先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬

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第2章

第11話

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今日も昨日と同じように、ルカが朝食を用意してくれていた。

食卓にはクロワッサンとバター、ジャムが並べられていて、“ザ・洋食”って感じで、少し気分が上がる。
ルカは「フランスでよく食べていたものだよ」と説明してくれた。
ジャムはルカの手作りらしく、いちごの新鮮で甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がって、美味しかった。

「行ってきます」

玄関で俺が言うと、ルカが頬にキスをした。もう慣れてきたのか、昨日ほどの動揺はない。
やめて、というほど嫌でもないので特に注意はしなかった。

「気をつけてな」

ルカが手を振る。


****


教室に入ると、隣の席の田中が話しかけてきた。

「あ、綾瀬! おはよ──」

その瞬間、別の男子が俺と田中の間に割って入ってきた。

「おーい田中。体育の課題、手伝ってくれよ」

「え、ちょ……別に今じゃなくても──」

田中は強引に引っ張られ、連れ去ってしまった。

俺は最近、田中と話せるようになって勝手に浮かれていたけれど、少し自惚れていたのかもしれない。
田中は友達も多いし、俺みたいな陰キャとも話してくれる優しいやつだから、みんなから好かれているのも納得だ。

朝礼が終わっても、なんとなく晴れない気分でぼーっとしていると、長谷川が話しかけようとした。

「綾瀬、なにかあった──」

「よぉ長谷川。野球の部活、手伝ってくんない?」

別の男子が長谷川に話しかける。まるで俺が見えていないかのように……。

たしかに、田中も長谷川も俺に比べれば、断然親しみやすくて感じがいい。だから二人に用があるのは十分理解出来る。

しかし、これまでクラスで浮いていた俺が無視されることは一度もなかったし、最低限の受け答えはしてくれた。

何か……おかしい

何が起きているのかわからないが、昨日までと違う雰囲気を感じた。


****


昼休み。千隼と奏多に会うため、俺は歩きながら考えていた。

田中も長谷川も、昨日までは普通に話しかけてくれたのに……ひょっとして避けられてるのかな……?

ぼんやりとした頭で階段を下りていると、足が段をしっかり踏まず、つるりと滑ってしまった。

「あ……」

体が落ちていく感覚。階段を転げ落ちる。

ドン、ドン、ドン。

何度も段に体が当たる。
最後に足首がひねられるような痛みを感じた。

「…遙真!?」

「遙真!大丈夫か!」

千隼と奏多が駆けよってくる。
いつもより行くのが遅くなったから、様子を見に来てくれたのだろう。
ふぅ、周りにあまり人が居なくてよかった。3、4人にしか見られていない。

「どこが痛い?」

千隼が心配そうに声をかけてくる。

「足首……」

見ると、左足首がちょっと腫れている。靴を脱いでみると、ひねったのだろう。でも、動かしてみると、骨が折れてはいなさそうだ。

「保険室に行った方がいい」

「そうだね……」

俺は2人に保険室に連れていかれることになった。

保健室は、白く清潔な空間で、消毒液のにおいが鼻をつき、どこか病院に似た静けさがあった。
保険医の先生が足首を診てくれた。

「大したことはないようですね。念のため、午後の授業は休んで、家で安静にしていた方がいいでしょう」

「わかりました」

足首を冷やして、少し横になって休んでから、早退することにした。

スマホを取り出して、ルカに連絡する。

◇◇◇◇

【綾瀬遙真】: 階段で足をひねった。午後休むから早退します。大丈夫です。

返信は5分後に来た。

【ルカ】: わかった。迎えに行く。30分待ってろ

◇◇◇◇

早い……来てって言ってないのに…
そう思いながら、俺は保険室で少し休んだ。

20分後、スマホが鳴った。ルカからの電話だ。

「もう着いた。玄関に出て」

「え、もう?」

「ああ。早めに着いた」

俺は保険室を出て、玄関に向かった。
足に違和感はあるものの、歩けないことはない。

学校の玄関前には、黒い車が停まっていた。

ルカが降りてきて、俺に駆け寄る。

「どこが痛い?」

「足首。大したことないんだけど」

「そっか。乗ろう」

ルカが優しく俺の腕を掴んで、車に乗せてくれた。

「足首の他に、どこか痛い?」

「背中と腕が少し」

「階段から落ちたんだ」

運転しながら、ルカが心配そうに言う。

「えっと、ぼーっと考えてて」

「何を考えてた?」

「……いや、何でもない」

俺は話題を変えたかった。田中や長谷川の態度のことを聞かれると、うまく説明できない気がした。

家に着くと、ルカは俺を背負ってベッドに連れていった。俺との体格の違いがはっきりとわかって、地味に悔しかった。

「後で医者に行った方がいいかもな。骨が折れてないか確認する」

「わかった」

ルカが丁寧に俺の足首を見る。その手つきは、やさしく、正確だった。

《転んだ……いじめられたりしてないよな……》

ルカの心の声に、心配が込められていた。
さすがにいじめられてはいないので、慌てて否定する。

「本当に俺の不注意なんだ。大丈夫、すぐ治る」

「そっか」

ルカが横になっている俺の髪を撫でた。

その夜、医者に行き、足首は骨折していないことが判明した。

ただの捻挫。数日安静にしていれば、治るらしい。

幸い、その翌日から三連休だったのできちんと休息を取ることができた。
ルカはその間、仕事で家を出るときもあったが、ご飯の用意や数時間おきに連絡をしてくれて、その過保護さに思わず笑ってしまった。
千隼と奏多も様子を見にきてくれて、一緒にゲームをしたり、ルカと共に夕飯を食べた。

不破先輩と橘先輩からもメッセージがきていた。そこには体調を気づかう言葉と『しばらく会えないかも』という旨も書かれていた。

何があったのか…二人に尋ねる勇気もないので、そっとメッセージを終える。

みんなの温かさが、あの時の違和感を少しだけ和らげてくれた気がした。


****


ルカはフランスの運転免許証と国際運転免許証を持っており、法律にのっとって行動していますので、どうぞご安心ください。
車は知人の方からお借りしているそうです。



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