BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

文字の大きさ
89 / 151
<ジルベール>恋愛ルート

7

しおりを挟む
 ―― 一体、どういう状況だろか
 あれから歩き続けて、今いるのは空き地だ。人通りも少ないし案内するような場所でもない。市場に戻ってジルベールが、来るまで待つかと思ったとき名前を呼ばれた。
 振り向いたらジルベールの従兄の手が、頬に添えられる。鳥肌が立った。少しじゃなくて、全身に寒気が駆け抜ける。

 けれど動かないで、睨み付けるように視線を向ける。表情差分が少ないから、不快を示しているか伝わっているかは分からない。
 感情に沿って行動するなら、今すぐに後ろに飛び退きたい。だが胡散臭い笑顔を浮かべたままのこいつに、動揺を見せたら負けな気がしたんだ。

「ジルベールに興味が無いのなら、俺にしないか?」
「は?」
 言われた意味が分からなくて、頭の中で言われたことを反復する。したけれど、やはり分からない。
 ジルベールに、興味が無い? いや、あるぞ。なんてたって、攻略キャラだ。主人公と絡んで萌えを、提供してくれる重要な存在だ、残念なことにロイ以外を好きになったようだから、萌えイベントは見られない。けど頭の中で想像するのは、自由だろ。供給がないなら、自家発電するだけだ。そういのは腐男子だから、大得意だ。

 ―― それに、友達だしな
 いくらロイとイチャイチャしてくれなくても、友達だから興味が無いなんて言うわけない。

「興味は、ありますけど」
「けど友達止まりなんだろ?」
 友達であることの何が、いけないのか。それに何だ止まりって友達であることを、ディスってるのか。友達の上って何かあるのか――友達の上、友達の上、そうか親友か。
 ―― うん? 
 どういうことだ、こいつは俺の親友になりたいのか。今日、会ったばかりなのに?
 ますます意味が分からない。

「ジルベールだと、君の相手は務まらないんだろう? 俺なら君を、満足させられる」
「……」
 ぞわっと全身に、怖気が駆け抜ける。
 まてこいつ、まさかBL的な意味で言っているのか。モブ相手に、正気か。いや正気じゃないな。あと俺にとって、需要が無い。とち狂って意味の無いことをするなら、ジルベールの好きな人を見つけて、同じ事をして当て馬にでもなってくれ。俺はそのあとでジルベールと、誰かが良い感じなるのを影からこっそり眺めるから。

「遠慮します」
「俺の何処が、気に入らないんだ? 言ってくれ、君のために直すから」
 二歩、後ろに下がって、距離をとる。
 少し腕を広げて、肩をすくめる。芝居がかった仕草で、おちょくっていただけだと気づいた。良かった。おかしなバグが生じてモブ対サブキャラなんて、訳の分からない事が起きたりしなくて本当に良かった。

「性格ですね」
 そもそも出会ったばかりで、どこが気に入らないとか言う関係性ではない。ないけどこの短い間で、こいつの性格の悪さは伝わってきたから正直に伝えておいた。

「君の為に、好みの性格に変えようか」
「あからさまな嘘は、結構です」
 完全に揶揄いに来ているのがわかる。声が真剣味を帯びても、目が質悪く笑ったままだ。
「つれないな。あとは何かある?」
「性別です」
「俺じゃ恋愛対象にならない?」
「無意味に顔を近づけないでください。男の時点で、ならないです」
 俺は腐男子である。男同士の恋愛を見るのが、大好きではあるが自身の恋愛対象は女の子だ。キャラのイチャイチャを眺めていたのであって、混ざりたくはない。

「それはまた……難儀だな。まったく欠片も、ありえないのか?」
「そこに転がってる石粒ほどもないです」
「よしわかった。俺で練習をしよう。男でもいけるようにすれば、全部解決する」
 いきなり頭の湧いた発言をかまして、両手を握られた。
 ―― とりあえず凍らせるか
 ふと浮んだ考えを、慌てて追い出す。
 鳥肌が立っている。不快度マックスだ。だがこいつは腐っても、ジルベールの親戚なんだ。いくら嫌がっているような様子を見せていても、従兄が友達に氷漬けにされていたらショックを受けるかも知れない。唯一の友達を、傷つけたくはない。

 ―― 物理的に沈めるのも……無しだよな
 頭の中で脛を蹴って、前屈みになった所を後頭部に一撃なんて、シュミレーションしてみたが止めた。ジルベールの親戚でなかったら、手段を選ばずいける。でもどうしてもジルベールの顔がちらつく。

 ―― よし、逃げるか
 脛を蹴って、あとは逃げよう。地の利はこっちにあるから、逃げ切れるはずだ。許せジルベール、これは正当防衛だ。
 心の中でジルベールに謝罪をしてから、足を一歩引く。
 ―― なんだ?
  引いた足を動かす前に、何かに包まれたような感じがして動きを止める。風の術だ。嫌な感じがするものじゃない。一体なんだと思っていると、遠目に息を切らたジルベールの姿が見えた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼2025年9月17日(水)より投稿再開 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

処理中です...