怪談夜話

四条 京太郎

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鏡の私と視線

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​とある深夜、古いアパートの一室。

全身が映る大きな姿見の前で、部屋の片付けをしていた。
鏡に映るもう一人の私は、疲れた顔でヨレヨレのパジャマを着て、同じように雑巾を手にしている。
​ふと、掃除の手を止め、鏡に見入った。

​鏡像が私ではなく、私の背後、正確には部屋の隅の暗い一点を凝視していることに気づいた。
​不思議に思った私は、鏡像に問いかけるように顔を近づけると、鏡像はピクリとも動かず、その一点を見つめ続けたままだった。

私は鏡像の視線の先が気になり背後を振り返るが、そこにあるのはただの壁と、積み上げられた段ボール箱だけだ。

​もう一度鏡を見ると、鏡像はまだ私の背後を見ている。
こんな奇妙な経験をした事の無い私は、自分の鼓動が徐々に早くなるのを感じた。

​私は試しに自分自身の右手を、ゆっくりと左手で掴んだ。
​鏡像は、それに合わせて自分の右手を、左手で掴んだ。


​痛い!?


そんなに強く握りしめていないのに、右手に痛みを感じ、少し眉をひそめた。
しかし、鏡像は表情一つ変えずに、私の背後を捉えたままだ。
まるで、私の視界には入らない背後の何かを監視しているように。

​恐怖と不安が入り交じり、鏡像に向かって叫んだ。
​「何を見ているの!? 教えて!」
​鏡像はゆっくりと私に目線を合わせた。
その表情は、どこか冷たく感情を映すことなく、無感情だった。

​そして、鏡像は左手の雑巾を、ゆっくりと口元に当てた。
私の意思とは関係なく、体が勝手に動き、鏡像と同じく雑巾を口元に当てた。
​鏡像は口元を雑巾で押さえつけたまま、私自身の声で言った。


「ワタシニハ、ミエテイル」


鏡像の目が少し喜んでいるようにも見えた。
​次の瞬間、鏡像は雑巾を口に入れた。
それをマネするように私も雑巾を口に入れた。


体が動かない。


鏡像は左手の親指を、右手でカチッと逆方向に折り曲げた。
私は指に激痛が走り、口に入れた雑巾を噛み締めた。
声にならない叫びが響く。
​その時、鏡像の目は笑ってるような気がした。


次に鏡像は左手の人差し指をグニッとひねるように一周させた。
また激痛が走る。耐えられない痛み。
あまりの痛みに私は気絶してしまった。









誰にも見られていない鏡像は、折れた自分の左手を見て満足そうに微笑んだ。

そして、鏡像は左手の中指を…
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