150 / 151
<第一王子>ルート
3<騎士A>視点
しおりを挟む
「おいおい、お父様って、呼べって言っているだろ」
「他人の目があるときは、それなりの呼び方してやってるだろう。それより何の用だ? 居座っても何もださねえぞ」
眉を下げて、困ったような笑みを浮かべている。まるで本気で悲しんでいるとでも、いいたげな面だ。
中肉中背、そこらに普通にいるおっさんに見える。
―― 本当にそうだったら、どれだけ良いか
普通とは、ほど遠い。王家の影であり闇でもある。ファンブルグの前当主、名目上は俺の父親となっている男だ。
「冷たい奴だ。それより相変わらず殺風景な部屋だな。それなりの給金は、出てるんだ。絵の一つでも、飾ったらどうだ?」
「そんなもん腹も膨れねえし、何の役にもたたないだろうが」
せっかくの休みに、見ていたい顔じゃない。背を向けて歩き出すと、後ろから苛つく声が聞こえる。
「で、何しに来たんだよ」
「平穏が、続いているからな。お前の腕が鈍っていないか、心配したんだ」
さっさと出て行けと言おうとして、無駄なことだと思い直し止める。
このおっさんは、俺の言うことなんざ聞かない。
「平穏なのは、良いことだろ」
「表向きはな。それに安心して、色々と鈍ってるんじゃないかと案じているんだ。親心と言うやつだな」
思わず鼻で、笑いそうになる。俺とおっさんは、対外的には親子だ。けどそんな関係では、一切ない。
「俺に親はいないが、あんたの行動と思惑に親心って言葉が当てはまらないことくらい分かる」
「親がいないのに、分かるものか? 俺には分からんが」
「分からないなら、使うな」
「いいだろう。使ったことがないから、言ってみたかったんだ」
―― とんでもなく無駄な時間だな
好き好んで見たい顔じゃない。関わりたくもない。なんでそんな相手に限って、向こうから来るのか。なんの意味もない会話が、頭の痛みを連れてくる。
「暇を持て余してるなら、当主に復帰したらどうだ」
「せっかく息子に押しつけられたのに、これ以上面倒な事をしてたまるか。俺は優雅な老後を、過ごすんだ」
まだ問題なくやれるだろうに、息子に家を譲って隠居生活をしている。そんなだから無駄で意味がなくて、しようもないことに俺の所を尋ねてきやがったんだろう。ならさっさと復帰しちまえと思うが、そう簡単にいくものじゃない。これも意味のない会話だ。
「あっそ、優雅に終われると良いな」
「そこらは、抜かりはないさ」
溜息と共に言葉をはけば、目を細めて口角を上げる。その顔が路地裏で俺を見下ろしてきた表情と重なり、眉間にシワを寄せるはめになった。
「よおし、せっかく来たんだ。鍛え直してやろう。さっきのは少し反応が、遅かったからな」
「わざと遅くしたんだよ。同時に術をぶつけたら、家が壊れるだろうが」
―― せっかくの休みが……
王子のための買い物と、おっさんの相手で終わってしまう。
―― 俺、なにかしたっけ?
休みの日に主のために、自分の時間を使って買い物をに行く。めっちゃ善行だよな。なんでその後に、こいつの相手をするはめになってるんだ。
家に戻らないで、外でなんか食べてくれば良かったか? さすがに遅くなれば、おっさんも帰ってただろう。帰ってくる途中に、良い感じの店があったんだよな。寄ってけばよかった。
―― ああ、運が悪い
今更か。そもそも、おっさんに出会ったこと自体が、運が悪い。
路地裏でおっさんの財布を、すろうとしたのが運の尽きだ。
「なんで久しぶり会えたというのに、溜息をつくんだ」
「運のなさを、嘆いてたんだよ。なんであんとき、アンタにあっちまったかってね」
「何を言ってる。俺に出会えたんだぞ。運は極上だろう」
煽ってるわけでもなく本気で言っているところが、苛つきを増幅させる。
「それに俺に会えなきゃ、リシュワルド様とも関わることはなかったぞ。路地裏の汚ねえガキが、王族と出会えるわけがない。感謝しろ、俺に。なんて息子思いの父親だろうな」
―― 感謝、感謝ねえ
殺意を、抱いたことはある。実際に何度も、殺してやろう思った。思うだけじゃなく実行に移している。圧倒的な実力差の元、何度も俺の方が死にかけるはめになった。
おっさんに覚えたのは、殺意に憎悪に嫌悪に―― 感謝なんて抱いたことねえな
「なら実の子供には、父親らしくしてこいよ」
「父親らしい? ふむ具体的に、言ってくれ」
―― 至極、アホらしくなる
実際に拾われなければ、王子と会うこともなくくたばっていただろう。それは事実だ。けれど俺は、こいつに感謝なんて思いを一生抱くことはない気がする。
―― んなもん抱いてたまるか
考えるのも馬鹿らしくなって、話を逸らした。
「はあ? 俺が、知るか」
「言い出したのは、お前だろう。お前の言う父親らしいというのは、なにか教えてくれ」
「俺は父親どころか、母親の顔も知らねえの。分かるわけないだろうが」
親というものの顔を知らない。いなきゃ生まれないんだろうが、物心ついたときには一人だった。言葉では知ってはいるが、未知の存在。そんものの『らしい』が、何か分かる訳がない。
「ふむ、知らない同士の不毛な会話という奴だな」
「アンタとの会話は、全部不毛だよ」
「ふむ、なら少し建設的な話をしようか。レイザードと言ったか」
首を傾げたおっさんが、さらに苛立ちを連れてくる。
これは何時まで、続くんだ。少しくらい家が壊れても良いから、追い出すか。
そう考えたとき聞こえてきた名に、全ての音が消えたような錯覚を覚えた。
「他人の目があるときは、それなりの呼び方してやってるだろう。それより何の用だ? 居座っても何もださねえぞ」
眉を下げて、困ったような笑みを浮かべている。まるで本気で悲しんでいるとでも、いいたげな面だ。
中肉中背、そこらに普通にいるおっさんに見える。
―― 本当にそうだったら、どれだけ良いか
普通とは、ほど遠い。王家の影であり闇でもある。ファンブルグの前当主、名目上は俺の父親となっている男だ。
「冷たい奴だ。それより相変わらず殺風景な部屋だな。それなりの給金は、出てるんだ。絵の一つでも、飾ったらどうだ?」
「そんなもん腹も膨れねえし、何の役にもたたないだろうが」
せっかくの休みに、見ていたい顔じゃない。背を向けて歩き出すと、後ろから苛つく声が聞こえる。
「で、何しに来たんだよ」
「平穏が、続いているからな。お前の腕が鈍っていないか、心配したんだ」
さっさと出て行けと言おうとして、無駄なことだと思い直し止める。
このおっさんは、俺の言うことなんざ聞かない。
「平穏なのは、良いことだろ」
「表向きはな。それに安心して、色々と鈍ってるんじゃないかと案じているんだ。親心と言うやつだな」
思わず鼻で、笑いそうになる。俺とおっさんは、対外的には親子だ。けどそんな関係では、一切ない。
「俺に親はいないが、あんたの行動と思惑に親心って言葉が当てはまらないことくらい分かる」
「親がいないのに、分かるものか? 俺には分からんが」
「分からないなら、使うな」
「いいだろう。使ったことがないから、言ってみたかったんだ」
―― とんでもなく無駄な時間だな
好き好んで見たい顔じゃない。関わりたくもない。なんでそんな相手に限って、向こうから来るのか。なんの意味もない会話が、頭の痛みを連れてくる。
「暇を持て余してるなら、当主に復帰したらどうだ」
「せっかく息子に押しつけられたのに、これ以上面倒な事をしてたまるか。俺は優雅な老後を、過ごすんだ」
まだ問題なくやれるだろうに、息子に家を譲って隠居生活をしている。そんなだから無駄で意味がなくて、しようもないことに俺の所を尋ねてきやがったんだろう。ならさっさと復帰しちまえと思うが、そう簡単にいくものじゃない。これも意味のない会話だ。
「あっそ、優雅に終われると良いな」
「そこらは、抜かりはないさ」
溜息と共に言葉をはけば、目を細めて口角を上げる。その顔が路地裏で俺を見下ろしてきた表情と重なり、眉間にシワを寄せるはめになった。
「よおし、せっかく来たんだ。鍛え直してやろう。さっきのは少し反応が、遅かったからな」
「わざと遅くしたんだよ。同時に術をぶつけたら、家が壊れるだろうが」
―― せっかくの休みが……
王子のための買い物と、おっさんの相手で終わってしまう。
―― 俺、なにかしたっけ?
休みの日に主のために、自分の時間を使って買い物をに行く。めっちゃ善行だよな。なんでその後に、こいつの相手をするはめになってるんだ。
家に戻らないで、外でなんか食べてくれば良かったか? さすがに遅くなれば、おっさんも帰ってただろう。帰ってくる途中に、良い感じの店があったんだよな。寄ってけばよかった。
―― ああ、運が悪い
今更か。そもそも、おっさんに出会ったこと自体が、運が悪い。
路地裏でおっさんの財布を、すろうとしたのが運の尽きだ。
「なんで久しぶり会えたというのに、溜息をつくんだ」
「運のなさを、嘆いてたんだよ。なんであんとき、アンタにあっちまったかってね」
「何を言ってる。俺に出会えたんだぞ。運は極上だろう」
煽ってるわけでもなく本気で言っているところが、苛つきを増幅させる。
「それに俺に会えなきゃ、リシュワルド様とも関わることはなかったぞ。路地裏の汚ねえガキが、王族と出会えるわけがない。感謝しろ、俺に。なんて息子思いの父親だろうな」
―― 感謝、感謝ねえ
殺意を、抱いたことはある。実際に何度も、殺してやろう思った。思うだけじゃなく実行に移している。圧倒的な実力差の元、何度も俺の方が死にかけるはめになった。
おっさんに覚えたのは、殺意に憎悪に嫌悪に―― 感謝なんて抱いたことねえな
「なら実の子供には、父親らしくしてこいよ」
「父親らしい? ふむ具体的に、言ってくれ」
―― 至極、アホらしくなる
実際に拾われなければ、王子と会うこともなくくたばっていただろう。それは事実だ。けれど俺は、こいつに感謝なんて思いを一生抱くことはない気がする。
―― んなもん抱いてたまるか
考えるのも馬鹿らしくなって、話を逸らした。
「はあ? 俺が、知るか」
「言い出したのは、お前だろう。お前の言う父親らしいというのは、なにか教えてくれ」
「俺は父親どころか、母親の顔も知らねえの。分かるわけないだろうが」
親というものの顔を知らない。いなきゃ生まれないんだろうが、物心ついたときには一人だった。言葉では知ってはいるが、未知の存在。そんものの『らしい』が、何か分かる訳がない。
「ふむ、知らない同士の不毛な会話という奴だな」
「アンタとの会話は、全部不毛だよ」
「ふむ、なら少し建設的な話をしようか。レイザードと言ったか」
首を傾げたおっさんが、さらに苛立ちを連れてくる。
これは何時まで、続くんだ。少しくらい家が壊れても良いから、追い出すか。
そう考えたとき聞こえてきた名に、全ての音が消えたような錯覚を覚えた。
103
あなたにおすすめの小説
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
美形令息の犬はご主人様を救いたい
皮
BL
シエノークは美しき侯爵令息ルスランの忠実なしもべであり、犬だった。ルスランを盲信し、王家に叛逆するルスランを支え、ルスランが王家の騎士に斬られて命を落とすまで傍にいた。その後、シエノークもまた命を落とし、──ベッドの上で目を覚ました。9歳に戻ったシエノークはご主人様であるルスランの破滅を防ぐことを決意する。/美形令息×美形令息の犬
【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?
北川晶
BL
BLゲームじゃないのに、嫌われから溺愛って嘘でしょ? 不遇の若き王×モブの、ハートフル、ファンタジー、ちょっとサスペンスな、大逆転ラブです。
乙女ゲーム『愛の力で王(キング)を救え!』通称アイキンの中に異世界転生した九郎は、顔の見えない仕立て屋のモブキャラ、クロウ(かろうじて名前だけはあったよ)に生まれ変わる。
子供のときに石をぶつけられ、前世のことを思い出したが。顔のないモブキャラになったところで、どうにもできないよね? でも。いざ、孤島にそびえる王城に、王の婚礼衣装を作るため、仕立て屋として上がったら…王を助ける人がいないんですけどぉ?
本編完結。そして、続編「前作はモブ、でも続編は悪役令嬢ポジなんですけどぉ?」も同時収録。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる