【本編完結】セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する

にしのムラサキ

文字の大きさ
434 / 702
【高校編】分岐・黒田健

女子校の生徒(side健)

しおりを挟む
「知ってるか今日ミツジョの人たち来るらしいぜ」

 この男子校において、女が校内に入ってくるというのは(先生を除いて)一大イベントらしい。

「マジかよ」
「可愛いかな」

 昼休み。入学してまだひと月も経っていないのに、コイツらテンション高ぇな、と俺はそいつらを眺めた。同じクラスのやつら、けっこういいヤツばっかで楽しく過ごしている。

(設楽に会いてーなとは思うけど)

 それを除いては、かなり充実した高校生活のスタートを切っていると思う。

「黒田、てめーなんかスカした顔しやがって」
「嬉しくねーのかよ、女子だぞ女子」
「いや別に……登校中とか見るだろ女子。なに騒いでんだよ」
「お前はシュギョーソーか!」

 シュギョーソー? うまく脳内変換できなくて一瞬悩む。ああ、修行僧か。なんだそりゃ。

「俺は煩悩の塊みたいな人間だぞ」
「ウッソ、お前ムッツリなのムッツリ」
「好きに言え」

 めんどくさくなって、俺はそう答えた。紙パックのカフェオレを飲む。

「可愛かったら声かけたいなぁ、彼女欲しい」
「欲しいよな、彼女いたらこの潤いのない男子校生活も乗り切れそう」

 俺は黙ってカフェオレを飲む。設楽に会いたい。今頃なにしてんのかな。毎日メールはしてるけど。設楽のスマホは制限が色々あって、メールくらいしかできない。

「……黒田、お前さっきから黙ってるけどまさか彼女とかいねぇよな」

 友達のひとり、森田がそう言って、俺は目線を上げた。

「いるけど」
「はぁ!?」

 周りのやつ数人が立ち上がる。

「裏切り者!」
「裏切ってねえわ」

 どっからそうなる。

「写真! みせろ!」
「嫌だ」

 写真じゃ設楽のことは何も伝わらない。変にカオが整ってるせいで、多分こいつらそこにしか目が行かないし。

「なんだよ照れんなよ」
「美人かブスかだけ教えて」
「てめーら、自分の彼女ブスとか言うやついると思うのか」

 俺は憮然として言う。

「付き合ったことねーからわかんねーよ!」
「しらねぇわ」

 ちょうど予鈴が鳴って、俺たちはめいめいの席に戻る。授業は古典、眠くらねぇように気をつけねーといけない。
 と思っていたのに、少しウトウトしてしまったらしい。はたかれて起きた。
 仲良いやつらがニヤニヤ笑う。

「彼女と遅くまでいちゃついてるからだ」

 森田がこっそり言ってきた。

「いちゃついてねーし」

 2週間くらい会ってねーぞ。

(今週末、会えるけど)

 練習試合の後、コーチがそのまま研修に行くらしくて現地解散だと言われたのだ。少しだけだけど時間できた、と伝えたら速攻でメールが返ってきた。

「黒田、それから宿題忘れたやつ、放課後職員室までプリント取りに来い」

 追加課題だ、と言われて少しげんなりする。森田もげーって顔をしていた。宿題忘れたんだろう。

 放課後、部活に行く準備もして俺たちは職員室へ向かった。

「部活順調?」
「おう」

 厳しいけどやりがいはある。

「野球部どうなんだ」
「人数多いからなぁ、ポジション争いですでにヤバイ」

 森田は野球部で、中学まではエースで四番だったらしいけど高校ではキツイって話をよく聞いていた。

「幼馴染で野球やってるやついて、いま青百合だけど、やっぱポジション争いって大変なんだな」
「あ、青百合も強豪だよなー。なんてやつ?」
「秋月」
「え、もしかして秋月翔? ショートの」
「知ってんのか」
「有名! 身体小さいけど打つよな」

 野球はよくわかんねえけど、どうやらあいつは結構有名人だと知って少し見直した。
 職員室に入ると、森田が固まる。

「あ、あれ、サンジョの子たちじゃん」

 見ると、ブルーグレーのブレザーの、4、5人の女子……、の1人から目が離せなくなる。

「うわ、あの子美人」
「設楽」

 思わず声をかけた。設楽が振り向く。

「あ、黒田くん」

 ふふ、と手を振ってこっちに小走りでかけてくる。

「実行委員、入ったって言ってたなそういや」
「そなの」
「来るなら言えよ」
「びっくりするかなーって」

 もし会えたらって思ったの、と微笑む設楽。
 背後で森田が動いた。

「あ、あの、黒田の友達!? おれ、同じクラスの森田です」
「あ、設楽です」
「森田」

 俺は森田を軽く睨んだ。

「友達じゃねー」
「え、あ、そうなの? 仲よさそうだったから」
「彼女だよ」
「……ん!?」

 森田は軽く叫んで、それから俺と設楽を交互に見た。

「お付き合い!?」
「悪いかよ」
「いや、悪くは……ええ、まじかよ、彼女クソ美人じゃん……」

 俺は森田を無視して「今からどーすんの」と設楽に聞く。

「今から生徒会の皆さんにご挨拶だよ。ちょっとミーティングみたいなのして、そこから帰宅」
「……遅くなったら迎え来てもらえよ」
「うん」

 にこり、と笑う設楽の頭を少し撫でた。

(あー、設楽だ)

 本物だ。目の前にいる。会いたかった。抱きしめたい。

(ほんと俺は煩悩しかない)

 きょとんと俺を見上げる設楽を公衆の面前で抱きしめる前に、手を振って離れた。
 プリントをもらう時に先生にまで「マジで彼女?」と聞かれた。

「……マジっすよ」
「うわぁお前どうやったの」
「いや普通に」

 答えながら俺は自分がイラついていることに気づく。

(見んなよ)

 生徒も教師も、普段女っ気がないからか、悪気なく設楽を見る。じろじろと。
 俺は憮然としながら部活に向かった。相変わらず俺は独占欲が強くて嫌になる。
しおりを挟む
感想 168

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

古堂 素央
恋愛
【完結】 「なんでわたしを突き落とさないのよ」  学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。  階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。  しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。  ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?  悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!  黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?

人生の攻略本を拾いました~彼女の行動がギャルゲー感覚で予測できるので、簡単にハーレム……とおもいきや誰かが死んでしまうらしい~

星上みかん(嬉野K)
恋愛
ギャルゲーマスターに攻略本を与えた結果。 この作品は、 【カクヨム】 【ノベルアップ+】 【アルファポリス】 に投稿しております。 ☆ 会話が苦手で、女性と楽しく話すなんて縁がない主人公。 ある日『人生の攻略本』と書かれた本を拾う。その本には学校でもトップクラスの美少女4人の攻略法が示されていた。まるで未来予知のように、彼女たちの行動が示されていたのである。 何を言えば好感度が上がるのか。どの行動をすれば告白されるのかまで、詳しく書かれていた。 これを使えば簡単に彼女およびハーレムが作れる、と浮足立つ主人公。 しかし攻略本を読み進めていくと、どうやらとあるキャラクターが死んでしまうようで。 その人の死は回避したい。しかし誰が死んでしまうのかはわからない。 ということで、全員と仲良くならないといけない。 仕方がなく、やむを得ず、本意ではないけれどハーレムを作ることになってしまう。 あくまでも人命救助に必要なだけですよ。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

処理中です...