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<ジルベール>恋愛ルート
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―― 一体、どういう状況だろか
あれから歩き続けて、今いるのは空き地だ。人通りも少ないし案内するような場所でもない。市場に戻ってジルベールが、来るまで待つかと思ったとき名前を呼ばれた。
振り向いたらジルベールの従兄の手が、頬に添えられる。鳥肌が立った。少しじゃなくて、全身に寒気が駆け抜ける。
けれど動かないで、睨み付けるように視線を向ける。表情差分が少ないから、不快を示しているか伝わっているかは分からない。
感情に沿って行動するなら、今すぐに後ろに飛び退きたい。だが胡散臭い笑顔を浮かべたままのこいつに、動揺を見せたら負けな気がしたんだ。
「ジルベールに興味が無いのなら、俺にしないか?」
「は?」
言われた意味が分からなくて、頭の中で言われたことを反復する。したけれど、やはり分からない。
ジルベールに、興味が無い? いや、あるぞ。なんてたって、攻略キャラだ。主人公と絡んで萌えを、提供してくれる重要な存在だ、残念なことにロイ以外を好きになったようだから、萌えイベントは見られない。けど頭の中で想像するのは、自由だろ。供給がないなら、自家発電するだけだ。そういのは腐男子だから、大得意だ。
―― それに、友達だしな
いくらロイとイチャイチャしてくれなくても、友達だから興味が無いなんて言うわけない。
「興味は、ありますけど」
「けど友達止まりなんだろ?」
友達であることの何が、いけないのか。それに何だ止まりって友達であることを、ディスってるのか。友達の上って何かあるのか――友達の上、友達の上、そうか親友か。
―― うん?
どういうことだ、こいつは俺の親友になりたいのか。今日、会ったばかりなのに?
ますます意味が分からない。
「ジルベールだと、君の相手は務まらないんだろう? 俺なら君を、満足させられる」
「……」
ぞわっと全身に、怖気が駆け抜ける。
まてこいつ、まさかBL的な意味で言っているのか。モブ相手に、正気か。いや正気じゃないな。あと俺にとって、需要が無い。とち狂って意味の無いことをするなら、ジルベールの好きな人を見つけて、同じ事をして当て馬にでもなってくれ。俺はそのあとでジルベールと、誰かが良い感じなるのを影からこっそり眺めるから。
「遠慮します」
「俺の何処が、気に入らないんだ? 言ってくれ、君のために直すから」
二歩、後ろに下がって、距離をとる。
少し腕を広げて、肩をすくめる。芝居がかった仕草で、おちょくっていただけだと気づいた。良かった。おかしなバグが生じてモブ対サブキャラなんて、訳の分からない事が起きたりしなくて本当に良かった。
「性格ですね」
そもそも出会ったばかりで、どこが気に入らないとか言う関係性ではない。ないけどこの短い間で、こいつの性格の悪さは伝わってきたから正直に伝えておいた。
「君の為に、好みの性格に変えようか」
「あからさまな嘘は、結構です」
完全に揶揄いに来ているのがわかる。声が真剣味を帯びても、目が質悪く笑ったままだ。
「つれないな。あとは何かある?」
「性別です」
「俺じゃ恋愛対象にならない?」
「無意味に顔を近づけないでください。男の時点で、ならないです」
俺は腐男子である。男同士の恋愛を見るのが、大好きではあるが自身の恋愛対象は女の子だ。キャラのイチャイチャを眺めていたのであって、混ざりたくはない。
「それはまた……難儀だな。まったく欠片も、ありえないのか?」
「そこに転がってる石粒ほどもないです」
「よしわかった。俺で練習をしよう。男でもいけるようにすれば、全部解決する」
いきなり頭の湧いた発言をかまして、両手を握られた。
―― とりあえず凍らせるか
ふと浮んだ考えを、慌てて追い出す。
鳥肌が立っている。不快度マックスだ。だがこいつは腐っても、ジルベールの親戚なんだ。いくら嫌がっているような様子を見せていても、従兄が友達に氷漬けにされていたらショックを受けるかも知れない。唯一の友達を、傷つけたくはない。
―― 物理的に沈めるのも……無しだよな
頭の中で脛を蹴って、前屈みになった所を後頭部に一撃なんて、シュミレーションしてみたが止めた。ジルベールの親戚でなかったら、手段を選ばずいける。でもどうしてもジルベールの顔がちらつく。
―― よし、逃げるか
脛を蹴って、あとは逃げよう。地の利はこっちにあるから、逃げ切れるはずだ。許せジルベール、これは正当防衛だ。
心の中でジルベールに謝罪をしてから、足を一歩引く。
―― なんだ?
引いた足を動かす前に、何かに包まれたような感じがして動きを止める。風の術だ。嫌な感じがするものじゃない。一体なんだと思っていると、遠目に息を切らたジルベールの姿が見えた。
あれから歩き続けて、今いるのは空き地だ。人通りも少ないし案内するような場所でもない。市場に戻ってジルベールが、来るまで待つかと思ったとき名前を呼ばれた。
振り向いたらジルベールの従兄の手が、頬に添えられる。鳥肌が立った。少しじゃなくて、全身に寒気が駆け抜ける。
けれど動かないで、睨み付けるように視線を向ける。表情差分が少ないから、不快を示しているか伝わっているかは分からない。
感情に沿って行動するなら、今すぐに後ろに飛び退きたい。だが胡散臭い笑顔を浮かべたままのこいつに、動揺を見せたら負けな気がしたんだ。
「ジルベールに興味が無いのなら、俺にしないか?」
「は?」
言われた意味が分からなくて、頭の中で言われたことを反復する。したけれど、やはり分からない。
ジルベールに、興味が無い? いや、あるぞ。なんてたって、攻略キャラだ。主人公と絡んで萌えを、提供してくれる重要な存在だ、残念なことにロイ以外を好きになったようだから、萌えイベントは見られない。けど頭の中で想像するのは、自由だろ。供給がないなら、自家発電するだけだ。そういのは腐男子だから、大得意だ。
―― それに、友達だしな
いくらロイとイチャイチャしてくれなくても、友達だから興味が無いなんて言うわけない。
「興味は、ありますけど」
「けど友達止まりなんだろ?」
友達であることの何が、いけないのか。それに何だ止まりって友達であることを、ディスってるのか。友達の上って何かあるのか――友達の上、友達の上、そうか親友か。
―― うん?
どういうことだ、こいつは俺の親友になりたいのか。今日、会ったばかりなのに?
ますます意味が分からない。
「ジルベールだと、君の相手は務まらないんだろう? 俺なら君を、満足させられる」
「……」
ぞわっと全身に、怖気が駆け抜ける。
まてこいつ、まさかBL的な意味で言っているのか。モブ相手に、正気か。いや正気じゃないな。あと俺にとって、需要が無い。とち狂って意味の無いことをするなら、ジルベールの好きな人を見つけて、同じ事をして当て馬にでもなってくれ。俺はそのあとでジルベールと、誰かが良い感じなるのを影からこっそり眺めるから。
「遠慮します」
「俺の何処が、気に入らないんだ? 言ってくれ、君のために直すから」
二歩、後ろに下がって、距離をとる。
少し腕を広げて、肩をすくめる。芝居がかった仕草で、おちょくっていただけだと気づいた。良かった。おかしなバグが生じてモブ対サブキャラなんて、訳の分からない事が起きたりしなくて本当に良かった。
「性格ですね」
そもそも出会ったばかりで、どこが気に入らないとか言う関係性ではない。ないけどこの短い間で、こいつの性格の悪さは伝わってきたから正直に伝えておいた。
「君の為に、好みの性格に変えようか」
「あからさまな嘘は、結構です」
完全に揶揄いに来ているのがわかる。声が真剣味を帯びても、目が質悪く笑ったままだ。
「つれないな。あとは何かある?」
「性別です」
「俺じゃ恋愛対象にならない?」
「無意味に顔を近づけないでください。男の時点で、ならないです」
俺は腐男子である。男同士の恋愛を見るのが、大好きではあるが自身の恋愛対象は女の子だ。キャラのイチャイチャを眺めていたのであって、混ざりたくはない。
「それはまた……難儀だな。まったく欠片も、ありえないのか?」
「そこに転がってる石粒ほどもないです」
「よしわかった。俺で練習をしよう。男でもいけるようにすれば、全部解決する」
いきなり頭の湧いた発言をかまして、両手を握られた。
―― とりあえず凍らせるか
ふと浮んだ考えを、慌てて追い出す。
鳥肌が立っている。不快度マックスだ。だがこいつは腐っても、ジルベールの親戚なんだ。いくら嫌がっているような様子を見せていても、従兄が友達に氷漬けにされていたらショックを受けるかも知れない。唯一の友達を、傷つけたくはない。
―― 物理的に沈めるのも……無しだよな
頭の中で脛を蹴って、前屈みになった所を後頭部に一撃なんて、シュミレーションしてみたが止めた。ジルベールの親戚でなかったら、手段を選ばずいける。でもどうしてもジルベールの顔がちらつく。
―― よし、逃げるか
脛を蹴って、あとは逃げよう。地の利はこっちにあるから、逃げ切れるはずだ。許せジルベール、これは正当防衛だ。
心の中でジルベールに謝罪をしてから、足を一歩引く。
―― なんだ?
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