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第三章 トラウマを乗り越えて
2-14 トラウマを乗り越えて
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お父様とお兄様の帰りを告げられ、真っ先にサロンを出て行ったお母様は、悲鳴をあげた。
「ど、ど、どうしたの!? オスカー! 目を開けて、オスカー!」
急いでお母様について玄関に出て行くと、目に入ったのは――
「お兄様……?」
二人がかりで担がれて、近くの客室へ運び込まれる、兄の姿だった。
その瞼は固く閉ざされ、優しい垂れ目から青い瞳がのぞくことはない。
アッシュブロンドの髪も、薄手のシャツも、ところどころ血に濡れている。
――血。血だ。
血、ち、傷、大怪我、――魔獣、ルゥ君、手が離れて……落ちて……手首に残る血痕――
トラウマが、呼び起こされる。
呼吸が速くなって、目の前が真っ暗になる。足に力が入らない――。
倒れそうになった私をとっさに支えてくれたのは、私の知らない誰かだった。
「お嬢さん、大丈夫か?」
「ち――血、血が、たくさん、死んじゃう」
「大丈夫。オスカー殿は生きている」
「い、いや、死んじゃいや……っ」
「生きている。大丈夫だ、彼は生きている。兄君は生きているぞ」
「え……い、生きて……る?」
生きている。
繰り返されるその言葉に、私の呼吸が、少しだけ落ち着いてきて、視界も開いてくる。
そうだ、ルゥ君だって、生きていたんだ。
たくさん出血したけれど、生きていた。
血を怖がる必要なんて、ないんだ――。
目の焦点が合う。
そこには、魔獣も、崖も、手首に残る血痕もない。
ぼんやりと見上げると、私を支えてくれていたのは、紫色の髪と瞳の、中性的ないでたちの騎士だった。
「ああ、生きている。だが、すぐに治療をしなくては」
紫髪の騎士は、私を支えたまま耳元に唇を近づけ、私にだけ聞こえるように囁いた。
「――ミア嬢というのは君のことだな? すぐに兄君を治癒できるか?」
男性にしては高く、女性にしては低い声だった。
至極冷静なその声に、取り乱していた私の心も落ち着いていく。
「治癒……そうだ、私……」
「できるな? 一人で立てるか?」
「……はい」
騎士が支えてくれていた手を離しても、私はもう、ふらつかずに真っ直ぐ立てた。
ゆっくり息を吸って、吐く。
鉄の匂いがして、すこし気持ち悪くなるけれど。何度も。何度も。
――そう。私には、傷を治せる力がある。
私がお兄様を治癒するんだ。
聖女の力を持つ、私にしかできない。
過去の幻影に怯え、トラウマに縛られている場合ではないのだ。
「エヴァンズ子爵、人払いを」
「ああ、わかった。ミア、クララ、セバスチャン、私と一緒にオスカーの部屋へ。すまないが、他の使用人は皆退出していてほしい。シナモン嬢は、部屋の前で見張りを」
「承知した」
「お父様っ、わたくしは? わたくしも、お兄様のそばにいていいでしょう?」
焦りを滲ませた声で、マーガレットが問いかける。
だが、お父様は、申し訳なさそうに首を横に振った。
「マーガレットは自室で待機だ。すまない、シェリーと何人かで、一緒にいてやってくれないか」
「嫌よ! どうしてわたくしだけ? ねえ、お兄様は、どうなさったの……!?」
「後で話す。シェリー、頼む」
「マーガレットお嬢様、参りましょう」
「嫌よ! 離して!」
マーガレットには申し訳ないが、私の聖魔法を見せるわけにはいかない。
両側から使用人に抱えられて、マーガレットは引きずられていった。
私とお父様、お母様、執事長のセバスチャン。
私の出生の秘密を知る者だけで、お兄様の寝かされている部屋に入る。
先程私を支えてくれた騎士が扉を閉め、外に控えた。
あの騎士も、私の秘密を知っていた――信頼できる人なのだろう。
お兄様は、かなり血を失ったようで、青白い顔をしている。
しかし、確かに息があった。
血だらけだが、大丈夫。もう、取り乱したりしない。
ルゥ君も、生きていた。
お兄様の生命も、繋いでみせる。
私は強く願いながら集中を高め、『治癒』の魔法を唱え始めたのだった。
*
聖女の奇跡、聖魔法。
白い治癒の光が、お兄様の傷を癒していく。
光が消えると、ベッドに寝かされていたお兄様の呼吸は、もう、すっかり安定していた。
顔つきももう、穏やかだ。あとは目を覚ますのを待つだけである。
「……これで、もう、大丈夫です」
力をたくさん使った私は、顔を上げた瞬間に、ふらりと眩暈を起こす。
