真の顔、赤いよ」

奏多がそう言う。

───え、うそでしょ。なんで、俺……。

「違う…そんなこと…」

「本当だ。いや、逆か。不破先輩が遙真のことを好きなの?」

千隼がニヤニヤしながら言う。

「違う。ただの先輩だ」

俺は必死に否定する。だって、そんなわけ…。

「そっか。でも、遙真は目立つから気をつけないと」

奏多が心配そうに言う。

「……うん」

俺は自分がどんな状況にいるのか、少しずつ理解し始めていた。


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