ヴァンパイア皇子の最愛

花宵

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第二章 目指せ、一人前の吸血鬼!

14、魔法を習得しました

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 それから約一ヶ月。
 メルムに魔法の基礎知識を習い実技訓練を経て、異例のスピードで魔力のコントロールをマスターした私は簡単な水魔法を会得した。
 少量の水を生成してお花に水をあげたり、初級回復魔法の「ヒール」が使える。残念ながら、シオン様のように魔法剣は作れないけれど。

 何故、こんなにも早くマスター出来たのかと言えば、極限の緊張の中で過ごした事が功を奏したとしか言えない。

 魔法の訓練中、自室で壊した家具は数知れず。少しの油断で身の回りの色んな家具が無惨な姿で壊れていくのにいたたまれなくなり、私はフォルネウス様に直談判した。

「フォルネウス様、どうか私を頑丈な牢屋に入れて下さい! お願いします!」
「却下する」
「それでしたら、部屋を移してもらえないでしょうか? 最低限の雨風が凌げれば充分なので」
「却下する」

 しかしそうやってことごとく断られ続けた。しまいには――

「いいか、アリシア。君は今、生まれたての赤子のようなものだ。赤子は泣くのが仕事であろう? それと同じで魔力に目覚めたての君は今、家具を壊すのが仕事なのだ。分かったか?」
「ですが、折角の高級な家具が無惨に壊れては勿体ないです」
「家具職人にとって、簡単に壊れる家具を作ったというのはこの上もない屈辱なのだ。これを良い機会に、彼等はよりいっそう仕事に励むであろう。だから君が気にやむことではないのだ。むしろ、より良い家具開発の発展に大きく貢献している。とても光栄な事なのだよ」

 と、最もらしい諭され方をして一旦は納得したが、後から考えるとやはりそれはどうかと思う。しかしこれ以上フォルネウス様の手を煩わせるのは本末転倒だと理解し、自分の考え方を改める事にした。

 壊す前提でいる、その意識が甘えよね。これからは、一つたりとも絶対に壊さない!

 豪華な部屋で高級家具に囲まれた生活。これ以上壊したら、一生かかっても弁償しきれない。ならやることは一つ。絶対に壊さないよう、細心の注意を払い続けた生活をしたのがよかったらしい。

「ヒール!」

 早々に初級回復魔法をマスターした私は今、壊した家具の修復をひたすら行っていた。

「初級魔法のヒールに、壊れた物を修復する効果なんてありましたっけ?」
「うん、あるみたいだよ」
「それは知りませんでした! まだまだ私も勉強不足ですね。姫様を見習って精進せねば! それにしてもすごいです、姫様! 壊れた家具がすっかり元通りですね!」
「メルムが教えてくれたからだよ。本当にありがとう!」
「いえいえ。私はあまり回復魔法が得意ではないので、姫様の頑張りの成果ですよ!」

 しかし残念なことに、最初の方に壊した家具はもう処分されてしまっており、全てを元に戻すことは出来なかった。多少の痛手は残ったものの、少しでも被害を減らすべく、私は日々魔法の鍛練に励んでいた。

 すると何故か私の元へ、よく尋ね人が来るようになった。

「すみません、アリシア様。誤って落としてしまいまして……とても大事なものなのです。よければ治して頂けませんか?」
「はい、喜んで!」

 居候の身分である自分が役に立てるなら願ってもない幸運だった。しかも魔法の訓練にもなるし一石二鳥! と、彼等が持ってきたものを私は喜んで直してあげた。





 いつものように、壊れた家具の修理を行っていると、ガブリエル様が血相を変えてやってこられた。

「アリシアの嬢ちゃんは居るか?!」
「ガブリエル様、いかがなされました?」

 ガブリエル様が肩を大きく上下させて息を整えていらっしゃるなんて、珍しい。何だか、嫌な予感がした。

「実は任務の最中にシオンが怪我しちまって。医務室まで来てくれないか?」
「シオン様がですか?! 分かりました、急ぎましょう!」

 ガブリエル様と共に医務室へ向かった私が目にしたのは、右足を失ったシオン様の痛ましい姿だった。

「城に居る治癒士達が皆、城下に出払ってるらしくてな。呼び戻してる最中なんだが、中々戻って来ねぇんだよ。嬢ちゃん、何とか出来ないか?」

 予想以上の酷い怪我に、手が震える。自分が使えるのは、初級魔法のヒールだけなのだ。こんなひどい怪我を治せるはずかない。頭ではそう分かっている。けれど――

「隊長……僕はもう、……戦えないのでしょうか? やっと、父の敵が討てると思ったんです。それなのに……っ」
「諦めるな、シオン! お前はまだ戦える! だから決して、諦めるな……っ!」

 シオン様の声は震えていた。ガブリエル様の声も震えていた。そんな二人の声を聞いて、やりもせずにあきらめるなど、出来なかった。
 シオン様を治療するため、全身の魔力を集中させて私は呪文を唱えた。

 お願い、どうかシオン様を助けて下さい!

 一回で効かないなら、何回だってやってやる! 気力の続く限り、私はひたすらヒールを唱え続けた。
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