すぐにお父様が私を支え、ソファーに座らせてくれた。
「ミア……本当に、なんと言ったらいいか……」
お父様は、声を震わせ、軽くハグをした。
「ミア、ありがとう……! オスカーを救ってくれて……ああ、ミア、あなたがいてくれて良かった」
お兄様の手を握って祈りを捧げていたお母様は、呼吸が落ち着いたのを見て、その手をそっと離す。
そして私のところへ駆け寄ると、お父様と代わり、ぎゅう、と私を抱きしめたのだった。
「お母様……お父様……。お役に立てて、良かったです」
私は、震えているお母様を抱きしめ返す。
お父様は、抱きしめ合っている私とお母様、そして穏やかに寝息を立てているお兄様を見て、目元を押さえた。
執事長のセバスチャンは、お湯に浸した布でお兄様の顔や身体を拭っていたが、その顔は先ほどまでと異なり、穏やかなものに変わっている。
「それにしても……何があったの?」
しばらくして、ようやく私を解放したお母様が、お父様に問いかける。
お兄様の傷は、かなり深かった。
多数の切り傷があったが、特段大きな傷が、腕と脚、そして脇腹についていた。
怖くてあまりまじまじと見ることはできなかったが、鋭利な刃物か魔法で切り裂かれたかのような傷だったと思う。
確か、お父様とお兄様は狩りに出掛けていたはず。
だが、明らかに矢傷でも、動物によってつけられた傷でもなかった。
「……ヒースの仲間に、やられたんだ」
「え? ヒースの……?」
「完全に油断していた……ヒースが捕まった途端、突然姿を現した男がオスカーを人質に取ったのだ。私たちは仕方なくヒースを解放した。だが、それにも関わらず、男はオスカーを攻撃したんだ」
お父様は、話しながら思い出したのか、ぶるりと大きく身震いをした。
「あの場所から教会は遠く、馬も攻撃されて動かせる状態になかった。この邸なら足で戻れる距離だったから、邸に戻って魔法通信で聖女を要請するつもりだったのだが――もう、その必要はなさそうだな」
お父様は、私の方に感謝の眼差しを向けて、優しく微笑んだ。
私も、お兄様の生命を救うことができたこと、そして聖魔法が役に立ったことが嬉しくて、口元を緩める。
「オスカーが助かって、本当に良かったわ。……けれどその前に、そもそもあなたたち、狩りに行ったのではなかったの? どうしてヒースが出てくるの?」
「フェイクだよ。子爵家に入り込んだスパイを炙り出すための作戦だ。本当は、ずっと、邸のそばで張っていたんだ。話すと長くなる――」
お母様の問いかけに答え、お父様は今回のことを詳しく話し始めた――。
「ど、ど、どうしたの!? オスカー! 目を開けて、オスカー!」
急いでお母様について玄関に出て行くと、目に入ったのは――
「お兄様……?」
二人がかりで担がれて、近くの客室へ運び込まれる、兄の姿だった。
その瞼は固く閉ざされ、優しい垂れ目から青い瞳がのぞくことはない。
アッシュブロンドの髪も、薄手のシャツも、ところどころ血に濡れている。
――血。血だ。
血、ち、傷、大怪我、――魔獣、ルゥ君、手が離れて……落ちて……手首に残る血痕――
トラウマが、呼び起こされる。
呼吸が速くなって、目の前が真っ暗になる。足に力が入らない――。
倒れそうになった私をとっさに支えてくれたのは、私の知らない誰かだった。
「お嬢さん、大丈夫か?」
「ち――血、血が、たくさん、死んじゃう」
「大丈夫。オスカー殿は生きている」
「い、いや、死んじゃいや……っ」
「生きている。大丈夫だ、彼は生きている。兄君は生きているぞ」
「え……い、生きて……る?」
生きている。
繰り返されるその言葉に、私の呼吸が、少しだけ落ち着いてきて、視界も開いてくる。
そうだ、ルゥ君だって、生きていたんだ。
たくさん出血したけれど、生きていた。
血を怖がる必要なんて、ないんだ――。
目の焦点が合う。
そこには、魔獣も、崖も、手首に残る血痕もない。
ぼんやりと見上げると、私を支えてくれていたのは、紫色の髪と瞳の、中性的ないでたちの騎士だった。
「ああ、生きている。だが、すぐに治療をしなくては」
紫髪の騎士は、私を支えたまま耳元に唇を近づけ、私にだけ聞こえるように囁いた。
「――ミア嬢というのは君のことだな? すぐに兄君を治癒できるか?」
男性にしては高く、女性にしては低い声だった。
至極冷静なその声に、取り乱していた私の心も落ち着いていく。
「治癒……そうだ、私……」
「できるな? 一人で立てるか?」
「……はい」
騎士が支えてくれていた手を離しても、私はもう、ふらつかずに真っ直ぐ立てた。
ゆっくり息を吸って、吐く。
