BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

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<第一王子>ルート

3<騎士A>視点

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「おいおい、お父様って、呼べって言っているだろ」
「他人の目があるときは、それなりの呼び方してやってるだろう。それより何の用だ? 居座っても何もださねえぞ」
 眉を下げて、困ったような笑みを浮かべている。まるで本気で悲しんでいるとでも、いいたげな面だ。
 中肉中背、そこらに普通にいるおっさんに見える。
 ―― 本当にそうだったら、どれだけ良いか
 普通とは、ほど遠い。王家の影であり闇でもある。ファンブルグの前当主、名目上は俺の父親となっている男だ。

「冷たい奴だ。それより相変わらず殺風景な部屋だな。それなりの給金は、出てるんだ。絵の一つでも、飾ったらどうだ?」
「そんなもん腹も膨れねえし、何の役にもたたないだろうが」
 せっかくの休みに、見ていたい顔じゃない。背を向けて歩き出すと、後ろから苛つく声が聞こえる。
「で、何しに来たんだよ」
「平穏が、続いているからな。お前の腕が鈍っていないか、心配したんだ」
 さっさと出て行けと言おうとして、無駄なことだと思い直し止める。
 このおっさんは、俺の言うことなんざ聞かない。

「平穏なのは、良いことだろ」
「表向きはな。それに安心して、色々と鈍ってるんじゃないかと案じているんだ。親心と言うやつだな」
 思わず鼻で、笑いそうになる。俺とおっさんは、対外的には親子だ。けどそんな関係では、一切ない。

「俺に親はいないが、あんたの行動と思惑に親心って言葉が当てはまらないことくらい分かる」 
「親がいないのに、分かるものか? 俺には分からんが」
「分からないなら、使うな」
「いいだろう。使ったことがないから、言ってみたかったんだ」
 ―― とんでもなく無駄な時間だな
 好き好んで見たい顔じゃない。関わりたくもない。なんでそんな相手に限って、向こうから来るのか。なんの意味もない会話が、頭の痛みを連れてくる。

「暇を持て余してるなら、当主に復帰したらどうだ」
「せっかく息子に押しつけられたのに、これ以上面倒な事をしてたまるか。俺は優雅な老後を、過ごすんだ」
 まだ問題なくやれるだろうに、息子に家を譲って隠居生活をしている。そんなだから無駄で意味がなくて、しようもないことに俺の所を尋ねてきやがったんだろう。ならさっさと復帰しちまえと思うが、そう簡単にいくものじゃない。これも意味のない会話だ。

「あっそ、優雅に終われると良いな」
「そこらは、抜かりはないさ」
 溜息と共に言葉をはけば、目を細めて口角を上げる。その顔が路地裏で俺を見下ろしてきた表情と重なり、眉間にシワを寄せるはめになった。

「よおし、せっかく来たんだ。鍛え直してやろう。さっきのは少し反応が、遅かったからな」
「わざと遅くしたんだよ。同時に術をぶつけたら、家が壊れるだろうが」
 ―― せっかくの休みが……
 王子のための買い物と、おっさんの相手で終わってしまう。
 ―― 俺、なにかしたっけ?
 休みの日に主のために、自分の時間を使って買い物をに行く。めっちゃ善行だよな。なんでその後に、こいつの相手をするはめになってるんだ。
 家に戻らないで、外でなんか食べてくれば良かったか? さすがに遅くなれば、おっさんも帰ってただろう。帰ってくる途中に、良い感じの店があったんだよな。寄ってけばよかった。

 ―― ああ、運が悪い
 今更か。そもそも、おっさんに出会ったこと自体が、運が悪い。
 路地裏でおっさんの財布を、すろうとしたのが運の尽きだ。

「なんで久しぶり会えたというのに、溜息をつくんだ」
「運のなさを、嘆いてたんだよ。なんであんとき、アンタにあっちまったかってね」
「何を言ってる。俺に出会えたんだぞ。運は極上だろう」
 煽ってるわけでもなく本気で言っているところが、苛つきを増幅させる。
「それに俺に会えなきゃ、リシュワルド様とも関わることはなかったぞ。路地裏の汚ねえガキが、王族と出会えるわけがない。感謝しろ、俺に。なんて息子思いの父親だろうな」
 ―― 感謝、感謝ねえ
 殺意を、抱いたことはある。実際に何度も、殺してやろう思った。思うだけじゃなく実行に移している。圧倒的な実力差の元、何度も俺の方が死にかけるはめになった。
 おっさんに覚えたのは、殺意に憎悪に嫌悪に―― 感謝なんて抱いたことねえな

「なら実の子供には、父親らしくしてこいよ」
「父親らしい? ふむ具体的に、言ってくれ」
 ―― 至極、アホらしくなる
 実際に拾われなければ、王子と会うこともなくくたばっていただろう。それは事実だ。けれど俺は、こいつに感謝なんて思いを一生抱くことはない気がする。
 ―― んなもん抱いてたまるか
 考えるのも馬鹿らしくなって、話を逸らした。

「はあ? 俺が、知るか」
「言い出したのは、お前だろう。お前の言う父親らしいというのは、なにか教えてくれ」
「俺は父親どころか、母親の顔も知らねえの。分かるわけないだろうが」
 親というものの顔を知らない。いなきゃ生まれないんだろうが、物心ついたときには一人だった。言葉では知ってはいるが、未知の存在。そんものの『らしい』が、何か分かる訳がない。

「ふむ、知らない同士の不毛な会話という奴だな」
「アンタとの会話は、全部不毛だよ」
「ふむ、なら少し建設的な話をしようか。レイザードと言ったか」
 首を傾げたおっさんが、さらに苛立ちを連れてくる。
 これは何時まで、続くんだ。少しくらい家が壊れても良いから、追い出すか。
 そう考えたとき聞こえてきた名に、全ての音が消えたような錯覚を覚えた。
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