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シリーズ盤外戦術
盤外戦術その12 矢倉さんの意外な一面
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矢倉さんが通っている道場に再びやってきていた。
彩飛は僕の前に座ると、駒箱から駒を取り出していた。なめられているなと思う。
駒箱から駒を取り出すのは上級者の役割だ。つまり『わたくしはあなたよりも格上ですのよ』ということだろう。
まぁ僕は基本的に部活で指すだけだし、矢倉さんの足下にも及ばない。おそらくは彼女よりも格下であるのは間違いないだろう。
小学生だからといってなめる訳にはいかない。研修会に入るのはほとんどが小学生のうちだ。矢倉さんのように高校になってから入るような人は少ない。
矢倉さんの場合は研修会に入っていなかっただけで、実際には道場で大人に混じって研鑽を重ねている。話にきいた限りでは師匠はもちろん兄弟子などともかなり指してきていたらしい。だからかなり鍛えられていたから例外と言える。
この子がどれくらいの棋力かはわからないけれど、これだけ自信があるということはかなりの棋力であることが想像できる。
僕の棋力はいまはウォーズで二級だ。前よりは少しあがったけれど、正直まだまだ弱い。勝てる時にはもっと上の相手にも勝てるけれど、けっこうミスして格下にやられることも多い。だから決して強くはない。
でも彼女は違うだろう。おそらく安定して強いはずだ。
「先手はゆずって差し上げますわ」
彩飛は自信満々な声で告げる。
将棋は基本的には先手が有利と言われる。将棋のハンディキャップを手合割と言うが、飛車角などの大駒を落として戦う駒落ちの他、先手を譲るというものもある。つまりハンデをつけてあげると言っているのだ。
むっとする気持ちを抑えながら、僕は深呼吸をひとつ。
「わかった。じゃあ遠慮無く先手はもらうよ」
僕は取り出された駒を並べていく。彼女もまた駒を並べていくが、かなり指し慣れているのだろう。その手はまるでよどみない。
『お願いします』
開始の挨拶を交わすと、僕はしばし考える。
僕の得意戦法は名前の通り美濃囲いに組んだ上での四間飛車。一方彼女はどうだろう。
彼女も名前の通り四間飛車を指してくるだろうか。
矢倉さんは本格的な居飛車党だが、女流棋士は振り飛車党が多い。そうすると彼女も振り飛車党である可能性は高い。相振り飛車となるだろうか。
矢倉さんが居飛車党で、僕はほとんど矢倉さんとばかり指してきている。他の部員は木村先輩は振り飛車党だけど、いちご先輩はどちらも指すオールマイティで、菊水先輩も居飛車党だ。そのため相手にするのは居飛車の方が断然多い。
今はウォーズでも指しているけれど、それでも振り飛車を相手にする方が少ない。
かといって僕が居飛車を指すのは無理だろう。矢倉さんと指しているから、矢倉なら多少は指せるかもしれないけれど、ここで急に戦法を変えても指しこなせるとは思えない。
いつもどおりの自分でいこう。
僕は決心して、7六歩。いわゆる角道を開ける手を選ぶ。
彼女は少し考えてから、向こうも角道を開けてきていた。
ここで角交換をする手もあるけれど、僕はそのまま6筋に飛車を走らせる。いつも通りの四間飛車だ。
「あら、四間飛車ですの」
彼女から意外そうな声があがる。
「ならわたくしもおつきあいしましょうか」
彩飛も同じように4筋に飛車をすべらせる。やはり四間飛車でくるのだろうか。
そこから僕は玉を右側によせる。彼女も玉を寄せていく。同じような形が進んでいく。
相振り飛車で四間飛車同士になることはあまりない。僕はどう指せばいいものか迷うものの、いつも通り美濃囲いへと向かっていく。
「さてと。それではお手並み拝見といたしましょうか」
彼女はしかし急激に3筋の歩を伸ばしていた。ここを伸ばすということは、ここから攻めてくるということだろうか。
