【本編完結】セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する

にしのムラサキ

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悪役令嬢、ジェネレーションギャップを感じる

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「先生さっきのおじさん、観光客に紛れてわからなくなっちゃった」
「でも神社にいるのは間違いないっす」

 秋月くんと黒田くんが戻ってきた。

「え、あ……そっか、ごめんね? ありがとう」

 先生は弱々しく笑う。

「どーすんスか先生……、お、小学五年生、合流したんだな」
「えっ誰!?」

 なんだかとてもフツーにアキラくんを受け入れる黒田くんと、ちょっと驚いてる秋月くん。

「えっなんなん健クン気付いてたん!?」
「バレッバレだぞお前、柱から半分でてんだもんよ。めんどくせーから無視したけど」
「いや言えや~」

 かなり悔しそうなアキラくんをチラリと見て「で、どーすんスか?」と黒田くんは続けた。

「あそこの神社かなりでかいし、そんなすぐ帰るとかはねーかなとは思うんすけど」
「うーん」
「ねーっ、ごめんそろそろ説明してもらっていい?」

 ひよりちゃんが、ぷうと頰を膨らませた。
 黒田くんがザッと状況を説明する。

(まぁ要約してもしなくても、個人情報満載のノートパソコンが行方不明って結構まずい)

 先生はあらためて、はぁと肩を落とした。

「クビ、かなぁ……」
「え、先生いなくなるのヤダ」

 秋月くんがすぐに反応した。

「先生、そりゃミスとか多いけどさ! 授業面白いし、それに俺が50メートル走のタイム伸びないって悩んでた時、練習めっちゃ付き合ってくれたじゃん! あれ、野球のコーチにも褒められたんだよ、走塁速くなったって」
「あ、褒められたのかぁ、速くなったのかぁ」

 先生は笑った。とても嬉しそうに。

「良かったぁ」

(う。ほんとにいい先生なんだよなぁ……)

 私は悩む。

(手分けしてあのおじさんを探す?)

 私はいいけれど、他の子たちは一生に一度の小学校の修学旅行だ。そんなことに時間を割いていいものか……。
 うーん、と悩んでいると、アキラくんが「ほな、こうしたらどない?」と声を上げた。

「どっちにしろそのオッサンも、荷物間違えたって気付いたらここ戻ってくるやろ。駅のヒトに荷物とどいてませんかぁ言うて聞くやろし、せやったらその荷物駅員さんに預けて、あとは観光がてら3組に分かれて、2人1組で稲荷大社探し回ったらええやん」
「あ、そうしよ」
「うんうん、手伝うよ先生!」

 アキラくんの提案にすぐに乗るひよりちゃんと秋月くん。

(それがいいかな、観光がてら、ならみんなも楽しめるし……ん?)

 私は首をひねる。

(2人1組でみっつ?)

 アキラくんを見ると、にこっ! と笑って両手の親指で自分を指した。

「ここまできたらこの山ノ内瑛も一肌脱ぐで!」
「てめーは設楽と遊びたいだけじゃねぇか」
「ええやん! 人手は多い方がええやろ!?」
「せっかく決めてもらったけど、ダメだよ」

 先生は静かに言った。

「これは先生の責任で、先生が大人としてどうにかします。君たちは修学旅行を楽しみなさい。せっかくの自由行動、好きに過ごして、ね?」
「えー、でも」

 不服そうな秋月くん。

「じゃあそうします」

 ぴしゃり、と私は言った。

「これは先生の自業自得ですから」
「うっ……その通り」

 苦笑いする先生と、少し怒り顔の私を交互に見て、ひよりちゃんと秋月くんはオロオロしていた。黒田くんとアキラくんも少しびっくり顔だ。

「ですが」

 私は少し表情を緩めた。

「私たちが勝手に、あのおじさんを探すのは、それは自由ですよね? 今日は自由行動なんですから」

 笑って続けた私の言葉に、秋月くんは大きく頷いた。

「先生、絶対あのおじさん見つけてくるから!」
「すぐに見つかるって」

 秋月くんとひよりちゃんの言葉に、涙ぐむ先生。

「みんなぁ……」

 それから、うん、と頷くと言葉を続けた。

「じゃあ、さっきの提案に甘えよう。2人1組で、でも、午前中いっぱいだよ。それ以降は予定通り移動して」
「はぁい」

 私はブレスレットと重ね付けした腕時計を確認する。

(いま、10時前……ってことは)

 2時間で見つけなくては。

(まぁ、そもそも気付いて戻ってくるかもだし)

 荷物を駅員さんに預けた先生が戻ってきた。事情を簡単に話して、おじさんが来たら連絡をもらう手筈にしたらしい。

「ちなみに先生、その、おじさんの荷物には何が入ってたんですか?」

 ひよりちゃんが尋ねる。

「それがね」

 先生はうーん、と首を大きくひねった。

「あぶらあげ」
「は?」
「あぶらあげが、大量に」
「あぶらあげ?」

 私たちは顔を見合わせた。

(あぶらあげー?)

 そりゃ、お稲荷様だから、あぶらあげなんだろうけど。良く知らないけど……

「奉納するやつだったのかな?」

 私は首を傾げた。

「あ、そうかも。それなら今頃気付いてるんじゃない?」

 ひよりちゃんも嬉しそうに手を叩く。

「どうやろうか。ここ、めっちゃ山の上まで神社あるで。本殿にならすぐやろうけど」
「あ、そうなのか……」

 私はそうか、とガイドブックを開く。

(一ノ峰上社、とかまで行かれると、少しヤバイかな)

 山頂にあるらしい。
 ちらりと時計を見た私の腕に、先生は視線をやる。

「ね、設楽さん、そのブレスレット」
「え」

(だ、だめだったかな!?)

 修学旅行中、みんなシンプルなアクセサリーはつけているので大丈夫かなと思っていたけど。

「ううん、大丈夫。没収とかはしないから。ちょっと見せてもらってもいい?」
「え、あ、はい」

 外して、先生に渡す。

「ふうん」

 先生は手に取ったそれを、少し面白そうに眺めた。

「なるほどね、ありがと」
「……?」

 不思議そうな私に、先生は言う。

「ごめんごめん、それね、ちょっとその、特殊なやつだと思うよ」
「特殊?」
「お値段そこそこ。素材自体もプラチナだし、まぁ特殊性はそこにないんだけどねぇ」
「えっ」

(樹くん、そんな高価なものを!?)

 私がまじまじとブレスレットを眺めているうちに、アキラくんは「ほなこれで組み分けしよか!」とスマホを取り出していた。

「え、どうやって?」
「アプリであみだくじ」
「ほえー」

 私は感心した。

(最近の子って、そうやってやるのね……)

 もう紙に書く時代は終わったのだろうか……アラサーはちょっと切ないよ。
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