336 / 702
【高校編】分岐・鍋島真
秘密
しおりを挟む
「……お腹痛い気がする」
同じクラスの女の子がそう呟いたのは、私が鎖骨を見せないように細心の注意を払いながら体育着に着替えてる、そんな時だった。
「? 大丈夫? 女子日?」
私は首を傾げた。
なんでかウチのクラスでは生理の日のことをgirly dayと呼ぶならわしなのです。誰が言い始めたんだっけか。
「ううん、違って。なんかこの辺。いたた」
「え、なんか変なもの食べた?」
「ちが、ええと、いたたたたたっ」
そこからは、なんだか大騒ぎになった。
「保健室の小西先生!?」
「いやこれもう救急車じゃないっ!?」
あまりの痛がりように、慌てて近くにいた先生を呼んで、救急車を呼んでもらった。
結果として、その子は急性虫垂炎。いわゆる、盲腸ってやつだった。
「これでいいかなぁ」
大村さんが持ってるのは、小さなブーケ。
「まあ定番?」
「花瓶あるかな」
「病院で貸してくれたりするけど」
「百均で買ってく?」
クラスの数人で、わいわいとその総合病院へ向かったのは、その子が運ばれてから3日後。
「思ったより元気そうじゃん」
「いやもう、大変だったんだよー!?」
病室で、その子はぷんすかと口を膨らませた。
「全身麻酔だし!」
「麻酔なしで手術のが怖いじゃん」
「そりゃそーなんだけどっ……わ、お花。ありがと」
手術もすっかり成功したっていうその子は、まぁ痛々しかったけど思ったよりは元気そう。やっぱり若いからかなー、……って身体的には私も同じ年なんだけれど。
「嬉しい! ……けど、さっき花瓶使っちゃった」
「あ、まじ?」
ベッドサイドの棚にある花瓶には、すでにお花が活けてある。
「どうしよ」
「あ、私借りてくるよ」
私はそう言って立ち上がる。エレベーターホール近くにナースステーションがあった。もしかしたら、花瓶貸してくれるかもだし。
「ごめん」
「いーよいーよ」
病室を出て、ナースステーションへ向かう。きゅっきゅというリノリウムの音。
(…….入院中思い出すなぁ)
私はぼんやりと思い返す。小学五年生直前の春休み、突然目覚めたら「悪役令嬢」になってたあの日のこと。
(まぁ、まさかこんな未来が待ってるなんて思いもしなかったけれど)
恋なのか愛なのか、それとも両方なのか違うのか、よく分からないドロドロした何か……苦しくて狂おしくて切なくて、でもそれが心地良くて気持ちいい、そんな感情でいっぱいになるヒトと出会って、執着して執着されて、それがやっぱり幸せだと思える毎日を過ごしてるだなんて。
ナースステーションは受付で、男の人が何かの手続きをしていた。
受付にはひとりだけで、花瓶くらいで奥の人たちを(なんだか忙しそう)呼びつけるのも申し訳ないし、少し待つことにした。
なんとなく、窓から外をのぞく。
(秋めいてはきたよなあ)
まだまだ暑いけれど、空の雰囲気がすっかり秋だ。
ふ、と四階のその窓から、地上を知ってる人影が通っていくことに気がつく。
「?」
私は窓ガラスに張り付くようにそのヒトを見つめた。
やけに形のいい後頭部、すっと伸びた背中にやたらと優雅な歩き方。
「……真さん」
思わず呟く。なにしてるのあの人?
(体調悪いとか?)
嫌な想像に、心臓がサッと冷えた。だって普通の風邪ならこんな病院来ないしーーと、手に持ったお菓子の箱と花束で、お見舞いに来たのだと気がつく。
ほっと息をついた。
(誰のかな)
友達とか、それこそ謎にやってるお仕事の関係とか?
