ヴァンパイア皇子の最愛

花宵

文字の大きさ
36 / 73
第四章 貴方の隣に相応しくなりたい!

34、誕生日パーティー

しおりを挟む
 あれから一ヶ月が経って、今日はフォルネウス様の誕生日パーティーが開かれる。
 念入りに身支度をされ、着なれないドレスに身を包んだ私は、開幕まで部屋で休んでいた。

「緊張しているのか?」
「はい、とても……」

 フォルネウス様の正式な婚約者としての発表も兼ねられており、緊張しない方が無理だ!

 私が失敗したら、それはフォルネウス様の恥になってしまう。足を引っ張るわけにはいかない。

「ダンスはリードするから大丈夫だ。安心して俺に身を委ねてくれ」
「た、頼りにしてます!」

 一ヶ月間空いた時間でみっちりと練習してきたものの、何とか一曲を踊りきるのでいっぱいいっぱいだった。

「アリシア」
「はい、何でしょう?」
「とても綺麗だ。美しい君をこのまま拐って一人占めしたい気分だが、同時に皆にも知って欲しい。君という大切な人の存在を」
「フォルネウス様……」
「肩肘張る必要はないよ。君はそのままで十分に魅力的なんだから」

 魅力的なのは、フォルネウス様の方ですよ!
 正装に身を包んだお姿はとても格好いいし、さりげなく緊張を和らげようとしてくれるその優しさも素敵すぎます!
 思いが通じあってからというもの、フォルネウス様は素直に気持ちを教えて下さる。それがもう砂糖菓子のように甘くて、正直私の心臓がいくつあっても待ちません。

 この方の隣に相応しい存在になりたいと思って努力してきたものの、私が追い付けないスピードでフォルネウス様はさらに先をいってしまうわ。ぐぬぬ、悔しい!

「フォルネウス様だって、いつも魅力的です。そんな貴方に、私はいつも追い付きたくて必死なんですよ」
「まいったな。やはり一人占めしたい……」

 口元に手を当てて、フォルネウス様は恥ずかしそうに視線を逸らしてしまわれた。私の言葉でこうやって照れてくれる姿も可愛いし。
 あ、そうだ! 主役のフォルネウス様は今日も忙しいだろうし、今のうちにプレゼントを渡しておこう。喜んでくれるといいな。

「あの、フォルネウス様。お誕生日おめでとうございます。よかったらこれを受け取って頂けませんか?」
「ありがとう、アリシア。開けてみてもいいだろうか?」
「はい、勿論です!」
「これは、アリシアの手作りなのか?!」

 私がプレゼントとしてお渡ししたのは、手作りのお守り。

「はい。私の住んでいたベリーヒルズ村では、女性から意中の男性へ手作りのお守を渡す習慣があって……ずっと傍で支え、貴方の幸せを祈り続けますという意味が込められているのです。フォルネウス様に頂いたこのチョーカーのように、私も、その……自分の気持ちを込めた物を贈りたかったので、これにしてみたのですが……」
「ありがとう、アリシア! これほど嬉しい物はない」

 フォルネウス様にぎゅっと抱き締められる。

「大切に持ち歩くとしよう」

 喜んでもらえたみたいでよかった。ついでに城下の魔法加工屋さんで、もらったお給金のほぼ全額を費やして一番効果の高いプロテクト魔法をかけてもらった。
 蒼の吸血鬼討伐など、危険な任務に行かれるフォルネウス様の安全が少しでも守れるなら、安いものだよね!

「そうして頂けると、嬉しいです」

 私の肩に顔を埋めているフォルネウス様の体が、小刻みに震えているのに気付いた。なだめるように、背中に手を回して抱き締め返していると、ノックの音が聞こえてきた。

「姫様? そろそろお時間ですよ?」

 どうやらメルムが呼びにきてくれたようだけど、フォルネウス様は私を抱き締めたまま動かない。ガチャリとドアの開く音がして、メルムが入ってきた。

「め、メルム……」
「若様! いい加減姫様から離れて下さいませ!」

 不貞腐れた様子でフォルネウス様はメルムに言った。

「主役は遅れて登場するものだ。少しくらいいではないか」
「よくありません! ああもう、折角綺麗にセットした姫様のドレスと髪が! イチャイチャするのは終わってからにしてくださいませ!」
「そうだな。早く終わらせて戻ってこよう、アリシア」
「主役は最後まで残ってください!」

 メルムに怒られつつ、私達は会場へと向かった。





 フォルネウス様にエスコートされて、パーティー会場に入る。豪華なシャンデリアが華やかな会場を明るく照らす。楽団の優雅な演奏に迎えられ足を進めると

「まぁ、素敵!」
「とってもお似合いだわ!」
「ついに若様にも春が来たのね!」

 会場内は優しく見守ってくれる温かい眼差しで溢れていた。

 吸血鬼は長寿だ。一生を幸せに終えるために、ハイグランド帝国では愛のある結婚しか認めていない。それは過去にこの国を作ったシエラ様の意志であり、温かい家庭を築くことが一番とされてきたからのようだ。

 リグレット王国のように、身分違いの結婚に批判的な意見は一切ないようで、初めて皇帝であるディートリヒ様に挨拶しに行った時も温かく迎え入れて下さった。

 とても優しくて温かい国だなぁとしみじみ思っていると、斜め前方から突き刺さるような鋭い視線を感じた。一人の女性がこちらをじっと睨んでいるのが目に入り、思わず手が震えてしまった。

『どうした? アリシア』

 私の異変に気付いたのか、フォルネウス様がポータブルコールで話しかけて来られた。

『い、いえ、何でもありません』
『何かあったらすぐに知らせてくれ』
『はい、お気遣い頂きありがとうございます』

 気のせいかもしれないし、今はそれよりも転ばないように集中しなければ!

「今宵は我が息子フォルネウスのために、よくぞ集まってくれた。このめでたき日を無事迎えられたのは、ひとえに貴公等の支えあってのこと。誠に感謝する。今日は息子より、皆に嬉しい報告があるようなので聞いてやって欲しい」

 ディートリヒ陛下の口上を聞いている間も、女性の突き刺さるような視線が止むことはなかった。気のせいではないわね、これは……

「本日は私のためにお集まり頂き誠にありがとうございます。実は皆さんに、嬉しいご報告があります。私フォルネウス・ハイグランドは、こちらのアリシア嬢と正式に婚約した事を発表します」

 フォルネウス様の言葉で、どこからともなく拍手が沸き起こる。

「おめでとうございます、若様!」
「待ってました、おめでとうございます!」

 祝いの言葉が飛び交い、会場は温かい空気に包まれた。

「それでは皆の者、今宵のパーティーをどうか楽しんでくれ」

 開幕の挨拶がおわり、どうやら自由時間になったようだ。

「アリシア、私と一曲踊って頂けますか?」
「はい、喜んで」

 フォルネウス様にエスコートされてダンスホールに上がる。
 大丈夫、練習した通りにすれば何とかなる。だってフォルネウス様のリードは完璧だもの!

 そうして何とかダンスを乗りきった後、主役のフォルネウス様は挨拶に来た来賓客達に捕まってしまった。

「初めまして、アリシア様」

 振り返ると、穴が空きそうなほど私を睨んでいた女性がにこやかな笑顔を浮かべて立っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

家出を決行した結果

恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。 デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。 自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。 ※なろうさんにも公開しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒
恋愛
「聖女の補佐をしてくれないか?」  王子自ら辺境まで訪れ、頭を下げる。  それほど国は、切羽詰まった状況なのだろう。  だけど、私の答えは……  皆さんに知ってほしい。  今代の聖女がどんな人物なのか。  それを知った上で、私の決断は間違いだったのか判断してほしい。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...