118 / 193
第一章 魔法石研究所と新たな力
4-3 『加護』の魔法
しおりを挟む私はその後、訓練場を訪れた聖女に、聖魔法を教わることになった。
ひとまず、今までに覚えてきた聖魔法を一通り、彼女に見てもらい、確認することに。
「ミアさんの聖魔法は、効果がすごく高いんだね」
「そうですか?」
「うん。詠唱も発動方法も私たちと同じなのに、何が違うんだろ」
聖女はそう言って首をひねるが、答えは出なかったようだ。
「まだ力は残ってる?」
「はい、大丈夫です」
「だったら、残り時間も少ないけど、今日は『加護』の魔法を教えるね。やったことはないよね?」
「ええ」
「じゃあ、まずは『加護』の魔法の特性を覚えるところからだね。この魔法は、簡単に言うと自分以外の人に聖属性のバフを付与するものだから、一人では発動できない魔法なの。だから必ずペアで練習をするんだけど……まずは、ミアさんに私の『加護』をかけてみるね」
そう言って聖女は、『加護』の魔法を唱え始めた。
「『加護』!」
聖女が詠唱を終えると、治癒や解呪の時に放たれるのと同じ、白い聖魔法の輝きが、私の身体全体を包み込んだ。
なんだか肌の表面をさわさわと撫でられているような、奇妙な感じだ。少し鳥肌が立つ。
肌に纏う、他人の力が何となく気持ち悪くて、私は心の中で、嫌だなぁ、と思ってしまった。
その瞬間――。
バリン!
音を立てて、聖女の『加護』は壊れ、身体から全て剥がれ落ちてしまったのだった。
「えっ?」
「うーん、弾かれたかぁ」
――私が、無意識に何かしてしまったのだろうか。
そう不安になって、私は聖女に謝罪した。
「ご、ごめんなさい」
「ううん、ミアさんが悪いわけじゃないんだよ。よくあることなの。この『加護』の魔法って、相性があるんだ」
「相性……ですか?」
「そう。神殿騎士にこの魔法をかけても、十人に三人には弾かれちゃう。聖力の相性かなあ?」
身体に纏わりつく聖力が気持ち悪いと感じたのは、私と彼女の力の相性が良くなかったからなのかもしれない。
「これは聞いた話なんだけど、逆に百人いたら一人ぐらいは、想定以上の効果を発揮する場合もあるらしいよ。とにかく、私じゃあミアさんに『加護』をかけることはできなかったけど、こんな感じの魔法なの。詠唱を教えるから、覚えてね」
その後、聖女から『加護』の詠唱を教わり、発動方法やコツなどをメモに書き留めたところで、終業時間となった。
ウィル様はいつの間にか訓練場から出ていたようで、外の扉から入ってきて、私を迎えに来てくれたのだった。
「ミア、お待たせ。迎えに来たよ」
「ウィル様、ありが――」
「あっ、ちょうどいいところに! ミアさん、最後に、この人に『加護』をかけてみるから、ちょっと見てて」
「え? いや……俺は遠慮するよ」
ウィル様は聖女が何をしようとしているのか察知したらしく、断ろうとしたが、彼女はもう詠唱を始めていた。
彼は困ったように私に目配せをしたが、危害を加えるわけでもなければ、勉強になることでもあるので、私は頷いた。
「――『加護』!」
彼女が詠唱を終えると、ウィル様の身体が光に包まれる。
光がおさまると、きらきらとした光の粒を身に纏ったウィル様が、不思議そうな表情で、自分の身体を確認していた。
「ふぅ、弾かれなかったぁ。私と騎士さん、相性悪くないみたいだね」
「相性……?」
ウィル様は顔を顰めて、聖女の言葉を繰り返す。
「うん、そう。聖力の相性が悪いと、この魔法は弾かれちゃうの。逆に相性がいいと、しっかり『加護』が定着するんだよ」
ウィル様は、後ろを向いて剣を抜き、素振りをしている。身体を動かす感覚も変わるのだろうか。
「ミアさん、これが『加護』の魔法だよ。帰る前にちゃんと見せられてよかった。――『解除』」
聖女が『加護』を解除すると、ウィル様の身体が強い光を放ち、纏っていた光の粒が消え去る。ウィル様は剣をおさめると、光が消えていくのを眺めていた。
「放っておいても、定着させた聖力を使い切れば『加護』は切れるけど、通常は『加護』と『解除』はセットだから、忘れないようにね。じゃあ私は戻るよ。ミアさん、またね」
「は、はい。ありがとうございました」
そう言って、聖女は訓練場の扉から出て行き、室内には私とウィル様だけが取り残されたのだった。
ウィル様は、聖女が出て行った方を見たまま、難しい顔をして顎に手を当て、何かを考えている。
「えっと……ウィル様……帰りましょうか」
「あ、ああ。そうだね」
ウィル様はハッとしたように私を振り返ると、いつも通りに手を差し出し、馬車までエスコートしてくれた。
馬車に乗り込むなり、ウィル様はカーテンを閉め、向かいに座る私に質問をした。
「ねえ、ミア。ミアも、『加護』を使えるようになったの?」
「いえ、まだやり方を教わっただけで、実践はしていませんわ」
「――なら、今すぐ俺にかけてみてよ」
「え? でも……」
「いいから」
「わ、わかりましたわ」
私に頼むウィル様の表情はすごく真剣で、私は、覚えたての『加護』の魔法をさっそく唱え始めた。
聖女に見せるために聖魔法をたくさん使ったので、少し疲れているが、聖力の容量にはまだ余裕があるはずだ。
「――『加護』」
祝詞の完成と同時に、私の聖力がウィル様を包み込み――、
「え……どうして……?」
私の聖力は、音を立てて弾かれることこそなかった。
しかし、ウィル様の身体にぐんぐん聖力が吸われていき、なかなか定着しない。
「こ、これは……?」
「どうして……? なぜ定着しないの……?」
ウィル様は、驚いた顔で自身の身体を確認している。
「まさか……」
魔法は、問題なく発動した。ということは、もしかしたら、聖女の言っていた聖力の相性というものが、悪いのかもしれない。
「ううん……、そんなの、いや」
ウィル様と魔法の相性が悪いなんて、嫌だ。認めたくない。
もしそうだったら、ウィル様が聖剣技を扱おうとするときには、別の聖女が彼のそばで――。
私は、ウィル様に『加護』を定着させようと、さらに聖力を込めた。
しかし。
「……どう、して……?」
「……っ、しまった、ミア!」
私の聖力は、ウィル様に定着することなく、尽きてしまった。
ウィル様の焦る声が耳に届くが、私の意識は遠のき、そのまま倒れてしまったのだった。
21
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない
当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。
だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。
「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」
こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!!
───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。
「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」
そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。
ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。
彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。
一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。
※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる