【本編完結】セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する

にしのムラサキ

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【高校編】分岐・鹿王院樹

運命とコイバナ

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「あ、鹿王院嫁」
「鹿王院嫁、おめでとー」

 樹くんが教会で結婚宣言しちゃったその日の夜、ホテルに戻るとクラスの人たちからからかわれてしまって、ちょっと(いや、かなり!)恥ずかしい。

「でも、すごいよね」

 班の友達が言う。

「小学校から許婚なんだよね? それで好きになれるって、なんていうか運命的?」

 そんな風に言われて、私は首を傾げる。

「運命、ではないかな」

 ぽつりと答えた。
 むしろ、運命に逆らった結果? なんだろうか。よく分からない。

(運命通りというのなら、樹くんが恋をするのはなわけで)

 桜澤青花。
 でも本当に正直、思い上がりかもだけど(そうじゃないといいな)樹くんは本気で本当に私のことを好きでいてくれているから。今更、不安なんかない。

(運命なんかに負けるもんか)

 そう決めたあの春休みの病室。
 その気持ちに、ゆるぎはないーーって、結構毎日ゆるゆるで過ごしてますけどね。
 翌日はついに、樹くん念願の……なんだっけ、よくわかんない爬虫類がいる鍾乳洞の見学だった。

「ホライモリだ」

 鍾乳洞の出口、そこに展示されているホライモリだか何なんだかを、樹くんは腕を組んで眺めていた。

「ついでに爬虫類じゃない、両生類だ」
「……あのね、飼っちゃだめだよ?」
「絶滅危惧種だから……だめだ……」

 樹くんは心持ちしゅん、としてホライモリちゃんを眺めている。

「ウーパールーパーとそんなに変わんないって」
「全く違う」
「さいですか」

 私は樹くんの服の裾をぐいぐい引っ張る。

「ほら、売店、ここにぬいぐるみあるじゃん。これで我慢しなよ」
「む」

 樹くんが抱き上げたのは30センチくらいの、そこそこな大きさのホライモリぬいぐるみ。

「可愛い」
「……」

 可愛い、のかな?

(これだもんなー)

 樹くんに耳が溶けるくらい「可愛い」って言われるけど、樹くんの基準がなぁ。ホライモリだの、ウーパールーパーだの、肺魚だのだから……うん、まぁ、樹くんにとって可愛いなら、それでいいや!
 樹くんは満足気にぬいぐるみを買って袋に入れてもらっている。うん、楽しそうで何よりです!

「ていうか、樹くんの班は?」
「まだ鍾乳洞の見学をしている。俺は正直、ホライモリの観察がしたかったから先に」
「む、迷子になったりしないようにね」
「華に言われたくはないなぁ」
「なぜに!」

 その日はそこからクロアチアへ移動だった。山から海って感じだ。

「わあーい」

 ホテル前でバスから降りて、皆で歓声を上げた。綺麗な海! 緯度が高いから、この季節は20時過ぎまで日が沈まない。だから夕方と言っても、十分に明るくて私は助かってる。
 ホテルは海の目の前。明日は朝から1日自由行動で、私たちはこの海で遊ぶ予定にしていた。

「浜じゃないんだね」
「海水浴なのにね」

 海岸線沿いが遊歩道みたいになってて、そこから直接海に入るようになっていた。階段みたいになってるとこもあれば、プールの銀色の手すりみたいなのがついてて、もう直接プールみたいに入るようになってるとこもある。

「あっちは岩場みたい」
「そこはやめとこうか~」

 班のみんなで話す。

「こけたら危ないもんね!」

 そう言った私を、皆が一瞬見てにやりと笑った。な、なぜ? 私が1番こけそうだとでも……?

「アスレチックが貸し切りで出るらしいから、そこで遊ぼうよ」

 大村さんが言う。アスレチック?

「なんかほら、大きいプールとかにあるじゃん。ビニール製で、空気入ってて、すべり台とかついてるやつ」
「えっ楽しみ!」

 私たちはハイタッチをかわすーーなにそれ、すっごい楽しそう!
 夕食後、部屋でまったり(大村さんと2人部屋だ)していると、コンコンと扉が叩かれた。

「はーい?」

 ガチャリとドアを開けると、クラスの女の子が何人か立っていた。

「みんなでおしゃべりしよー、ってことになったんだけど、2人はどう?」
「あ、したいしたい」
「どこにする?」
「この部屋でもいい?」
「もちろーん」

 結構広い部屋だけど、10人弱集まるとまぁまぁの密度だ。

「お菓子たべるー!?」
「あ、それ新発売のやつ!」
「わざわざ買ってきたんだよ出国前に!」

 そんな会話をしながら、気がつけばコイバナに。

(そりゃそーだよね)

 いのち短し恋せよ少女なお年頃。
 私はおすそ分けしてもらったチョコをもぐもぐしながら、みんなの甘酸っぱい話に耳を傾ける。

「でね、親に黙ってね、こっそり泊まったの」

 きゃー! なんて歓声が上がる。うわ、懐かしいぞこのノリ!
 いま集まってるメンバーは、高等部からの……要は一般家庭組(と分けていいのかな)の子たちなので、ノリが普通だ。
 青百合の幼稚園からのエスカレーター組の子は、多分こんな話聞いたら卒倒する、と思う。何せ、天然物の深窓のご令嬢がワラワラいるのだ。私は養殖です。養殖悪役令嬢。

「じゃあさ、したの?」
「えへ、うん」

 また、きゃあと歓声が上がる。どうだった、痛かった? なんて質問が飛んで、私はやっぱり甘酸っぱく思います。はぁ可愛いなぁ若い子……って今は同じ年なんだけど(カラダだけね)。

「設楽ちゃんはさ、」

 少し、外泊してたって子が遠慮がちに聞いてくる。

「鹿王院くんと、一緒に暮らしてるんだもんね?」
「え、あ、えーと。うん」

 私は頷いた。みんな驚かないところを見ると、なんでか知ってるんですね皆さん……。

「じゃあさ、その」
「? うん」
「もうした?」
「なにを?」
「えーと」

 その子ははにかむように、笑った。それから小さく、私の耳元でぼそりと言った。え、えええーとつまりそれ、セッ……いやいやいやいや! 名称変えても同じ話だ!

「ししししてないよ!!!」

 私はぶんぶんと手を振った。いや、虎視眈々と狙ってはいますけど、あの人ガード固くてクソ真面目でして、いやそんなとこも大好きなんですけども……ってそんなことはいい。
 私の頬に熱が集まる、うう、顔真っ赤になってる。自分が当事者だと、急に恥ずかしくなる現象ってなんて言うんだろ……?
 さっきは全く上がらなかった声が、いま上がる。きゃー、じゃなくて、ざわって感じ。

「えっヤってないの!?」

 ひとりの子が言う。何ですかその言い方! ていうか、なんかオッサンみたいになってませんか皆さん!
 私はたじたじになりながら、こくりと頷いたのでした。
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