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第六章 義烈の連環
義烈の連環Ⅱ
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冬枯れの谷に一陣の風が吹き抜け、霜に覆われた樹々の葉が静かに音を立てた。山中鹿之介のもとには、さらに新たな同志が加わりつつあり、山陰各地の集落で密やかに「再興」の言葉が交わされるようになっていた。
中でも、かつて尼子家の知行地であった隠岐国の一部では、老いた地侍たちが鹿之介からの密書を受け取り、涙ながらに古き家紋の槍旗を蔵から取り出すという話が伝わっていた。「尼子が敗れし日より、幾夜幾年…されど、心まで下知を受けた覚えはない」と老武士が語るとき、静かな誇りと懐旧の念が人々の胸を打った。
鹿之介は、この新たに編成された精鋭を率いて、各地で小規模ながらも象徴的な行動を取り始めた。元尼子領である領内の寺社を修繕し、貧農に備蓄米を分け与えることで、「かつての主君の名のもとに行われる善政」として、民の支持を確実に得つつあった。村ごとの寄合では「鹿之介様の布令は、昨今の国主よりも心ある」との声が自然と上がり、武の力ではなく、義の行いによって結ばれる連帯が形となっていく。
やがて、伯耆の麓で小さな武家集団が毛利家の代官所を襲撃したという報が走る。戦の規模は小さく、被害も最小限であったが、代官のもとに残された一片の旗――「義」の一文字が記された白布――が、彼らの背後に鹿之介の影があることを強く印象づけた。
毛利家中では動揺の声もささやかれ始める。「鹿之介、ただちに討つべし」という急進の意見に対して、輝元はあくまで静かに構えていた。「その火が大義のもとに燃えておるならば、我らが用いるべきは剣ではなく、風向きを読む心なり」と彼は応じた。若き毛利当主のこの慎重さは、老いたる元就譲りの用心深さでもあり、また、戦乱が生んだ深い思慮の証でもあった。
そしてある日、因幡の山間で再び一つの烽火が上がる。それはまだ小さく、だが確かに、遠方からもその輪郭が見て取れる炎だった。人々の口には、こうした噂が乗るようになる。
「義を掲げた男がまた立った。これは武ではなく、志の戦いなのだと――」
中でも、かつて尼子家の知行地であった隠岐国の一部では、老いた地侍たちが鹿之介からの密書を受け取り、涙ながらに古き家紋の槍旗を蔵から取り出すという話が伝わっていた。「尼子が敗れし日より、幾夜幾年…されど、心まで下知を受けた覚えはない」と老武士が語るとき、静かな誇りと懐旧の念が人々の胸を打った。
鹿之介は、この新たに編成された精鋭を率いて、各地で小規模ながらも象徴的な行動を取り始めた。元尼子領である領内の寺社を修繕し、貧農に備蓄米を分け与えることで、「かつての主君の名のもとに行われる善政」として、民の支持を確実に得つつあった。村ごとの寄合では「鹿之介様の布令は、昨今の国主よりも心ある」との声が自然と上がり、武の力ではなく、義の行いによって結ばれる連帯が形となっていく。
やがて、伯耆の麓で小さな武家集団が毛利家の代官所を襲撃したという報が走る。戦の規模は小さく、被害も最小限であったが、代官のもとに残された一片の旗――「義」の一文字が記された白布――が、彼らの背後に鹿之介の影があることを強く印象づけた。
毛利家中では動揺の声もささやかれ始める。「鹿之介、ただちに討つべし」という急進の意見に対して、輝元はあくまで静かに構えていた。「その火が大義のもとに燃えておるならば、我らが用いるべきは剣ではなく、風向きを読む心なり」と彼は応じた。若き毛利当主のこの慎重さは、老いたる元就譲りの用心深さでもあり、また、戦乱が生んだ深い思慮の証でもあった。
そしてある日、因幡の山間で再び一つの烽火が上がる。それはまだ小さく、だが確かに、遠方からもその輪郭が見て取れる炎だった。人々の口には、こうした噂が乗るようになる。
「義を掲げた男がまた立った。これは武ではなく、志の戦いなのだと――」
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