鉄の匂いがして、すこし気持ち悪くなるけれど。何度も。何度も。
――そう。私には、傷を治せる力がある。
私がお兄様を治癒するんだ。
聖女の力を持つ、私にしかできない。
過去の幻影に怯え、トラウマに縛られている場合ではないのだ。
「エヴァンズ子爵、人払いを」
「ああ、わかった。ミア、クララ、セバスチャン、私と一緒にオスカーの部屋へ。すまないが、他の使用人は皆退出していてほしい。シナモン嬢は、部屋の前で見張りを」
「承知した」
「お父様っ、わたくしは? わたくしも、お兄様のそばにいていいでしょう?」
焦りを滲ませた声で、マーガレットが問いかける。
だが、お父様は、申し訳なさそうに首を横に振った。
「マーガレットは自室で待機だ。すまない、シェリーと何人かで、一緒にいてやってくれないか」
「嫌よ! どうしてわたくしだけ? ねえ、お兄様は、どうなさったの……!?」
「後で話す。シェリー、頼む」
「マーガレットお嬢様、参りましょう」
「嫌よ! 離して!」
マーガレットには申し訳ないが、私の聖魔法を見せるわけにはいかない。
両側から使用人に抱えられて、マーガレットは引きずられていった。
私とお父様、お母様、執事長のセバスチャン。
私の出生の秘密を知る者だけで、お兄様の寝かされている部屋に入る。
先程私を支えてくれた騎士が扉を閉め、外に控えた。
あの騎士も、私の秘密を知っていた――信頼できる人なのだろう。
お兄様は、かなり血を失ったようで、青白い顔をしている。
しかし、確かに息があった。
血だらけだが、大丈夫。もう、取り乱したりしない。
ルゥ君も、生きていた。
お兄様の生命も、繋いでみせる。
私は強く願いながら集中を高め、『治癒』の魔法を唱え始めたのだった。
*
聖女の奇跡、聖魔法。
白い治癒の光が、お兄様の傷を癒していく。
光が消えると、ベッドに寝かされていたお兄様の呼吸は、もう、すっかり安定していた。
顔つきももう、穏やかだ。あとは目を覚ますのを待つだけである。
「……これで、もう、大丈夫です」
力をたくさん使った私は、顔を上げた瞬間に、ふらりと眩暈を起こす。
すぐにお父様が私を支え、ソファーに座らせてくれた。
「ミア……本当に、なんと言ったらいいか……」
お父様は、声を震わせ、軽くハグをした。
「ミア、ありがとう……! オスカーを救ってくれて……ああ、ミア、あなたがいてくれて良かった」
お兄様の手を握って祈りを捧げていたお母様は、呼吸が落ち着いたのを見て、その手をそっと離す。
そして私のところへ駆け寄ると、お父様と代わり、ぎゅう、と私を抱きしめたのだった。
「お母様……お父様……。お役に立てて、良かったです」
私は、震えているお母様を抱きしめ返す。
お父様は、抱きしめ合っている私とお母様、そして穏やかに寝息を立てているお兄様を見て、目元を押さえた。
執事長のセバスチャンは、お湯に浸した布でお兄様の顔や身体を拭っていたが、その顔は先ほどまでと異なり、穏やかなものに変わっている。
「それにしても……何があったの?」
しばらくして、ようやく私を解放したお母様が、お父様に問いかける。
お兄様の傷は、かなり深かった。
多数の切り傷があったが、特段大きな傷が、腕と脚、そして脇腹についていた。
怖くてあまりまじまじと見ることはできなかったが、鋭利な刃物か魔法で切り裂かれたかのような傷だったと思う。
確か、お父様とお兄様は狩りに出掛けていたはず。
だが、明らかに矢傷でも、動物によってつけられた傷でもなかった。
「……ヒースの仲間に、やられたんだ」
「え? ヒースの……?」
「完全に油断していた……ヒースが捕まった途端、突然姿を現した男がオスカーを人質に取ったのだ。私たちは仕方なくヒースを解放した。だが、それにも関わらず、男はオスカーを攻撃したんだ」
お父様は、話しながら思い出したのか、ぶるりと大きく身震いをした。
「あの場所から教会は遠く、馬も攻撃されて動かせる状態になかった。この邸なら足で戻れる距離だったから、邸に戻って魔法通信で聖女を要請するつもりだったのだが――もう、その必要はなさそうだな」
お父様は、私の方に感謝の眼差しを向けて、優しく微笑んだ。
私も、お兄様の生命を救うことができたこと、そして聖魔法が役に立ったことが嬉しくて、口元を緩める。
「オスカーが助かって、本当に良かったわ。……けれどその前に、そもそもあなたたち、狩りに行ったのではなかったの? どうしてヒースが出てくるの?」
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