13 / 42
13.歓迎会②
しおりを挟む廊下を走りながら振り返ると、三人とも真剣な顔で追いかけてきていた。
(どうしよう……)
中庭に出ると、そこでも鬼ごっこが繰り広げられていた。何人かの新入生が鬼に追われて走り回っている。
「凛音!」
真白くんの声が聞こえた。見ると、彼と夏目くんが植え込みの陰に隠れている。
「こっち!」
二人の元に駆け寄ると、植え込みの陰に身を隠した。
「大丈夫だった?」
「なんとか……」
「でも、あの三人すごい執念だね」
真白くんが中庭を見回す。
「みんな凛音のことばっかり追いかけてる」
確かに、他の新入生への追跡は緩やかなのに、ぼくだけ三人もの鬼に狙われている。
「人気者は大変だね」
夏目くんが呟く。
「人気者って……」
「お前は自覚がなさすぎる」
その時、植え込みの向こうから声が聞こえた。
「この辺りにいるはずですが……」
圭人先輩の声だ。
「分散して探そう」
「俺は向こうを見てくる」
東雲先輩の声も聞こえる。
「凛音、別れて逃げよう」
夏目くんが提案する。
「一緒にいると、全員捕まってしまう」
「でも……」
「大丈夫。30分後に図書室で合流しよう」
真白くんも頷く。
「それがいいよ。凛音、気をつけて」
三人はそれぞれ違う方向に走り出した。
ぼくは校舎の方に向かったけれど、すぐに足音が追いかけてきた。
「凛音くん」
圭人先輩の声だ。
振り返ると、圭人先輩が一人で追いかけてきている。
「待ってください」
「待てません」
階段を駆け上がって2階に向かう。でも、圭人先輩との距離は縮まっていく。
「凛音くん」
もう手が届きそうな距離まで近づいてきた。
その時、横の廊下から誰かが飛び出してきた。
「凛音、こっちだ!」
寮長の鳴海先輩だった。
「鳴海先輩……でも、先輩も鬼ですよね?」
「ああ、そうだが……」
鳴海先輩は苦笑いを浮かべた。
「如月に捕まるより、俺に捕まった方がましだろう?」
「それは……」
「冗談だよ。少し休憩しないか?」
鳴海先輩が空いている教室を指差す。
「如月、君も少し落ち着いたらどうだ?」
「申し訳ありませんが、私は本気です」
圭人先輩が一歩前に出る。
「凛音くんは、私が捕まえます」
「そう簡単にはいかないよ」
鳴海先輩も負けていない。
「寮長として、寮生は俺が守る」
また鬼同士の対立が始まってしまった。
その隙に、こっそりと別の方向に逃げ出す。
(みんな、どうしてこんなに必死なんだろう……)
でも、心のどこかで、少し嬉しい気持ちもあった。
これだけ多くの人が、ぼくを追いかけてくれている。
もしかしたら、本当にぼくは特別な存在なのかもしれない。
そんなことを考えながら、ぼくの鬼ごっこはまだまだ続いていた。
****
ある程度、物語のストックが溜まってまいりましたので、第30話までの間は一日二話ずつ更新させていただきます。(0時と12時の更新を予定しております。)
いつもお気に入り登録やいいね、しおり、エールなど、温かい応援を本当にありがとうございますm(_ _)m
89
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる