【本編完結】セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する

にしのムラサキ

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【高校編】分岐・鹿王院樹

三者三様【三人称視点】【side青花】【side華】

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【三人称視点】

 ひそやかに、集まって話す数人の女の子。揃いの白い制服。ひとりの髪は、少しだけ茶色い。

「ねえ、設楽先輩と鹿王院先輩の話、聞いた?」
「結婚式延期の話?」
「聞いた聞いた」

 そこで、少女たちはふと口を噤む。誰かが廊下を歩いていく気配がしたから。
 通り過ぎて行ったのを確認して、再び少女たちは話し始めた。

「設楽先輩、赤ちゃんが」
「えっ!」
「まじ!?」

 少女たちはそれぞれに反応する。

「大丈夫なの?」
「籍は予定通りですってー」
「ご婚約はされてたからねぇ」
「まぁねぇ」
「鹿王院先輩も就職決まってるんでしょ?」
「あ、やっぱりプロなんだ。チーム決められたの?」
「噂だけれど。練習にもよく視察に来られてるって」
「へぇ」
「そもそも学費なんかも自分で払ってたんだって」
「え、まじ? ここの学費?」
「いくらするんだろ」
「ねー。そもそも一緒に暮らしてたんでしょ? 設楽先輩とこもその辺は織り込み済みなんじゃない」
「お金持ちってわかんないねー」
「ねー」
「委員会どうすんのかな」
「一学期いっぱいで転校って聞いたけど。だから任期いっぱい」
「そっかぁ」

 茶髪の女の子が、少しだけ寂しそうにする。

「……二学期の生徒会選挙、でてみようかな」
「え、いいじゃん」
「応援するよ?」

 少女たちはふと時計を見上げる。

「あ、部活」
「ほんとだ」
「急がなきゃ」

 それぞれに立ち上がり、カバンを掴んで教室を出る。
 廊下には、春の日差しが満ちていた。
 もうすぐ、桜が咲く。

※※※


【side青花】

 偶然通りかかった廊下で、樹くんと設楽華の結婚が延期になるって聞いて、あたしは嬉しくて飛び跳ねるのを我慢するので精一杯だった。

(やっぱりね!)

 樹くんの気持ちは、あたしに傾いてるんだ!

(だって、最近たくさん話するし!)

 嬉しくて嬉しくて仕方ない!
 軽い足取りでグラウンドへ向かう。サッカー部の練習グラウンド。
 そこで樹くんの姿を見つけて、軽く手を振る。ちらりと視線が向けられて、あたしは彼の特別だってはっきり自覚した。
 あたし、愛されてる!
 空を見上げた。明るい水色の、春の空。
 ふとあたしは桜のつぼみが膨らんでることに気がつく。

(そっか)

 思わず微笑む。
 もうすぐ桜が咲くんだ。

※※※

【side華】

 つわりは全然治らないし、なんだかトイレも近くなってきたし、夜もなんだか眠れないし、精神的にも少しキツイ。

「妊娠中は多かれ少なかれ、精神的に不安定になりがちですよ」

 病院の先生はそう言うけれど。
 ふう、と私は春の霞がかった空を見上げる。

(それになぁ)

 実のところ、ちょっと樹くんとケンカ中。ケンカっていうか、一方的に私が「きー!」ってなってるだけなんだけど……でも。

(樹くんも悪いよね!?)

 うん。
 知らないスマホ持ってたんだもん。

(新しいものじゃなかったけど)

 あれはなんだったんだろ。問い詰めたら「華は心配するな」の一点張りでさ。……青花関係かなと思う。

(相談してくれたって!)

 唇をとがらせて思う。うーん、拗ねてるだけ?
 どうなんだろう。頭がごちゃごちゃして、うまくまとまらない。
 ごちゃごちゃしたまま、ぼうっと空を眺め続ける。
 すこし、暖かい風が吹いた。
 もうすぐ、桜が咲く。
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