112 / 151
<シーディス>ルート
1
しおりを挟む
「ふあっ……」
あくびをかみ殺して、目尻に貯まった涙を拭う。
―― 眠い
夕べというか、最近の睡眠時間が短いせいだ。意味も無く寝るのが、遅いわけじゃない。少しでも早く借金を返すために、氷の置物を大量に造っているからだ。
今日は学園が、休みの日だから頑張って商売にいそしんできた。おかげさまで、完売している。壊滅的に接客業に、向かない顔面だがなんとかなっている。きっとお客さんに、寛容な人が多いんだろう。
―― まずいな
油断をすると、瞼が落ちてくる。家に帰るまでに、もちそうにない。どこか眠れるとこはないかと、考えたがあるわけもない。往来で寝たら迷惑だし、不用心にもほどがある。
―― それに、盗まれたら大変だ
今日の売上金が入っているバックのひもを締め直す。
一度シーディスさんに、お金を返し損なってから渡せていない。忙しい人だからちょこちょこと返しに行くのも、迷惑だろうとある程度貯まるまではと控えていた。
今日の売上を合わせたら、そこそこの額になる。ようやっと返しに行けるんだ。眠気に身を任せて、失うわけにはいかない。
眠らないように顔の周りに、薄い氷の膜を作って温度を下げていたが効果がまったくない。意味が無いから術を解いて、頭を振る。
シーディスさんとロイのあれやこれを、妄想して意識を保とうと努力したのだがそれも限界が近いらしい。普段なら妄想で、眠気が吹っ飛ぶのだがよほど睡眠不足がたたっているようだ。またあくびが出て、目尻に溜まった涙がこぼれた。
「っつ!」
いきなり顔面に、衝撃が走る。鈍い音のあとに、鼻が痛みを訴えてくる。どうやら低いなりに高さはあるから、一番ダメージがあったようだ。
何が起きたのか痛みと衝撃で理解できなかったが、一歩下がって状況が把握できた。どうやら壁沿いに歩いていたせいで、開いた扉にぶつかったらしい。
「悪い。怪我は……」
「平気です」
扉の向こうからかけれた声は、聞き覚えのあるものだった。
何という偶然だろう。そこにいたのは、シーディスさんである。
鼻を押さえながら痛くないと言っても、説得力が無いから手はした荷下ろして返した。
なぜか目を見開いて、固まっている。なんだろうか。顔面をぶつけたせいで、俺の顔が愉快なことにでもなっているのか。
「レイザート? すまない、大丈夫か!?」
「はい、大丈夫です」
ぶつかったといっても、たいしたことはない。勢いよく開いた扉に、ぶつかったわけではないからだ。
確かに痛みはあるが、しばらくすれば引く程度のものでしかない。
問題はないんだが、なぜかシーディスさんの動揺が激しい。どうしたのか。もしかして痛みは強くないけれど、鼻が曲がったりしているのだろうか。それは大惨事だ。ただでさえ良くない見てくれが、ますますひどくなってしまう。
「手当を……いや待て、ギーニアスを呼んでくる」
「そこまでしていただかなくて大丈夫です。良ければ少し休ませてもらえますか?」
とんでもないことを言われて、慌てて止めに入る。先生の治療費は、えげつない。たかだか扉に、ぶつかった程度で治療してもらうなんてしたら大変なことになる。
ただここで大丈夫だと言い続けても、シーディスさんの動揺はおさまりそうになかった。しょうがなく休ませてもらうように頼む。誰の住まいかはわからないが、ここからでてきたんだ。少しは融通が利くだろう。
迷惑だろうが、先生を呼ばれるわけにはいかない。
「もちろんだ。入ってくれ」
「ありがとうございます。お邪魔します」
かなり強引だったと思うが、嫌がることもなくうなずき返してくれる。顔面は礼儀正しくなれないが、せめて態度だけは失礼のないように頭を下げて礼を伝えて敷居をまたいだ
あくびをかみ殺して、目尻に貯まった涙を拭う。
―― 眠い
夕べというか、最近の睡眠時間が短いせいだ。意味も無く寝るのが、遅いわけじゃない。少しでも早く借金を返すために、氷の置物を大量に造っているからだ。
今日は学園が、休みの日だから頑張って商売にいそしんできた。おかげさまで、完売している。壊滅的に接客業に、向かない顔面だがなんとかなっている。きっとお客さんに、寛容な人が多いんだろう。
―― まずいな
油断をすると、瞼が落ちてくる。家に帰るまでに、もちそうにない。どこか眠れるとこはないかと、考えたがあるわけもない。往来で寝たら迷惑だし、不用心にもほどがある。
―― それに、盗まれたら大変だ
今日の売上金が入っているバックのひもを締め直す。
一度シーディスさんに、お金を返し損なってから渡せていない。忙しい人だからちょこちょこと返しに行くのも、迷惑だろうとある程度貯まるまではと控えていた。
今日の売上を合わせたら、そこそこの額になる。ようやっと返しに行けるんだ。眠気に身を任せて、失うわけにはいかない。
眠らないように顔の周りに、薄い氷の膜を作って温度を下げていたが効果がまったくない。意味が無いから術を解いて、頭を振る。
シーディスさんとロイのあれやこれを、妄想して意識を保とうと努力したのだがそれも限界が近いらしい。普段なら妄想で、眠気が吹っ飛ぶのだがよほど睡眠不足がたたっているようだ。またあくびが出て、目尻に溜まった涙がこぼれた。
「っつ!」
いきなり顔面に、衝撃が走る。鈍い音のあとに、鼻が痛みを訴えてくる。どうやら低いなりに高さはあるから、一番ダメージがあったようだ。
何が起きたのか痛みと衝撃で理解できなかったが、一歩下がって状況が把握できた。どうやら壁沿いに歩いていたせいで、開いた扉にぶつかったらしい。
「悪い。怪我は……」
「平気です」
扉の向こうからかけれた声は、聞き覚えのあるものだった。
何という偶然だろう。そこにいたのは、シーディスさんである。
鼻を押さえながら痛くないと言っても、説得力が無いから手はした荷下ろして返した。
なぜか目を見開いて、固まっている。なんだろうか。顔面をぶつけたせいで、俺の顔が愉快なことにでもなっているのか。
「レイザート? すまない、大丈夫か!?」
「はい、大丈夫です」
ぶつかったといっても、たいしたことはない。勢いよく開いた扉に、ぶつかったわけではないからだ。
確かに痛みはあるが、しばらくすれば引く程度のものでしかない。
問題はないんだが、なぜかシーディスさんの動揺が激しい。どうしたのか。もしかして痛みは強くないけれど、鼻が曲がったりしているのだろうか。それは大惨事だ。ただでさえ良くない見てくれが、ますますひどくなってしまう。
「手当を……いや待て、ギーニアスを呼んでくる」
「そこまでしていただかなくて大丈夫です。良ければ少し休ませてもらえますか?」
とんでもないことを言われて、慌てて止めに入る。先生の治療費は、えげつない。たかだか扉に、ぶつかった程度で治療してもらうなんてしたら大変なことになる。
ただここで大丈夫だと言い続けても、シーディスさんの動揺はおさまりそうになかった。しょうがなく休ませてもらうように頼む。誰の住まいかはわからないが、ここからでてきたんだ。少しは融通が利くだろう。
迷惑だろうが、先生を呼ばれるわけにはいかない。
「もちろんだ。入ってくれ」
「ありがとうございます。お邪魔します」
かなり強引だったと思うが、嫌がることもなくうなずき返してくれる。顔面は礼儀正しくなれないが、せめて態度だけは失礼のないように頭を下げて礼を伝えて敷居をまたいだ
141
あなたにおすすめの小説
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?
北川晶
BL
BLゲームじゃないのに、嫌われから溺愛って嘘でしょ? 不遇の若き王×モブの、ハートフル、ファンタジー、ちょっとサスペンスな、大逆転ラブです。
乙女ゲーム『愛の力で王(キング)を救え!』通称アイキンの中に異世界転生した九郎は、顔の見えない仕立て屋のモブキャラ、クロウ(かろうじて名前だけはあったよ)に生まれ変わる。
子供のときに石をぶつけられ、前世のことを思い出したが。顔のないモブキャラになったところで、どうにもできないよね? でも。いざ、孤島にそびえる王城に、王の婚礼衣装を作るため、仕立て屋として上がったら…王を助ける人がいないんですけどぉ?
本編完結。そして、続編「前作はモブ、でも続編は悪役令嬢ポジなんですけどぉ?」も同時収録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる