永劫の誇り – 鹿之助、燃ゆる戦国の灯』

honyarara

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第七章 反撃の刻

反撃の刻

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春の曙光が山陰の谷を照らし、ついに山中鹿之介は静かに立ち上がった。長く慎重に進められてきた再興の準備は、ついに「旗を挙げる」瞬間を迎えたのである。これは復讐ではない。これは誇りを取り戻す戦い――「義による再興」の狼煙が今、現実となって上がる。

鹿之介は、戦の場として伯耆南部の小さな代官所を選んだ。その地はかつて尼子家の重臣・塩冶氏が統治した地であり、失った過去と民の記憶が残る場所でもあった。地侍や旧臣の子孫、さらには義に共鳴する浪士たちが集い、総勢三百――少数ながら、志の高さは何千の兵にも勝っていた。

攻撃は夜明け前、まだ霧が山を覆う頃に始まった。合図の太鼓が打たれ、兵たちの「義」の旗が風を切る。鹿之介は先陣に立ち、まるで風そのもののように敵陣を割って駆け抜けた。「我らがここに在り」と掲げられた軍旗に、民は窓から灯りを掲げ、無言の連帯を示した。

代官所は守備が手薄で、抵抗はわずかだった。鹿之介は兵に命じて略奪を禁じ、捕らえた代官には深々と一礼して放免した。「武ではなく、徳によって民を得る」。その姿は、戦国の常識を覆すものであった。

この奇襲の報は瞬く間に西国を駆け巡り、「義軍再起」の噂が、風のように流れていった。毛利家中でも会議が開かれ、老臣の一人が静かに言った。「ただの叛乱にあらず。これは、誓いを継ぐ者による“問いかけ”でござろう」。輝元は書を置き、ただ一言呟いた。「時が動き出したか」
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