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第九章 集いし命脈
第九章 集いし命脈
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春が深まり、山々の雪解け水が川を潤す頃、山中鹿之介のもとへ、さらに多くの命脈が集い始めた。かつて散り散りになった尼子家の遺臣、道を失った浪士、民草の中に眠っていた覚悟の種火――それらすべてが“義”という一文字の旗の下に芽吹き始めていた。
出雲からは、若き武士・堀尾吉晴が密かに合流を果たし、「主に報いる日を、この手で迎えたい」と誓った。伯耆からは農兵あがりの兄弟が、伯父の陣羽織を纏い、旧家臣の末裔であることを証す。中には名も持たぬ者もいたが、「義がある限り、誰でもこの軍の一人だ」と鹿之介は彼らを分け隔てず迎え入れた。
兵はまだ三百に満たなかったが、戦列の整備は着実に進められた。かつての兵法書を元に陣形と連携を鍛え、無駄を排した戦術が山間の鍛錬場で磨かれていく。兵装も乏しかったが、農具を加工した槍、竹を研いだ矢が整えられ、何よりその手に宿る覚悟が、武器を真の刃に変えていた。
鹿之介は、人の心を最も大切にした。「我らの敵は、毛利にあらず。忘れられた志の空白こそ、打ち破るべきものだ」と諭し、各地で祈願の書を集めさせた。それは、再興の証として、村々の井戸や社に掲げられ、「義」の印とともに、次第に信仰に近い存在となっていった。
その動きに応じて、小さな奇跡のような出会いもあった。かつて尼子に敵したはずのある地侍が、「もはや恨みはない。むしろ、誇りなき今の世にあって、その旗は真っ直ぐすぎるほどだ」と語り、義軍に加わる決意を見せたのである。鹿之介は深く頷き、かつて敵であった者の手を固く握った。
一方、毛利家中では、この“連環の広がり”に焦燥の色も見え始める。蜂起そのものよりも、民の心がゆっくりと動いていること――それが最も恐るべきこととして認識されていた。
鹿之介は、拠点の裏山に設えた小さな祠に詣で、かつての主君・尼子義久の名を静かに唱えた。
「殿よ、我らはただ誇りを失いたくないのです。もう一度だけ、この志にお力をお貸しください。」
山の霧が晴れ、陽が差す。その光の中、集いし命脈たちは、ついに一つの軍へと姿を変えていく。―その槍が振るわれるとき、戦国の静寂は再び破られる。
出雲からは、若き武士・堀尾吉晴が密かに合流を果たし、「主に報いる日を、この手で迎えたい」と誓った。伯耆からは農兵あがりの兄弟が、伯父の陣羽織を纏い、旧家臣の末裔であることを証す。中には名も持たぬ者もいたが、「義がある限り、誰でもこの軍の一人だ」と鹿之介は彼らを分け隔てず迎え入れた。
兵はまだ三百に満たなかったが、戦列の整備は着実に進められた。かつての兵法書を元に陣形と連携を鍛え、無駄を排した戦術が山間の鍛錬場で磨かれていく。兵装も乏しかったが、農具を加工した槍、竹を研いだ矢が整えられ、何よりその手に宿る覚悟が、武器を真の刃に変えていた。
鹿之介は、人の心を最も大切にした。「我らの敵は、毛利にあらず。忘れられた志の空白こそ、打ち破るべきものだ」と諭し、各地で祈願の書を集めさせた。それは、再興の証として、村々の井戸や社に掲げられ、「義」の印とともに、次第に信仰に近い存在となっていった。
その動きに応じて、小さな奇跡のような出会いもあった。かつて尼子に敵したはずのある地侍が、「もはや恨みはない。むしろ、誇りなき今の世にあって、その旗は真っ直ぐすぎるほどだ」と語り、義軍に加わる決意を見せたのである。鹿之介は深く頷き、かつて敵であった者の手を固く握った。
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鹿之介は、拠点の裏山に設えた小さな祠に詣で、かつての主君・尼子義久の名を静かに唱えた。
「殿よ、我らはただ誇りを失いたくないのです。もう一度だけ、この志にお力をお貸しください。」
山の霧が晴れ、陽が差す。その光の中、集いし命脈たちは、ついに一つの軍へと姿を変えていく。―その槍が振るわれるとき、戦国の静寂は再び破られる。
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