僕は悩みながらも一つずつ相手の意図を考えながら対応していく。
しかし気がつくと僕の陣は荒らされていて、よくわからない形へと変貌していた。
それでも一矢報いたい。
僕は少し前に角交換した駒を相手陣におもいきって打ち込んでみる。ここから馬を作って、逆転の一手にしたい。そう思っていた。
しかし指した瞬間に彼女が深々とため息をもらしていた。
「その手は失着ですわね」
彩飛は冷静に角に対して銀を打ち込んでいた。
「あ!?」
僕はそのまま馬を作れるつもりだったけれど、彼女が指した手によって逃げ道を失っていた。確かに馬には成れる。でもどこに移動しても、彼女の駒が効いている。僕が指した手はただ捨てになってしまっていた。捕られないためには、角を動かさない以外の方法がない。
仕方ない。もう角は諦めて僕は飛車を進めていく。
ただそのあとはほぼいいところはなかった。
形作りのように王手をかけて、受けきられたところで投了する。
「負けました」
僕の言葉に彩飛は勝ち誇ったように笑みを浮かべていた。
「おねーさまと同じ部活ということで、少し期待しすぎましたの。二枚落ちくらいでちょうど良かったかもしれませんわね」
二枚落ちは飛車角という大駒を落とすハンディキャップだ。これはかなりの実力差がある状態でもある。
同時に普段僕は矢倉さんと平手で指していたけれど、それが実際には相当無謀な状態であることも突きつけられていた。
「こんな実力ではおねーさまにはふさわしくありませんわね。もういちど一から鍛え直すことをおすすめしますわ」
言われたい放題ではあったが、実力不足であることは身にしみていた。
そこは否定することは出来ない。
それでも僕は矢倉さんのそばにいることを選んだ。
「確かに棋力では僕は矢倉さんはおろか、君にも勝てない。今のまま何回やっても僕は君に勝てないと思う。でもだからといって僕は歩みを止めたりはしない。矢倉さんのそばにいるよ。そしていつかは彼女に追いついて見せる」
僕は彼女の目をみながらまっすぐに言い放つ。
たとえ負けようが、僕は矢倉さんから離れたりはしない。
「いまの力じゃ百年たっても追いつけませんの。いさぎよく身をひいた方が身のためですわ」
言い放つ彩飛に向かって僕は反論しようと口を開く。いや開こうと思った時だった。
「彩飛ちゃん。確かに美濃くんは彩飛ちゃんほど強くはないです。でも美濃くんのおかげで、美濃くんと一緒に大会に出られたからこそ、私は迷っていた女流棋士への道へ進むことを選べたんです。だからふさわしいとか、ふさわしくないとかじゃなくて、私が美濃くんじゃなきゃダメなんです。私が美濃くんを必要としているんですよ」
それまで黙って見守っていた矢倉さんが口を開いていた。
優しい顔つきではあったものの、有無を言わせない迫力があった。
そして矢倉さんの言葉に僕は照れを隠せない。ここまで言ってもらえるなんて、彼氏冥利に尽きるというか。そんな風に考えてくれていただなんて、全く気がつかなかった。
「美濃くんのことをこれ以上に悪くいうようなら、私は彩飛ちゃんとは縁を切ります」
「お、おねーさまぁ……そんなぁ」
絶縁宣言に彩飛の顔が蒼白に変わる。そんなことを言われるとは思ってもみなかったようである。いやむしろ僕の方こそ驚いていたかもしれない。あの大人しい矢倉さんがこんな風に強く言うだなんて、想像もしていなかった。
「もちろん美濃くんにお詫びして、これからは仲良くしてくれるというなら別です。どうしますか?」
「う……うう。ご。ごめんなさい、おねーさま」
「私じゃなくて、美濃くんに謝ってください」
「ご、ごめんなさい」
彩飛は僕に向かって深々と頭を下げる。
よほど矢倉さんに縁を切られるのが嫌だったようだ。
「はい。いいですよ。じゃあこれからは仲良くしてくださいね」
矢倉さんがにっこりと笑う。
でもその笑顔がどこか恐ろしい。矢倉さんにはこんな一面もあったんだなぁと思う。
「わかりましたの」
彩飛はうなづいて、それから僕へとおずおずと手を差し出す。仲直りの握手ということだろうか。
僕はその手をとってぎゅっと握手を交わす。
彩飛はおずおずと僕の方をみて、それからため息をひとつ漏らした。
「くそむしにざんこくなしんじつをつげるなんて、たしかに失礼でしたわ……。つぎからはオブラートに包んでお話しますわ」
「……お前。反省してないだろ?」
「あらしつれい。おもわず本音がででしまいましたの。わたくしお世辞がにがてでして」
「あのなぁ。……はぁ。まぁいいよ。生意気だけど、お前なりに矢倉さんを心配していたんだろうし」
僕もため息をもらす。
何にしてもストーカーの正体はこの子だったわけで、特に危険が迫っている訳ではないだろう。それなら僕も安心出来る。
「これにこりたら、ストーカーはやめろよ」
「まぁ、失礼ですの。わたくしストーカーなどしてませんわ」
ぶいと顔を背けていた。
まぁ、でもこうして見ていると年相応で可愛いかもしれない。
こうして一つの幕が下りたと思う。
それからしばらくは矢倉さんは道場で師匠をはじめいろんな人と指して訓練を続けていて、僕もついでに棋力が近い相手と指してみていた。
やがてすっかり日も暮れてしまっていた。
彩飛は小学生らしく、とっくに帰宅してしまっていたし他の人もほとんどいなくなっていた。
「美濃くん。今日はありがとうございました。そろそろ帰りましょう」
「はい。わかりました。家まで送りますよ」
「はい。ありがとうございます」
そうして僕達は帰路につく。
すっかり辺りは暗い。この時間だと、この辺は人通りもさほど多くないようだ。
「ストーカーの正体が小学生の女の子だなんて、びっくりしましたね」
「そうですね。彩飛ちゃんがあんなに慕ってくれていただなんて、気がつきませんでした」
二人で彩飛のことについて話していた。
でもおかげてこうして二人きりの時間を過ごせるというのは、楽しくて良かったと思う。
そんな事を思っていた僕は完全に浮かれていたと思う。
だから。気がつかなかった。
彩飛は僕の前に座ると、駒箱から駒を取り出していた。なめられているなと思う。
駒箱から駒を取り出すのは上級者の役割だ。つまり『わたくしはあなたよりも格上ですのよ』ということだろう。
まぁ僕は基本的に部活で指すだけだし、矢倉さんの足下にも及ばない。おそらくは彼女よりも格下であるのは間違いないだろう。
小学生だからといってなめる訳にはいかない。研修会に入るのはほとんどが小学生のうちだ。矢倉さんのように高校になってから入るような人は少ない。
矢倉さんの場合は研修会に入っていなかっただけで、実際には道場で大人に混じって研鑽を重ねている。話にきいた限りでは師匠はもちろん兄弟子などともかなり指してきていたらしい。だからかなり鍛えられていたから例外と言える。
この子がどれくらいの棋力かはわからないけれど、これだけ自信があるということはかなりの棋力であることが想像できる。
僕の棋力はいまはウォーズで二級だ。前よりは少しあがったけれど、正直まだまだ弱い。勝てる時にはもっと上の相手にも勝てるけれど、けっこうミスして格下にやられることも多い。だから決して強くはない。
でも彼女は違うだろう。おそらく安定して強いはずだ。
「先手はゆずって差し上げますわ」
彩飛は自信満々な声で告げる。
将棋は基本的には先手が有利と言われる。将棋のハンディキャップを手合割と言うが、飛車角などの大駒を落として戦う駒落ちの他、先手を譲るというものもある。つまりハンデをつけてあげると言っているのだ。
むっとする気持ちを抑えながら、僕は深呼吸をひとつ。
「わかった。じゃあ遠慮無く先手はもらうよ」
僕は取り出された駒を並べていく。彼女もまた駒を並べていくが、かなり指し慣れているのだろう。その手はまるでよどみない。
『お願いします』
開始の挨拶を交わすと、僕はしばし考える。
僕の得意戦法は名前の通り美濃囲いに組んだ上での四間飛車。一方彼女はどうだろう。
彼女も名前の通り四間飛車を指してくるだろうか。
矢倉さんは本格的な居飛車党だが、女流棋士は振り飛車党が多い。そうすると彼女も振り飛車党である可能性は高い。相振り飛車となるだろうか。
矢倉さんが居飛車党で、僕はほとんど矢倉さんとばかり指してきている。他の部員は木村先輩は振り飛車党だけど、いちご先輩はどちらも指すオールマイティで、菊水先輩も居飛車党だ。そのため相手にするのは居飛車の方が断然多い。
今はウォーズでも指しているけれど、それでも振り飛車を相手にする方が少ない。
かといって僕が居飛車を指すのは無理だろう。矢倉さんと指しているから、矢倉なら多少は指せるかもしれないけれど、ここで急に戦法を変えても指しこなせるとは思えない。
いつもどおりの自分でいこう。
僕は決心して、7六歩。いわゆる角道を開ける手を選ぶ。
彼女は少し考えてから、向こうも角道を開けてきていた。
ここで角交換をする手もあるけれど、僕はそのまま6筋に飛車を走らせる。いつも通りの四間飛車だ。
「あら、四間飛車ですの」
彼女から意外そうな声があがる。
「ならわたくしもおつきあいしましょうか」
彩飛も同じように4筋に飛車をすべらせる。やはり四間飛車でくるのだろうか。
そこから僕は玉を右側によせる。彼女も玉を寄せていく。同じような形が進んでいく。
相振り飛車で四間飛車同士になることはあまりない。僕はどう指せばいいものか迷うものの、いつも通り美濃囲いへと向かっていく。
「さてと。それではお手並み拝見といたしましょうか」
彼女はしかし急激に3筋の歩を伸ばしていた。ここを伸ばすということは、ここから攻めてくるということだろうか。
僕は悩みながらも一つずつ相手の意図を考えながら対応していく。
しかし気がつくと僕の陣は荒らされていて、よくわからない形へと変貌していた。
それでも一矢報いたい。
僕は少し前に角交換した駒を相手陣におもいきって打ち込んでみる。ここから馬を作って、逆転の一手にしたい。そう思っていた。
しかし指した瞬間に彼女が深々とため息をもらしていた。
「その手は失着ですわね」
彩飛は冷静に角に対して銀を打ち込んでいた。
「あ!?」
僕はそのまま馬を作れるつもりだったけれど、彼女が指した手によって逃げ道を失っていた。確かに馬には成れる。でもどこに移動しても、彼女の駒が効いている。僕が指した手はただ捨てになってしまっていた。捕られないためには、角を動かさない以外の方法がない。
仕方ない。もう角は諦めて僕は飛車を進めていく。
ただそのあとはほぼいいところはなかった。
形作りのように王手をかけて、受けきられたところで投了する。
「負けました」
僕の言葉に彩飛は勝ち誇ったように笑みを浮かべていた。
「おねーさまと同じ部活ということで、少し期待しすぎましたの。二枚落ちくらいでちょうど良かったかもしれませんわね」
二枚落ちは飛車角という大駒を落とすハンディキャップだ。これはかなりの実力差がある状態でもある。
同時に普段僕は矢倉さんと平手で指していたけれど、それが実際には相当無謀な状態であることも突きつけられていた。
「こんな実力ではおねーさまにはふさわしくありませんわね。もういちど一から鍛え直すことをおすすめしますわ」
言われたい放題ではあったが、実力不足であることは身にしみていた。
そこは否定することは出来ない。
それでも僕は矢倉さんのそばにいることを選んだ。
「確かに棋力では僕は矢倉さんはおろか、君にも勝てない。今のまま何回やっても僕は君に勝てないと思う。でもだからといって僕は歩みを止めたりはしない。矢倉さんのそばにいるよ。そしていつかは彼女に追いついて見せる」
僕は彼女の目をみながらまっすぐに言い放つ。
たとえ負けようが、僕は矢倉さんから離れたりはしない。
「いまの力じゃ百年たっても追いつけませんの。いさぎよく身をひいた方が身のためですわ」
言い放つ彩飛に向かって僕は反論しようと口を開く。いや開こうと思った時だった。
「彩飛ちゃん。確かに美濃くんは彩飛ちゃんほど強くはないです。でも美濃くんのおかげで、美濃くんと一緒に大会に出られたからこそ、私は迷っていた女流棋士への道へ進むことを選べたんです。だからふさわしいとか、ふさわしくないとかじゃなくて、私が美濃くんじゃなきゃダメなんです。私が美濃くんを必要としているんですよ」
それまで黙って見守っていた矢倉さんが口を開いていた。
優しい顔つきではあったものの、有無を言わせない迫力があった。
そして矢倉さんの言葉に僕は照れを隠せない。ここまで言ってもらえるなんて、彼氏冥利に尽きるというか。そんな風に考えてくれていただなんて、全く気がつかなかった。
「美濃くんのことをこれ以上に悪くいうようなら、私は彩飛ちゃんとは縁を切ります」
「お、おねーさまぁ……そんなぁ」
絶縁宣言に彩飛の顔が蒼白に変わる。そんなことを言われるとは思ってもみなかったようである。いやむしろ僕の方こそ驚いていたかもしれない。あの大人しい矢倉さんがこんな風に強く言うだなんて、想像もしていなかった。
「もちろん美濃くんにお詫びして、これからは仲良くしてくれるというなら別です。どうしますか?」
「う……うう。ご。ごめんなさい、おねーさま」
「私じゃなくて、美濃くんに謝ってください」
「ご、ごめんなさい」
彩飛は僕に向かって深々と頭を下げる。
よほど矢倉さんに縁を切られるのが嫌だったようだ。
「はい。いいですよ。じゃあこれからは仲良くしてくださいね」
矢倉さんがにっこりと笑う。
でもその笑顔がどこか恐ろしい。矢倉さんにはこんな一面もあったんだなぁと思う。
「わかりましたの」
彩飛はうなづいて、それから僕へとおずおずと手を差し出す。仲直りの握手ということだろうか。
僕はその手をとってぎゅっと握手を交わす。
彩飛はおずおずと僕の方をみて、それからため息をひとつ漏らした。
「くそむしにざんこくなしんじつをつげるなんて、たしかに失礼でしたわ……。つぎからはオブラートに包んでお話しますわ」
「……お前。反省してないだろ?」
「あらしつれい。おもわず本音がででしまいましたの。わたくしお世辞がにがてでして」
「あのなぁ。……はぁ。まぁいいよ。生意気だけど、お前なりに矢倉さんを心配していたんだろうし」
僕もため息をもらす。
何にしてもストーカーの正体はこの子だったわけで、特に危険が迫っている訳ではないだろう。それなら僕も安心出来る。
「これにこりたら、ストーカーはやめろよ」
「まぁ、失礼ですの。わたくしストーカーなどしてませんわ」
ぶいと顔を背けていた。
まぁ、でもこうして見ていると年相応で可愛いかもしれない。
こうして一つの幕が下りたと思う。
それからしばらくは矢倉さんは道場で師匠をはじめいろんな人と指して訓練を続けていて、僕もついでに棋力が近い相手と指してみていた。
やがてすっかり日も暮れてしまっていた。
彩飛は小学生らしく、とっくに帰宅してしまっていたし他の人もほとんどいなくなっていた。
「美濃くん。今日はありがとうございました。そろそろ帰りましょう」
「はい。わかりました。家まで送りますよ」
「はい。ありがとうございます」
そうして僕達は帰路につく。
すっかり辺りは暗い。この時間だと、この辺は人通りもさほど多くないようだ。
「ストーカーの正体が小学生の女の子だなんて、びっくりしましたね」
「そうですね。彩飛ちゃんがあんなに慕ってくれていただなんて、気がつきませんでした」
二人で彩飛のことについて話していた。
でもおかげてこうして二人きりの時間を過ごせるというのは、楽しくて良かったと思う。
そんな事を思っていた僕は完全に浮かれていたと思う。
だから。気がつかなかった。
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