337 / 702
【高校編】分岐・鍋島真
チュロス【side真】
しおりを挟む
華が家に来てる日曜日のお昼過ぎ。
僕が家電量販店で買ってきたチュロスメーカーを見て、華はちょっと怒ってて可愛い。
「使わないじゃないですか! 使わないでしょう? 綿飴メーカーもすき焼き以来使ってないじゃないですか」
「え、華、嫌い? チュロス?」
「好きですよ、好きですけどっ」
ぷんすかしてる華の口にチュロス突っ込む。えい。
「むぐう」
変な声を出して、そのままもぐもぐとチュロスを食べだす華。ハムスターみたいで可愛い。
「当選祝~い」
華はこのたび、無事に生徒会役員に当選したらしい。めでたいのか、めでたくないのか。
「え、あー。ありがとうございます?」
両手にチュロスを持って口から離して、華は小首を傾げた。うん、「えろい」。
「何がですか!?」
「あれ声に出てた? いやまぁ僕のはそんな細くないけども」
「いいですか、棒状のものをなんでもそういう風に捉えていいのは中学生までです」
「僕、精神年齢14歳くらいだからなぁ」
華チャンの頬をさらりと撫でると、華はくすぐったそうに笑う。
「もう」
「お祝いしようか華チャン?」
「……なにをして?」
「そりゃあ」
パーティだけども、その前に君を食べておこう。
僕の可愛いお嫁さん。
ベッドの中で、華はやたらと分厚い結婚情報誌をぱらぱらとめくっている。
「うー、真さん和装も似合いそう……」
「自分が着たいので選べば?」
難しいカオをしてる華の髪をさらりと撫でた。
「ていうかお色直し100回くらいしていいから好きなの全部着なよ」
「いや疲れるからいいです……」
華は呆れた目をして笑う。
「僕が見たい」
「えー」
くすくすと僕のお嫁さんは笑って、僕に甘えるようにくっついてくる。
可愛くて耳を噛む。やだ、って身をよじる華は全然嫌そうじゃなくて、僕はついついまた華を組み敷いて唇を重ねる。
「もー、夏に式なのに全然なにも決まらない」
「いいよ、まだ時間あるでしょう」
「場所くらいは決めなきゃ」
軽く唇を重ねながら、そんな話をする。
夏に式、ってのは留学前、日本を立つ前に結婚式を挙げようってことになった。
本当は華の卒業を待つつもりだったけど、まあ別に招待客呼びまくるわけじゃないし、身内だけだしってことで。
「ねえ、真さん」
「なぁに」
「好き?」
きみが、こんな普通の女の子みたいな質問をするなんて。
切ない顔で。
狂おしい声で。
「好きだよ」
この僕が、普通の男みたいな答えを言うなんて。
「愛してる」
そんな陳腐な言葉を続けるなんて。
「死ぬまでそばにいる」
未来への約束なんて、死ぬほど馬鹿にしていたくせに。
そんな僕を、華はじっと見つめた。
「死んだら」
「うん」
「もう一緒にはいてくれないの?」
なんでそんな悲しげなカオをするんだろう。
「いるよ」
僕は即答する。
死後の世界だとか、そんなモノ信じてないけれど、それでも。
「ずっと」
「ずっと?」
「うん」
「死んでも?」
「来世でも。約束してたデショ?」
前京都でさ、と言うと華は小さく頷いた。
華は少しだけ安心したみたいに、僕にしがみつく。
「もう怖くない」
「うん」
なにが怖かったの、とは聞けなかった。
華が何か隠しているのは知ってるけど、でも言いたくないならいいって。
時々するオトナの目。初めてだったはずの華から感じた、他のオトコの影。やけに慣れていたキス、その他色々。
(君はなにを隠してるんだろうね)
僕に抱きついて、華は微笑む。僕はそれで何だか脳髄が溶けてしまって、何か色々とどうでも良くなってしまう。
華チャンがスヤスヤ眠ってて、でも僕にしがみついて離れなくて、僕は少しだけ苦笑いしてスマホでホテルのディナーをキャンセルする。まだ時間はあるけど、これは起きないでしょう。
ふ、と華の寝顔を見ててつい彼女の名前を呼んでしまう。
「華」
つう、と華の閉じた瞳から涙が流れた。
「華」
そっと指先で拭う。
なんの夢を見て泣いているんだろうね、きみは。
(いい夢を見ていて欲しいのに)
イヤなことなんかなにひとつ、この子に起きなければいいのに。
幸せだけが、甘いものだけがこの子のそばにあればいい。
(僕も大概だなぁ)
こんな馬鹿なことを思うなんて、願うなんてーー僕はいつからこんな風に成り下がったんだろうね?
(だけどそれが心地良い)
心地良いどころか、幸せだ。
僕は華を抱き寄せる。君が泣いてるこの夢が、今からでも素敵な夢に変わりますようにって、そんなふうに思ってただ君を抱きしめる。
どうか願わくば、その夢に僕が出ていますように、なんてダサいことまで考えてしまうから、やっぱり僕ももう大概だよなぁ、ほんとに。
僕が家電量販店で買ってきたチュロスメーカーを見て、華はちょっと怒ってて可愛い。
「使わないじゃないですか! 使わないでしょう? 綿飴メーカーもすき焼き以来使ってないじゃないですか」
「え、華、嫌い? チュロス?」
「好きですよ、好きですけどっ」
ぷんすかしてる華の口にチュロス突っ込む。えい。
「むぐう」
変な声を出して、そのままもぐもぐとチュロスを食べだす華。ハムスターみたいで可愛い。
「当選祝~い」
華はこのたび、無事に生徒会役員に当選したらしい。めでたいのか、めでたくないのか。
「え、あー。ありがとうございます?」
両手にチュロスを持って口から離して、華は小首を傾げた。うん、「えろい」。
「何がですか!?」
「あれ声に出てた? いやまぁ僕のはそんな細くないけども」
「いいですか、棒状のものをなんでもそういう風に捉えていいのは中学生までです」
「僕、精神年齢14歳くらいだからなぁ」
華チャンの頬をさらりと撫でると、華はくすぐったそうに笑う。
「もう」
「お祝いしようか華チャン?」
「……なにをして?」
「そりゃあ」
パーティだけども、その前に君を食べておこう。
僕の可愛いお嫁さん。
ベッドの中で、華はやたらと分厚い結婚情報誌をぱらぱらとめくっている。
「うー、真さん和装も似合いそう……」
「自分が着たいので選べば?」
難しいカオをしてる華の髪をさらりと撫でた。
「ていうかお色直し100回くらいしていいから好きなの全部着なよ」
「いや疲れるからいいです……」
華は呆れた目をして笑う。
「僕が見たい」
「えー」
くすくすと僕のお嫁さんは笑って、僕に甘えるようにくっついてくる。
可愛くて耳を噛む。やだ、って身をよじる華は全然嫌そうじゃなくて、僕はついついまた華を組み敷いて唇を重ねる。
「もー、夏に式なのに全然なにも決まらない」
「いいよ、まだ時間あるでしょう」
「場所くらいは決めなきゃ」
軽く唇を重ねながら、そんな話をする。
夏に式、ってのは留学前、日本を立つ前に結婚式を挙げようってことになった。
本当は華の卒業を待つつもりだったけど、まあ別に招待客呼びまくるわけじゃないし、身内だけだしってことで。
「ねえ、真さん」
「なぁに」
「好き?」
きみが、こんな普通の女の子みたいな質問をするなんて。
切ない顔で。
狂おしい声で。
「好きだよ」
この僕が、普通の男みたいな答えを言うなんて。
「愛してる」
そんな陳腐な言葉を続けるなんて。
「死ぬまでそばにいる」
未来への約束なんて、死ぬほど馬鹿にしていたくせに。
そんな僕を、華はじっと見つめた。
「死んだら」
「うん」
「もう一緒にはいてくれないの?」
なんでそんな悲しげなカオをするんだろう。
「いるよ」
僕は即答する。
死後の世界だとか、そんなモノ信じてないけれど、それでも。
「ずっと」
「ずっと?」
「うん」
「死んでも?」
「来世でも。約束してたデショ?」
前京都でさ、と言うと華は小さく頷いた。
華は少しだけ安心したみたいに、僕にしがみつく。
「もう怖くない」
「うん」
なにが怖かったの、とは聞けなかった。
華が何か隠しているのは知ってるけど、でも言いたくないならいいって。
時々するオトナの目。初めてだったはずの華から感じた、他のオトコの影。やけに慣れていたキス、その他色々。
(君はなにを隠してるんだろうね)
僕に抱きついて、華は微笑む。僕はそれで何だか脳髄が溶けてしまって、何か色々とどうでも良くなってしまう。
華チャンがスヤスヤ眠ってて、でも僕にしがみついて離れなくて、僕は少しだけ苦笑いしてスマホでホテルのディナーをキャンセルする。まだ時間はあるけど、これは起きないでしょう。
ふ、と華の寝顔を見ててつい彼女の名前を呼んでしまう。
「華」
つう、と華の閉じた瞳から涙が流れた。
「華」
そっと指先で拭う。
なんの夢を見て泣いているんだろうね、きみは。
(いい夢を見ていて欲しいのに)
イヤなことなんかなにひとつ、この子に起きなければいいのに。
幸せだけが、甘いものだけがこの子のそばにあればいい。
(僕も大概だなぁ)
こんな馬鹿なことを思うなんて、願うなんてーー僕はいつからこんな風に成り下がったんだろうね?
(だけどそれが心地良い)
心地良いどころか、幸せだ。
僕は華を抱き寄せる。君が泣いてるこの夢が、今からでも素敵な夢に変わりますようにって、そんなふうに思ってただ君を抱きしめる。
どうか願わくば、その夢に僕が出ていますように、なんてダサいことまで考えてしまうから、やっぱり僕ももう大概だよなぁ、ほんとに。
0
あなたにおすすめの小説
傷物令嬢は魔法使いの力を借りて婚約者を幸せにしたい
棗
恋愛
ローゼライト=シーラデンの額には傷がある。幼い頃、幼馴染のラルスに負わされた傷で責任を取る為に婚約が結ばれた。
しかしローゼライトは知っている。ラルスには他に愛する人がいると。この婚約はローゼライトの額に傷を負わせてしまったが為の婚約で、ラルスの気持ちが自分にはないと。
そこで、子供の時から交流のある魔法使いダヴィデにラルスとの婚約解消をしたいと依頼をするのであった。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした
珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。
色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。
バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。
※全4話。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる