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『あなたならどう生きますか?~両想いを確認した直後に「余命半年」の宣告を受けました~』
1-6「思いがけない事故」
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「思いがけない事故」
会場の照明が落ち、リングアナの紹介と同時に入場口にスポットライトが当たる。リングアナのコールがかかる。
「赤コーナー、大阪ニコニコプロレス所属、「キャンディー稀世」こと「安稀世」!」
場内に大音量で稀世の入場曲の「大阪ファンクラブ」が流れる。いつもの大げさな巨大リーゼントのかつらに大きな黒縁眼鏡に男物のシングルのスーツの上着でポケットから飴ちゃんを取り出しては、客に配りながら、稀世が入場してきた。「キャンディーっ!」、「きよちゃーん!」、「やすきよー!」、「今日も頼むでー!」と歓声が飛ぶ。ここ一年で稀世の人気も大きく上がり、三朗としてもうれしい反面、ちょっとやきもちの気持ちもあり、微妙な感覚が沸き上がる。「やすきよ」の名前から、取り入れた、往年の漫才師「やすしきよし」お決まりの入場パフォーマンスをファンたちが待ち望む。
場内の稀世ファンによる、入場曲の「大阪ファンクラブ」さびの「天国のやすし師匠におやすみなさいを言うため」の大合唱で、リングに上がる際、サードロープに足を引っかけて、前に転び、ゆるくかけていた黒縁眼鏡をリングに落とし、「メガネ、メガネ」と故横山やすし師匠張りに眼鏡を探すコミカルな演技に、かつての漫才ブームでの「やすしきよし」世代の中年客は、大喜びだ。
ピンポン玉を半分に切って真ん中を大きく黒く塗ったものを両目に当てた、きよし師匠役のセコンドが突っ込んで頭をはたき、かつらがふっ飛んだ。続いて、お決まりの「なんでやねんチョップ」と呼ばれる稀世の逆水平チョップでセコンドのピンポン玉の目玉が飛び、今度はセコンドが「めだま、めだま」とリングを探し回るパフォーマンスで、会場は今日一番の大きな盛り上がりをみせた。盛り上がりすぎた会場に、続いて入ってくる相手選手が気の毒に思えるほど、会場が沸き立っている。
相手選手が、リングに上がり、リングアナが両選手を紹介し、稀世は、スーツの上着と眼鏡とかつらをセコンドに渡し、ロープの張りを確認しゴングを待った。今回の相手は、先ほどのハーフタイムショーの時、リングで歌っていた、初対決の相手団体のベビーフェイスレスラーで、デビューして二年目の若手だった。会場から起こる各々のファンからの声援が会場を二分した。三朗も、精いっぱいの声援を送った。
ゴングが鳴った。ゴング前の稀世のコントや相手選手の歌のパフォーマンスからは、かけ離れた、本格派のレスリングが始まった。稀世が、クラッシュ・ラビットヒート、ダイビングダブルニードロップを繰り出せば、相手は技をしっかりと受け止め、ビーナスシュート、ムーンサルトプレスで反撃する。一進一退の攻防戦に三朗も会場も手に汗握って、両選手を応援した。
開始十分のコールがかかる。リング上から、「バシッ!」、「ドガッ!」と肉体と肉体がぶつかる鈍い音がする。稀世は持ち前のスタミナでやや優勢に試合を進める。稀世に比べると、やせ形の相手レスラーは、肩で息をし始め、フットワークが鈍り出した。
「チャンスやー!稀世さーん!いったれーっ!」
三朗も声をからし、必死に声援を送る。三朗の声が届いたのか、稀世の男性レスラー張りのジャーマンスープレックスホールドが、きれいな弧を描き決まるが、ロープ際であったことが災いし、カウント前にロープ扱いで、技をほどく。足取りが怪しくなった相手に、稀世の「なんでやねんチョップ」八連発で相手をロープに追い込む。ロープがたわむほど、チョップで押し込み、反動で返ってきたところ、稀世の得意技である「クロスアーム式スープレックスホールド」で相手選手の両肩をマットに押し付けた。
その時、稀世は、何かやばいものを感じた。(この子、意識飛んじゃってる?)レフリーがカウントに入ると同時に、心配になりホールドする腕の力を弱めた。
「あんた大丈夫?」
と小さな声で問いかけた時、白目をむいた相手が、技をほどき、強引な体制で稀世の背後に回り、10キロ以上体重差があるであろう稀世を持ち上げ、パワーボムの体制に入った。(あんた、この状況でそれあかん!)稀世は思った。
三朗もリングサイド席から正面で、持ち上げられる稀世とふらつく足取りで左に傾いた相手レスラーを見て(軸がぶれてる!危ない!)と思った瞬間、無慈悲なパワーボムが炸裂した。
「ボグっ!」鈍い音がリングに響いた。稀世はやや左肩が先行し、斜めに後頭部をマットに打ち付けられた。相手レスラーは、技を出し終えると同時に、後ろに倒れこみ、稀世がその上にお尻から重なり落ちた。両名とも、ピクリとも動かない。会場に悲鳴が起こった。
レフリーが、両者の顔を覗き込み、即両手を頭の上でクロスさせ、ゴングが打ち鳴らされた。両セコンドが、リングに飛び込み、重なり合ったふたりを離した。相手選手は、水をかけられ両ほほを何度かたたかれると、意識を取り戻し、上半身だけ起こして、いったい何があったのかとばかりに、首を左右に振りきょろきょろしている。
稀世は、ピクリとも動かない。左肩がよからぬ角度になり、左腕が右腕より伸びているあきらかに脱臼している。リングドクターが、急遽リング上にあがり、脈をとり、呼吸を確認すると同時に人工呼吸に入った。稀世の顔が見る見るうちに青く変わっていく。登場口から、まりあもガウン姿で、慌てて飛び込んできた。
「先生、どんな具合なん?」
まりあがドクターに問いかけるが、振り向かず、「救急車!」とだけ言い、人工呼吸と心臓マッサージを続けている。まりあがセコンドに、「すぐ救急車手配して!」と指示を出したのが三朗にも聞こえた。(えっ!?稀世さん、そこまでひどいの!?)立ち上がった三朗の両足が小刻みに震えた。
会場の照明が落ち、リングアナの紹介と同時に入場口にスポットライトが当たる。リングアナのコールがかかる。
「赤コーナー、大阪ニコニコプロレス所属、「キャンディー稀世」こと「安稀世」!」
場内に大音量で稀世の入場曲の「大阪ファンクラブ」が流れる。いつもの大げさな巨大リーゼントのかつらに大きな黒縁眼鏡に男物のシングルのスーツの上着でポケットから飴ちゃんを取り出しては、客に配りながら、稀世が入場してきた。「キャンディーっ!」、「きよちゃーん!」、「やすきよー!」、「今日も頼むでー!」と歓声が飛ぶ。ここ一年で稀世の人気も大きく上がり、三朗としてもうれしい反面、ちょっとやきもちの気持ちもあり、微妙な感覚が沸き上がる。「やすきよ」の名前から、取り入れた、往年の漫才師「やすしきよし」お決まりの入場パフォーマンスをファンたちが待ち望む。
場内の稀世ファンによる、入場曲の「大阪ファンクラブ」さびの「天国のやすし師匠におやすみなさいを言うため」の大合唱で、リングに上がる際、サードロープに足を引っかけて、前に転び、ゆるくかけていた黒縁眼鏡をリングに落とし、「メガネ、メガネ」と故横山やすし師匠張りに眼鏡を探すコミカルな演技に、かつての漫才ブームでの「やすしきよし」世代の中年客は、大喜びだ。
ピンポン玉を半分に切って真ん中を大きく黒く塗ったものを両目に当てた、きよし師匠役のセコンドが突っ込んで頭をはたき、かつらがふっ飛んだ。続いて、お決まりの「なんでやねんチョップ」と呼ばれる稀世の逆水平チョップでセコンドのピンポン玉の目玉が飛び、今度はセコンドが「めだま、めだま」とリングを探し回るパフォーマンスで、会場は今日一番の大きな盛り上がりをみせた。盛り上がりすぎた会場に、続いて入ってくる相手選手が気の毒に思えるほど、会場が沸き立っている。
相手選手が、リングに上がり、リングアナが両選手を紹介し、稀世は、スーツの上着と眼鏡とかつらをセコンドに渡し、ロープの張りを確認しゴングを待った。今回の相手は、先ほどのハーフタイムショーの時、リングで歌っていた、初対決の相手団体のベビーフェイスレスラーで、デビューして二年目の若手だった。会場から起こる各々のファンからの声援が会場を二分した。三朗も、精いっぱいの声援を送った。
ゴングが鳴った。ゴング前の稀世のコントや相手選手の歌のパフォーマンスからは、かけ離れた、本格派のレスリングが始まった。稀世が、クラッシュ・ラビットヒート、ダイビングダブルニードロップを繰り出せば、相手は技をしっかりと受け止め、ビーナスシュート、ムーンサルトプレスで反撃する。一進一退の攻防戦に三朗も会場も手に汗握って、両選手を応援した。
開始十分のコールがかかる。リング上から、「バシッ!」、「ドガッ!」と肉体と肉体がぶつかる鈍い音がする。稀世は持ち前のスタミナでやや優勢に試合を進める。稀世に比べると、やせ形の相手レスラーは、肩で息をし始め、フットワークが鈍り出した。
「チャンスやー!稀世さーん!いったれーっ!」
三朗も声をからし、必死に声援を送る。三朗の声が届いたのか、稀世の男性レスラー張りのジャーマンスープレックスホールドが、きれいな弧を描き決まるが、ロープ際であったことが災いし、カウント前にロープ扱いで、技をほどく。足取りが怪しくなった相手に、稀世の「なんでやねんチョップ」八連発で相手をロープに追い込む。ロープがたわむほど、チョップで押し込み、反動で返ってきたところ、稀世の得意技である「クロスアーム式スープレックスホールド」で相手選手の両肩をマットに押し付けた。
その時、稀世は、何かやばいものを感じた。(この子、意識飛んじゃってる?)レフリーがカウントに入ると同時に、心配になりホールドする腕の力を弱めた。
「あんた大丈夫?」
と小さな声で問いかけた時、白目をむいた相手が、技をほどき、強引な体制で稀世の背後に回り、10キロ以上体重差があるであろう稀世を持ち上げ、パワーボムの体制に入った。(あんた、この状況でそれあかん!)稀世は思った。
三朗もリングサイド席から正面で、持ち上げられる稀世とふらつく足取りで左に傾いた相手レスラーを見て(軸がぶれてる!危ない!)と思った瞬間、無慈悲なパワーボムが炸裂した。
「ボグっ!」鈍い音がリングに響いた。稀世はやや左肩が先行し、斜めに後頭部をマットに打ち付けられた。相手レスラーは、技を出し終えると同時に、後ろに倒れこみ、稀世がその上にお尻から重なり落ちた。両名とも、ピクリとも動かない。会場に悲鳴が起こった。
レフリーが、両者の顔を覗き込み、即両手を頭の上でクロスさせ、ゴングが打ち鳴らされた。両セコンドが、リングに飛び込み、重なり合ったふたりを離した。相手選手は、水をかけられ両ほほを何度かたたかれると、意識を取り戻し、上半身だけ起こして、いったい何があったのかとばかりに、首を左右に振りきょろきょろしている。
稀世は、ピクリとも動かない。左肩がよからぬ角度になり、左腕が右腕より伸びているあきらかに脱臼している。リングドクターが、急遽リング上にあがり、脈をとり、呼吸を確認すると同時に人工呼吸に入った。稀世の顔が見る見るうちに青く変わっていく。登場口から、まりあもガウン姿で、慌てて飛び込んできた。
「先生、どんな具合なん?」
まりあがドクターに問いかけるが、振り向かず、「救急車!」とだけ言い、人工呼吸と心臓マッサージを続けている。まりあがセコンドに、「すぐ救急車手配して!」と指示を出したのが三朗にも聞こえた。(えっ!?稀世さん、そこまでひどいの!?)立ち上がった三朗の両足が小刻みに震えた。
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