88 / 151
<ジルベール>恋愛ルート
6
しおりを挟む
会話を終わらせようとしても、上手くかわされる。立ち去ろうにも、上手くいかない。
親しくないどころか少し前にあったばかりの他人と、中身のない会話をする。まるで主人公とキャラのイベントが見たいのに、突如として発生した脇カプを見せられているような苦痛を感じる。一体俺が、何をしたというのか。
これが完全に無関係なら、お構いなしに立ち去れるのだが一応ジルベールの親戚だから少し躊躇してしまう。
―― 面倒だな
人混みに紛れておいていくことも出来るが、初めて来たと言っていたから迷子になっても困る。いや俺は困らないが、間接的にジルベールが迷惑を被りそうな気がする。
こいつを見ていたあの嫌そうな表情から、察するに良い感情は持ってないだろう。そんな奴のせいで、嫌な目に合うのも哀れだ。
「それでジルベールが……」
「……そうですか」
町を案内しろと言った割には、離すのはジルベールのことばかりだ。いや違うな、なんとなしに俺の事も探ろうとしている気がする。
―― そういうことか
意図の読めない問いに答え続けて、やっとこいつが何を考えているか気づいた。
理由が分かれば、簡単なことだ。こいつはジルベールが、心配で確かめに来たんだ。
今まで友達がいなかったジルベールは、俺と友達になれたとき嬉しかったのだろう。それできっと従兄のこいつにも、手紙を書いた。初めて、友達が出来たって。
届いた手紙に、こいつは気が気じゃなかったはずだ。今まで一人とも友達のいなかった年下の従弟に友達が出来た。こいつが言うには二種類の適性持ちで、金持ちで、真性ボッチだ。何処の馬の骨とも分からない相手に、利用されているんじゃないか。また希有な二種の適性に、群がって来たんじゃないかって案じたに違いない。
だからさっきから、わざとジルベールを悪く言う。そして俺を試すような言動をする。
それで望の答えが、返ってきたらこういうつもりなんだろう。『君はジルベールに、相応しくない』って。
「大丈夫ですよ」
「うん?」
勝手に勘違いして、試されている。正直なところ、良い気分ではない。だが他国からジルベールを、心配してきたのだから安心させてやろうと口を開く。
「俺はジルベールにたかるつもりも、利用するつもりもないので」
「どうしたんだい、いきなり」
意図的だろうに、俺が返せば不思議そうな表情を作っている。だが面倒なのでそのまま話すことにした。ジルベールのことが心配で来たのなら、問題ないってことを伝えれば安心するだろう。というか鬱陶しいから、さっさと帰ってほしい。いくらジルベール似の美形だからと言って、単体の男なんてどうでもいい。
「さっきも言いましたけど欲しいものがあれば、自分で稼いで買います。あと確かに二種類の適性は珍しいですけど、適性云々の前に俺にとってはあいつがジルベールであることが重要なので。どうでもいいです」
すごく長く喋った気がする。明日になったら普段仕事をしていない顔の筋肉が、悲鳴を上げるんじゃないだろうか。
「俺のような奴が、ジルベールの近くにいることが心配なんでしょう?」
「……」
何も返してこない。表情からは何も読み取れないけれど、元々コミュニケーション能力は低いから無駄な努力はしない。
「でもさっきも言った通り、俺はジルベール利用するつもりはないです。それにそのうちジルベールには、沢山友達ができますよ。あいつには良いところが、沢山あります。その良さに気づいて、取り巻きじゃなくて対等な友達になろうって思う人もきっとでてくる。出会える」
「君にとって、ジルベールは友達?」
―― あー
絶対、明日は顔面筋肉痛だ。帰ったら、氷を作って冷やそう。そうしよう。
探るような目つきになったジルベールの従兄の真意は考えずに、自分の筋肉のことを考える。
「俺はそう思っていますけど。貴方に何か知らせを、送ってきましたか? もしかして初めて友達が出来たからって喜んでいました? けどさっきも言った通り、そのうち俺の事は気にしなくなると思いますよ。たくさん良い友達ができて、俺はその中に埋もれて見えなくなる」
なんだろうか、痛い。具体的にどこかというわけでは、ないけれどじわじわと痛みが、広がっていく。きっとアレだな、顔面の筋肉が、もう限界だって訴えているんだろう。すまない顔面の筋肉よ。全てジルベールの従兄のせいだ。
「だから心配しなくても、大丈夫ですよ」
「……君はそれでも、構わない?」
―― 別に、元に戻るだけだ
友達が一人出来て、ボッチを卒業して、それがまたボッチになるだけだ。特に気にすることでもない。
しいて言うなら友達が出来たと、喜んでいたヴァルに知られないように誤魔化すのを苦労しそうなことくらいだ。もの凄く喜んでくれていたから、またボッチに戻たときに悟らせないようにしないといけない。
それにしても、なぜそんなことを聞いてくるんだ。こいつにとっては、俺のようなモブよりちゃんとした友達が出来た方がいいはずだ。モブの俺とは違って、身元のはっきりしてる、そう例えばロイとか。きっと主人公なら、こいつも友達の素性を心配しなくても大丈夫なはずだ。
「……どうか、しましたか」
「いや……久しぶりに、あいつに同情したよ」
これだけ頑張って、喋ったんだ。これで解放されるだろう。これでも無理なら、もう強行突破をしよう。そう考えていたら、なぜか乾いた笑い声と溜息をつかれた。
親しくないどころか少し前にあったばかりの他人と、中身のない会話をする。まるで主人公とキャラのイベントが見たいのに、突如として発生した脇カプを見せられているような苦痛を感じる。一体俺が、何をしたというのか。
これが完全に無関係なら、お構いなしに立ち去れるのだが一応ジルベールの親戚だから少し躊躇してしまう。
―― 面倒だな
人混みに紛れておいていくことも出来るが、初めて来たと言っていたから迷子になっても困る。いや俺は困らないが、間接的にジルベールが迷惑を被りそうな気がする。
こいつを見ていたあの嫌そうな表情から、察するに良い感情は持ってないだろう。そんな奴のせいで、嫌な目に合うのも哀れだ。
「それでジルベールが……」
「……そうですか」
町を案内しろと言った割には、離すのはジルベールのことばかりだ。いや違うな、なんとなしに俺の事も探ろうとしている気がする。
―― そういうことか
意図の読めない問いに答え続けて、やっとこいつが何を考えているか気づいた。
理由が分かれば、簡単なことだ。こいつはジルベールが、心配で確かめに来たんだ。
今まで友達がいなかったジルベールは、俺と友達になれたとき嬉しかったのだろう。それできっと従兄のこいつにも、手紙を書いた。初めて、友達が出来たって。
届いた手紙に、こいつは気が気じゃなかったはずだ。今まで一人とも友達のいなかった年下の従弟に友達が出来た。こいつが言うには二種類の適性持ちで、金持ちで、真性ボッチだ。何処の馬の骨とも分からない相手に、利用されているんじゃないか。また希有な二種の適性に、群がって来たんじゃないかって案じたに違いない。
だからさっきから、わざとジルベールを悪く言う。そして俺を試すような言動をする。
それで望の答えが、返ってきたらこういうつもりなんだろう。『君はジルベールに、相応しくない』って。
「大丈夫ですよ」
「うん?」
勝手に勘違いして、試されている。正直なところ、良い気分ではない。だが他国からジルベールを、心配してきたのだから安心させてやろうと口を開く。
「俺はジルベールにたかるつもりも、利用するつもりもないので」
「どうしたんだい、いきなり」
意図的だろうに、俺が返せば不思議そうな表情を作っている。だが面倒なのでそのまま話すことにした。ジルベールのことが心配で来たのなら、問題ないってことを伝えれば安心するだろう。というか鬱陶しいから、さっさと帰ってほしい。いくらジルベール似の美形だからと言って、単体の男なんてどうでもいい。
「さっきも言いましたけど欲しいものがあれば、自分で稼いで買います。あと確かに二種類の適性は珍しいですけど、適性云々の前に俺にとってはあいつがジルベールであることが重要なので。どうでもいいです」
すごく長く喋った気がする。明日になったら普段仕事をしていない顔の筋肉が、悲鳴を上げるんじゃないだろうか。
「俺のような奴が、ジルベールの近くにいることが心配なんでしょう?」
「……」
何も返してこない。表情からは何も読み取れないけれど、元々コミュニケーション能力は低いから無駄な努力はしない。
「でもさっきも言った通り、俺はジルベール利用するつもりはないです。それにそのうちジルベールには、沢山友達ができますよ。あいつには良いところが、沢山あります。その良さに気づいて、取り巻きじゃなくて対等な友達になろうって思う人もきっとでてくる。出会える」
「君にとって、ジルベールは友達?」
―― あー
絶対、明日は顔面筋肉痛だ。帰ったら、氷を作って冷やそう。そうしよう。
探るような目つきになったジルベールの従兄の真意は考えずに、自分の筋肉のことを考える。
「俺はそう思っていますけど。貴方に何か知らせを、送ってきましたか? もしかして初めて友達が出来たからって喜んでいました? けどさっきも言った通り、そのうち俺の事は気にしなくなると思いますよ。たくさん良い友達ができて、俺はその中に埋もれて見えなくなる」
なんだろうか、痛い。具体的にどこかというわけでは、ないけれどじわじわと痛みが、広がっていく。きっとアレだな、顔面の筋肉が、もう限界だって訴えているんだろう。すまない顔面の筋肉よ。全てジルベールの従兄のせいだ。
「だから心配しなくても、大丈夫ですよ」
「……君はそれでも、構わない?」
―― 別に、元に戻るだけだ
友達が一人出来て、ボッチを卒業して、それがまたボッチになるだけだ。特に気にすることでもない。
しいて言うなら友達が出来たと、喜んでいたヴァルに知られないように誤魔化すのを苦労しそうなことくらいだ。もの凄く喜んでくれていたから、またボッチに戻たときに悟らせないようにしないといけない。
それにしても、なぜそんなことを聞いてくるんだ。こいつにとっては、俺のようなモブよりちゃんとした友達が出来た方がいいはずだ。モブの俺とは違って、身元のはっきりしてる、そう例えばロイとか。きっと主人公なら、こいつも友達の素性を心配しなくても大丈夫なはずだ。
「……どうか、しましたか」
「いや……久しぶりに、あいつに同情したよ」
これだけ頑張って、喋ったんだ。これで解放されるだろう。これでも無理なら、もう強行突破をしよう。そう考えていたら、なぜか乾いた笑い声と溜息をつかれた。
154
あなたにおすすめの小説
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
転生したが壁になりたい。
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
某国の皇子、冒険者となる
くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。
転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。
俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために……
異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。
主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。
※ BL要素は控えめです。
2020年1月30日(木)完結しました。
【完結】幽閉の王を救えっ、でも周りにモブの仕立て屋しかいないんですけどぉ?
北川晶
BL
BLゲームじゃないのに、嫌われから溺愛って嘘でしょ? 不遇の若き王×モブの、ハートフル、ファンタジー、ちょっとサスペンスな、大逆転ラブです。
乙女ゲーム『愛の力で王(キング)を救え!』通称アイキンの中に異世界転生した九郎は、顔の見えない仕立て屋のモブキャラ、クロウ(かろうじて名前だけはあったよ)に生まれ変わる。
子供のときに石をぶつけられ、前世のことを思い出したが。顔のないモブキャラになったところで、どうにもできないよね? でも。いざ、孤島にそびえる王城に、王の婚礼衣装を作るため、仕立て屋として上がったら…王を助ける人がいないんですけどぉ?
本編完結。そして、続編「前作はモブ、でも続編は悪役令嬢ポジなんですけどぉ?」も同時収録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる