永劫の誇り – 鹿之助、燃ゆる戦国の灯』

honyarara

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第五章 再興の烽火

再興の烽火Ⅲ

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冬の訪れが近づき、山間の空気が一層冷たさを増す頃、鹿之介のまわりには二十数名の旧臣と新たな同志が集まっていた。彼らの拠点は、石見国の深き谷間にある小さな廃寺――そこはかつて尼子家の守護神を祀っていた場所でもあった。朽ちた瓦屋根の下、鹿之介は焚き火を囲んで静かに口を開いた。

「おのおのの手に残るものは刀のみ。しかし、心に残るものは、家と民と誓いの記憶だ。それは奪われてはならぬ。」

その言葉に、誰かが火に薪をくべた。ぱちりと音を立てて火が跳ね、炎が集まった者たちの表情を揺らす。その顔には、かつての戦で斃れた者たちの影と、失われた誇りへの祈りが滲んでいた。

再興への道は、軍勢の拡充にとどまらなかった。鹿之介は各地の民の声に耳を傾け、重税に喘ぐ村、領主の交代で取り残された百姓たちに目を向けた。「力なき者こそが、志の旗に真の重みを与える」と彼は説き、山林や道中に潜む浪人を仲間に迎え、徐々にその輪を広げていった。

この頃、出雲の一隅では、鹿之介の名を秘かに記した願文が、寺社の灯籠に添えられるという噂も立ちはじめる。「鹿介公の一太刀、必ずや再び世を正す火となれかし」と。誓いは、もはや山間に集まる者たちの間に限らず、土地に染み込んだように人々の心に根を下ろしていた。

一方、毛利家では、輝元が治政を継ぎつつあった。元就は隠居の身とはいえ、老将の眼で世の動きを見つめていた。報せの文を読み終え、彼は静かにこう呟く。
「火は、薪があれば再び燃える。だが我らは水の流れを変えた。鹿之介、もし誠に天が汝に与すなら――見せてみよ、その烽火の先にあるものを。」

その夜、谷を見下ろす高台の松の枝に、鹿之介自らが掲げた白布が風にはためいた。そこには、かつて尼子の軍旗に記された一文字――「義」が、濃墨で力強く染め抜かれていた。

烽火はまだ細く、声はまだ届かぬ場所もある。しかし、「誓い」は今、再び時代の深層に火を灯した。
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