精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

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第060話 マジカルナイトフィーバー

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 母さんが夜なべする勢いで作りましたよ?

 点火棒。

 もうね。

 精霊さん達とベルトコンベアになった気分でした。

 めっちゃ艶々してますけどね、精霊さん達。

 ういやつめ、ういやつめ。

 かいぐりすると、きゃっきゃと喜んで転がる精霊さん。

 問題は一人を相手すると……。

 期待に満ちたキラキラした瞳でこちらを(以下略。

 いやぁ、朝から良い汗をかきました。

 そんな苦労の合間に燻製小屋のお魚さんも出来たようなので、出荷です。

 てちてち。

 活況に沸く町を眺めながら、一路マスターのお店に。

 扉を開くと、アゲアゲな雰囲気にほっと一息。

 今日も大入り満員のご様子。

 燻製を卸してから、連日大入りのナイトフィーバー状態らしいのですが。

 マスターが疲労で倒れないか心配でもあるのです。

 大荷物を背負って調理場の方を覗き込むと……。

 そこには脂ギッシュにテカテカしたマスターの笑顔溢れる姿が。

 うん。

 充実してる。

 大丈夫そう。

 いつものお肉の燻製と魚の干物を取り出すと、慌てたようにマスターが袋を取り出す。

「前回のやつだが、値が付いた!!」

 ぽってり膨らんだ袋の中には結構な高額貨幣が入っていて首を傾げる。

 今回の仕入れ分も含めてかなと思ったら、違うようで。

「あいつらの話だと、クマよりも魚の方が良いってさ」

 結局、クマやリス、ウサギよりも魚の干物の方が高いという結果に。

 旬の時期ならお金を出せば買える動物系より。

 どんなに金を積んでも買えない魚に価値を見出すのは当然の結果なのだろう。

 個人的には、あの爆釣を知っているので申し訳ない気持ちもあるのだけど。

 しょうがないので、背中の荷物から型の良いやつを机の上に置いてみる。

「いかがでしょう?」

 それは体長で二十五センチほどのちょっと小ぶりだが、悠々と泳ぐ姿が見事に再現された逸品。

 銀に桃と青が入った表面は、燻煙のお陰で黄金に色付き、何とも豪奢な印象を与える。

「何だよ、こりゃ……。何だよ……」

 言葉にならない様子のマスターの動揺を受けて、お客さん達が何事かと覗き込み始めた。

「おい、あれ。見た事あんぞ!! 魚だ!!」

「あれが、これになるのか……。確かに、そんな形だな」

「色が違わね?」

 そっとマスターに差し出すと、意を決したように豪快に頭からばりっと一口。

 そしてカッと見開かれる瞳。

「うーまーいーぞー!!」

 ビームでも出るのかと思わせる咆哮!!

 上がる観衆オーディエンス

 興奮の坩堝が今、生まれた。

「これ、いつもの魚だよな? 全然違うんだが……。あれか!! 肉と同じ香り……」

「はい。新製品です」

 そんな事を言いながら、そっと民芸コンロを設置して、火を灯す。

 上には、燻製魚の串をそっと乗せて、暫しの待機。

 期待に高まる沈黙の場。

 その静けさとは裏腹のボルテージ。

 人を射殺さんばかりの視線をびしびしっと熱く感じる。

 ほの香る、薫香。

 そして、魚の肉から漂うメイラード反応の馨しい香り。

 それらが複雑に絡み合い、周囲からは鼻で嗅ぐ音が響き渡る。

「ご試食下さい」

 ちりちりふつふつと皮が膨れて色が濃くなった辺りで、マスターへ。

 正に視線で殺すと言わんばかりの期待を一身に浴びながら、マスターがはふっと湯気が漂う魚の腹を噛み千切る。

 響き渡る唾を飲み込む、嚥下の音。

 そんな中、むしりっと噛み千切ったマスターが咀嚼を始めようとした瞬間!!

「なんじゃこりゃー!!」

 そんなジーパンを履いた人が死にそうな叫びと共に、わなわなと震えるマスター。

 そうここに。

 魔道具マジカル夜更かしナイトフィーバーの幕は開いたのだった。
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