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第061話 グルーヴ

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「ヘイ、エヴィバディ、セイ、ホーォ!!」

「「ホーォッ!!」」

「ホー!! ホー!!」

「「ホー!! ホー!!」」

「ホッ!! ホッ!! ホッ!!」

「「ホッ!! ホッ!! ホッ!!」」

「イェーァ!!」

「「ウワァァァアァァ!!」」

 箱の中はグルーヴが蔓延している。

 精霊さん達は歓喜に煌めき、一夜限りのダンスホールの開幕だ。

 ちなみに、ほーという掛け声。

 これ、翻訳されているのかと思えば、微妙に翻訳されてない。

 この世界では、元々樵さんの間で危ないよと知らせる掛け声だったようで。

 それが職人の間で気軽に交わされ、激励とか頑張れっていう意味に遷移したらしい。

 本日は、このホーの合間にジョッキを空けるのが嗜みのようで。

 明けたジョッキをテーブルに叩きつける音が、ビートを刻むのが心地良い。

 合いの手のように、天井で瞬く精霊さん達。

 ヒートアップする飲み手の感情に合わせるように、明滅を繰り返す。

「ヘイ、ヨー。本日お待ちかねのナンバー。期待の新人、ジョリーオ!!」

「「オー!!」」

「歌うは、捧げられた杯と剣に!! ヒィィィィアウィゴーォォ!!」

「「ワァァァァァ!!」」

 急遽作られた壇上に、ちょっと苦笑いの少年がローブの頭を降ろしながらリュートもどきを刻み始める。

「乾杯をしよう、杯を乾そうー」

「「乾そうー!!」」

 盛り上がり始めたのを見定めて、壇上から静かに退場する。

 一夜限りのDJプレイだが、一体感は、ぱない。

 各テーブルに設置された民芸コンロからは、温かな光が漏れ、馨しい香りを漂わせている。

 マスターのなんじゃこりゃを頂いた川魚の燻製は、急遽私の奢りとして本日供給させてもらった。

 だって、食べられないと暴動が起きそうな雰囲気だったのだ。

「楽しいね……」

 リサさんが、カウンター特等席に座って近くの壇上を見上げながら呟く。

「こんな楽しい世界、あったんだ……」

 その言葉に、そっと頭を抱いて、呟きを捧げる。

「きっと、もっと楽しくなるよ。信じられない?」

 上目で見つめるリサさんが、小さくこくりと頷き。

「信じられる……」

 呟いたから、笑顔を返した。

 はい。

 マスター曰く、開店史上最大に酒が捌けた日だったと言わしめた夜は、歓喜のまにまに終了を迎えた。

 飲み手の配偶者の方々が、戻ってこない宿六を心配して巻き込まれ楽しい夜を過ごしたり。

 偶には二人で来るのも良いよねって感じで円満になって帰って行ったり。

 様々なドラマを生み出して、朝日が昇る間際に終局と相成った。

 私?

 声の限りに盛り上げました。

 精霊さんもたまには、はっちゃけないと頑張り過ぎですし。

 リサさんが寝息を立てている周囲は、ちょっと大人しめの精霊さん達がムーディーに楽しみながら守っていました。

 という訳で、なし崩しに提供した民芸コンロさん。

 ハウマッチと行きたいところなのだけど、マスターがごそごそすると、ドンっと革袋を置く。

 それ、昨日の儲け全部じゃない?

「どんな対価を払っても構わない。これは、欲しい」

 欲しい頂きました。

 でも、仕入れにも問題が出そうなので、ダリーヌさんと打ち合わせてから対価を貰う話でまとめました。

 分割でも良いよと伝えると、呆れたような顔を向けられましたが、お店があるんだから信用大です。

 日々の商いの誠実さは、大事なのだという典型ですね。

 さてと。

 黄色い太陽の下、ささっとダリーヌさんと話を付けますか、と。

 寝不足気味のリサさんと共に、酒場を出たのでした。
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