(気にしても仕方ないのに)
やけに気になる。
なんだか、気になる。……オンナの勘、妻のカン? これは真さんが隠してる「なにか」だって思った。
それも、私関係だ。
だって真さん、何考えてるかわからないけれど、最近やたらと細かく報告してくるようになってきてた。
(私が泣いたからかなぁ)
手放さないでって。
留学のこと、秘密にしてた訳じゃないんだろうけれど、結果的にそんな感じになってしまった。
それに真さん的に思うことがあったのか、割と些細なことも教えてくれるようになってーーそれが、なんだか、くすぐったくて嬉しい。
だから、もし今日お見舞いの予定があったのなら初めから教えてくれているはずだ。
今日は誰々のお見舞いにいくからね、って。
(でも、それでも桜澤青花のことについては何も教えてくれない)
それは私を巻き込まないためなのか、傷つけないためなのか、分からないし詮索しようとも思わない。
思わないはずなのに、気がつけば私はエレベーター横の階段へ向かっていた。エレベーターで鉢合わせするとマズイ。階段を急いで降りて、なんとかロビーにいる真さんを見つけた。
慣れた様子で真さんはエレベーターに乗り込む。降りてきた人はいたけれど、乗ったのは真さんひとり。
閉まったエレベーターの前に立つ。
階数表示は同じリズムで登って行って、やがて「7」で止まった。
私は一度四階のナースステーションで花瓶をかりて、何食わぬ顔で友達の部屋に戻った。
「あ、ごめん、忘れ物した」
病院近くの駅で、私はそう言ってみんなから離れる。
「ついていこうかー?」
「ううん、いい! 帰ってて!」
私は小走りで病院へ戻る。
エレベーターで乗り込んで、7階へ向かった。降りたところには、予想通りナースステーションがある。
「すみません」
「はい?」
「この人なんですけど」
見せたのは、スマホの真さんと私が写ってる写真。
「こちらにお見舞い来てましたよね? 忘れ物しちゃったみたいで、時計なんですけど。見てもらえませんか」
「ああ、はい。磯ケ村さんの」
看護師さんはパタパタとナースステーションを出てきた。そこで、ちょうど通りがかった同じ年くらいの男の子に声をかける。
「あ、小野くん、ちょうどよかった。ごめんね、あのお見舞いのお兄さん、忘れ物してない?」
「鍋島さん? ええと、どうかなぁ」
そう言って、ふと視線を上げる。ばちりと目があった。
「……ハナ、さん?」
私は目を瞬く。この人が、お見舞いの相手、なのだろうか?
同じクラスの女の子がそう呟いたのは、私が鎖骨を見せないように細心の注意を払いながら体育着に着替えてる、そんな時だった。
「? 大丈夫? 女子日?」
私は首を傾げた。
なんでかウチのクラスでは生理の日のことをgirly dayと呼ぶならわしなのです。誰が言い始めたんだっけか。
「ううん、違って。なんかこの辺。いたた」
「え、なんか変なもの食べた?」
「ちが、ええと、いたたたたたっ」
そこからは、なんだか大騒ぎになった。
「保健室の小西先生!?」
「いやこれもう救急車じゃないっ!?」
あまりの痛がりように、慌てて近くにいた先生を呼んで、救急車を呼んでもらった。
結果として、その子は急性虫垂炎。いわゆる、盲腸ってやつだった。
「これでいいかなぁ」
大村さんが持ってるのは、小さなブーケ。
「まあ定番?」
「花瓶あるかな」
「病院で貸してくれたりするけど」
「百均で買ってく?」
クラスの数人で、わいわいとその総合病院へ向かったのは、その子が運ばれてから3日後。
「思ったより元気そうじゃん」
「いやもう、大変だったんだよー!?」
病室で、その子はぷんすかと口を膨らませた。
「全身麻酔だし!」
「麻酔なしで手術のが怖いじゃん」
「そりゃそーなんだけどっ……わ、お花。ありがと」
手術もすっかり成功したっていうその子は、まぁ痛々しかったけど思ったよりは元気そう。やっぱり若いからかなー、……って身体的には私も同じ年なんだけれど。
「嬉しい! ……けど、さっき花瓶使っちゃった」
「あ、まじ?」
ベッドサイドの棚にある花瓶には、すでにお花が活けてある。
「どうしよ」
「あ、私借りてくるよ」
私はそう言って立ち上がる。エレベーターホール近くにナースステーションがあった。もしかしたら、花瓶貸してくれるかもだし。
「ごめん」
「いーよいーよ」
病室を出て、ナースステーションへ向かう。きゅっきゅというリノリウムの音。
(…….入院中思い出すなぁ)
私はぼんやりと思い返す。小学五年生直前の春休み、突然目覚めたら「悪役令嬢」になってたあの日のこと。
(まぁ、まさかこんな未来が待ってるなんて思いもしなかったけれど)
恋なのか愛なのか、それとも両方なのか違うのか、よく分からないドロドロした何か……苦しくて狂おしくて切なくて、でもそれが心地良くて気持ちいい、そんな感情でいっぱいになるヒトと出会って、執着して執着されて、それがやっぱり幸せだと思える毎日を過ごしてるだなんて。
ナースステーションは受付で、男の人が何かの手続きをしていた。
受付にはひとりだけで、花瓶くらいで奥の人たちを(なんだか忙しそう)呼びつけるのも申し訳ないし、少し待つことにした。
なんとなく、窓から外をのぞく。
(秋めいてはきたよなあ)
まだまだ暑いけれど、空の雰囲気がすっかり秋だ。
ふ、と四階のその窓から、地上を知ってる人影が通っていくことに気がつく。
「?」
私は窓ガラスに張り付くようにそのヒトを見つめた。
やけに形のいい後頭部、すっと伸びた背中にやたらと優雅な歩き方。
「……真さん」
思わず呟く。なにしてるのあの人?
(体調悪いとか?)
嫌な想像に、心臓がサッと冷えた。だって普通の風邪ならこんな病院来ないしーーと、手に持ったお菓子の箱と花束で、お見舞いに来たのだと気がつく。
ほっと息をついた。
(誰のかな)
友達とか、それこそ謎にやってるお仕事の関係とか?
(気にしても仕方ないのに)
やけに気になる。
なんだか、気になる。……オンナの勘、妻のカン? これは真さんが隠してる「なにか」だって思った。
それも、私関係だ。
だって真さん、何考えてるかわからないけれど、最近やたらと細かく報告してくるようになってきてた。
(私が泣いたからかなぁ)
手放さないでって。
留学のこと、秘密にしてた訳じゃないんだろうけれど、結果的にそんな感じになってしまった。
それに真さん的に思うことがあったのか、割と些細なことも教えてくれるようになってーーそれが、なんだか、くすぐったくて嬉しい。
だから、もし今日お見舞いの予定があったのなら初めから教えてくれているはずだ。
今日は誰々のお見舞いにいくからね、って。
(でも、それでも桜澤青花のことについては何も教えてくれない)
それは私を巻き込まないためなのか、傷つけないためなのか、分からないし詮索しようとも思わない。
思わないはずなのに、気がつけば私はエレベーター横の階段へ向かっていた。エレベーターで鉢合わせするとマズイ。階段を急いで降りて、なんとかロビーにいる真さんを見つけた。
慣れた様子で真さんはエレベーターに乗り込む。降りてきた人はいたけれど、乗ったのは真さんひとり。
閉まったエレベーターの前に立つ。
階数表示は同じリズムで登って行って、やがて「7」で止まった。
私は一度四階のナースステーションで花瓶をかりて、何食わぬ顔で友達の部屋に戻った。
「あ、ごめん、忘れ物した」
病院近くの駅で、私はそう言ってみんなから離れる。
「ついていこうかー?」
「ううん、いい! 帰ってて!」
私は小走りで病院へ戻る。
エレベーターで乗り込んで、7階へ向かった。降りたところには、予想通りナースステーションがある。
「すみません」
「はい?」
「この人なんですけど」
見せたのは、スマホの真さんと私が写ってる写真。
「こちらにお見舞い来てましたよね? 忘れ物しちゃったみたいで、時計なんですけど。見てもらえませんか」
「ああ、はい。磯ケ村さんの」
看護師さんはパタパタとナースステーションを出てきた。そこで、ちょうど通りがかった同じ年くらいの男の子に声をかける。
「あ、小野くん、ちょうどよかった。ごめんね、あのお見舞いのお兄さん、忘れ物してない?」
「鍋島さん? ええと、どうかなぁ」
そう言って、ふと視線を上げる。ばちりと目があった。
「……ハナ、さん?」
私は目を瞬く。この人が、お見舞いの相手、なのだろうか?
0
あなたにおすすめの小説
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
人生の攻略本を拾いました~彼女の行動がギャルゲー感覚で予測できるので、簡単にハーレム……とおもいきや誰かが死んでしまうらしい~
星上みかん(嬉野K)
恋愛
ギャルゲーマスターに攻略本を与えた結果。
この作品は、
【カクヨム】
【ノベルアップ+】
【アルファポリス】
に投稿しております。
☆
会話が苦手で、女性と楽しく話すなんて縁がない主人公。
ある日『人生の攻略本』と書かれた本を拾う。その本には学校でもトップクラスの美少女4人の攻略法が示されていた。まるで未来予知のように、彼女たちの行動が示されていたのである。
何を言えば好感度が上がるのか。どの行動をすれば告白されるのかまで、詳しく書かれていた。
これを使えば簡単に彼女およびハーレムが作れる、と浮足立つ主人公。
しかし攻略本を読み進めていくと、どうやらとあるキャラクターが死んでしまうようで。
その人の死は回避したい。しかし誰が死んでしまうのかはわからない。
ということで、全員と仲良くならないといけない。
仕方がなく、やむを得ず、本意ではないけれどハーレムを作ることになってしまう。
あくまでも人命救助に必要なだけですよ。
断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
古堂 素央
恋愛
【完結】
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。
階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。
しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。
ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?
悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!
黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる